● 赤頭巾ちゃん ●


 昔々あるところに、可愛い女の子垂れ目の坊主がいました。名前を三蔵といいます。
 裏の名を『赤頭巾ちゃん』といいますが、とりあえずこれはどうでも良いことなので、黙っておきましょう。迂闊に口にすると、銃殺されかねませんので。
 さて、その赤頭巾ちゃん三蔵には、森の中のに住む友人がいました。本当はお祖母さんなのですが、故あって別居している上、血の繋がりもないので友人でいいでしょう。
 友人の名は八戒といい、何故か人里離れた森の中に住む、少々変わった人です。
 そんな彼の元に、週1回程酒と肴を持って訪ねるのが、三蔵の習慣でした。

 さて、三蔵はいつものように八戒の家へと向かいます。
 腕に掛けた籠には秘蔵のウィスキーにまるまるチーズ。今日は泊まりで宴会です。
「・・・あいつが来た方が、早くないか?ジープあるし」
 そんなことを言っちゃぁ、あきません。お話にならないじゃないですか。
 三蔵は村の小道をてくてくてくてく歩きます。
「よう、三蔵!また飲み会か。お前も好きだねぇ」
「るせえ・・・」
 村人からの挨拶にも、明るくお返事。三蔵は元気に進みます。(一部脚色)
 野を越え山越え、
「ちょっと待て、いくら何でもそんなに遠くないだろ?」
 ・・・雰囲気出しただけじゃないですか。情緒の解らない人ですね。
「捨てとけ、そんなもん」
 ひどい・・・それでも坊主ですか、あんたは。
「なりたくてなったわけじゃねぇ」
 はいはい。それじゃ、気を取り直して、三蔵は森の入口までやってきました。

「さ〜んぞっ!」
 ダンッ!
 もの凄い音と共に三蔵の背中に飛びついたのは、弾丸小僧の悟空です。三蔵は何とか腹筋で堪え、地面とのご挨拶を免れました。
「殺すぞ、クソザル」
 三蔵さん、言葉汚いです。
「てめえもだ」
 むやみに八つ当たらないで下さいよぅ。
「三蔵、三蔵!」
「だから何だよ」
「腹減った〜」
「死ね」
 あ、悟空さんが地面と挨拶しました。顔がめり込む勢いです。
「黙れ」
 私が黙ると話が進みませんよ。
「進んでないだろうが」
 ・・・じゃ、進めましょう。悟空さん、起きて台詞。
「え?あ、そうだ!八戒から言われて走ってきたんだよ。八戒、今日用事が出来たから、『モウシワケアリマセンガ』来週にしてくれないかって」
「用事・・・?」
「うん!」
「・・・・・・・ま、いいか。悟空」
「?」
 三蔵は軽く腕に掛けた籠を上げて
「八戒の代わりに、こいつの消費を手伝え」
「いいの?!」
「俺ん家、行くぞ」
「わ〜いっ、酒だ〜」
 悟空さん大はしゃぎで付いていきます。こらこら、あなた未成年の筈でしょう。三蔵さんも呑みたいだけですね?まったく・・・
 こうして、三蔵は八戒の家には辿り着けませんでした。

 一方その頃、八戒の家には黒い影!狼さんの魔の手が忍び寄っていました。
「誰が狼だよ」
 これは悟浄さん。貴方のことに決まっているじゃないですか。
「・・・いっぺん、ナシ付けとかなきゃ、ならねえみたいだな」
 自覚がないんですか?それは心外。ほらほら、八戒さんを訪ねてきたんでしょう?
「・・・・・・・・」
 悟浄は毎週、八戒の家を訪ねてきては只酒を御馳走になっているのです。
 今日もお酒目当てにやって来たのでした。
「お〜い、八戒〜。俺だ、入るぞ」
 かって知ったる他人の家。悟浄は扉をくぐります。
「あ、悟浄。いらっしゃい」
 にこやかに出迎える八戒。部屋の中は酒宴の準備が整っています。
「相変わらず上手そうな料理だよな〜」
 思わず摘み食いまでする悟浄。八戒は笑いながら見逃してくれます。
「ん?三蔵はまだ来てねぇのか?」
 いつもならばとうに来ている筈の三蔵の姿が、今日に限ってありません。
 三蔵の持って来るお酒も楽しみにしている悟浄は、彼が来ないとなると楽しみ半減なのです。
「えぇ、今日は用事があるとかで」
 ?用事があるのは八戒さんの方じゃ・・・
「口は禍の元って、しってますか?」
 ・・・・・・・・悟浄さんには聞こえていないみたいですね。
「それは重畳」
 更に笑みを深めた八戒は、悟浄に向き直ると「料理が冷める前に、初めましょうか」と席を勧めます。
 何も知らない悟浄は椅子に座ると、酒と料理を楽しみ始めました。
「これは自信作なんですよ」
「こんな事なら、俺も自分の酒を持って来れば良かったな」
 二人っきりの宴は、賑やかに進みます。
 そうして2時間も経つ頃には、悟浄はすっかり出来上がっていました。

「悟浄?」
「うぅ・・・」
 八戒さんお酒を勧めまくるので、悟浄はとうとうつぶれてしまいました。
「やれやれ、しょうがない人ですねぇ」
 八戒は悟浄を抱え上げると、奥の寝室へと運んでいきます。
 八戒さんの口元には、いつもとはちょっと違う、少々邪悪な笑みが・・・
 ・・・計画的犯行ですか?
「人聞きの悪い。あ、まさか、寝室まで覗こうなんて、言いませんよね」
まだ命が惜しいので、遠慮させていただきますです。
「よろしい」


 その後の悟浄さんの運命は、私には解りません。
 命のいらない方は、直接八戒さんにインタビューして下さい。
 あ、インタビュー結果はこちらに教えて下さいね。レポート記事として起こしますから(笑)


 ―――HAPPY END?



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