805記念小説
・・・タイトル思い付かず、このていたらく(^^;)



 何故こんな事になったのか。
 現状における打開策を見付けるべく、悟浄はこれまでの経緯を思案する。
 現状―――自分のベッドの上に仰向けに寝かされ、両手を手錠で頭上に固定されている(早口言葉のようだ)、身動きの全くとれない自分と、その横に座る、上機嫌の八戒。

 八戒と暮らし初めて3年。何の気も無しに、求められれば肌を重ねる生活を送ってきた。
 相性は悪くない。むしろ女関係に慎ましくなった自分を省みれば、かなり『良い』部類にはいるだろう。例え、男相手が久し振りだったことを差し引いても、八戒は上物だと断言できた。正直、ここまで入れ込んだ自分に驚いてもいる。
 そもそも、他人と深く交わることを嫌い、人里から離れた場所で暮らしていた自分が、成り行きとはいえ他人と暮らすなんて思いも寄らなかった。
 この世で一番最初の『絆』に拒絶され、それ以上傷つくことを畏れ、逃げた自分。
 そして、たった一つの『絆』を奪われ、全てを壊した、悟能・・・

「・・・っ!」
 八戒の指が脇腹を掠め、悟浄は息を呑む。
「考え事ですか?」
 余裕ですね、と八戒が覗き込む。
 表情だけ見れば、八戒の顔に平素との差はない。だからこそ、手首に当たる冷たい感触が得体の知れぬ不安をかき立てる。
「八戒〜」
「はい?」
 無駄だとは思いながらも、もう一度だけ訊ねることにした。
「これ、外さねぇ?」
「ダメです」
 にっこり笑って拒絶される。
 八戒はこの手錠がいたく気に入ったらしく、再三の押し問答には耳も貸さない。
「別にこんなの填めなくったって、俺は逃げたこと無いじゃん。大体このままヤったら、絶対手首に痣が出来るって」
 泣き言みたいだが、これもまた真実。
 柔軟性を欠いた体にこの体勢ではかなりの無理が出る。明日起きれなくなるのは必死だ。だから、何度も頼んでいるのに・・・
「我慢して下さいね」
 の、一言で却下されてしまう。変なところで強情なのだ、この男は。
(大体なんでこんな手錠が家にあるんだよ・・・って、俺が昔面白がって買ったヤツか)
 そう、この手錠の本来の持ち主は悟浄である。それを、たまたま掃除していた八戒が見付けてきた訳なのだが、
(なんだって俺は、こんな丈夫なのを買ったんだ・・・)
 妖怪であるところの彼等は、腕力なら人の数十倍を誇る。つまり、その辺の鎖なんかは素手で千切ることも可能だ。しかしこの手錠は簡単な術が掛けてあり、対象物の力を弱めてしまう。だから悟浄は手錠はおろか、その鎖を通しているベッドの木枠すら壊すことが出来ないのである。そして、この束縛から逃れるためには、対になる鍵に込められた「解呪の法」が必要なのである。
 しかしその鍵は八戒の手の中。当の八戒はといえば、楽しそうに悟浄の服を乱していくだけで一向に手錠を外す気配はない。
「八戒・・・」
「諦めて下さい、ってば」
「なんで」
「この方が愉しいから」
 脱力。
 お前はマンネリ防止に努める熟年夫婦か!とは思っても口には出せない悲しい性よ。肯定されたら、それはそれで怖すぎる。
「大体、”抵抗できない悟浄”っていうのがそそるんじゃないですか」
 すっかり前をはだけてしまうと、胸元に手を這わせながら八戒は続ける。
「・・・んっ」
「動きを制限されると、いつもとまた違った感じがするでしょ?」
 ゆっくりと上体を倒しながら、囁くように付け加える。
「力が入らないって、どういう感じがしますか?」
 明らかに笑いを含んだ声。
(も、いいや・・・)
 これ以上不毛な会話を続けるよりも、さっさと事を済ませた方が早いと踏んだ悟浄は軽く目を閉じ、八戒の質問に答えるべく小さく息を吐き出す。
「ん〜」
 しばし沈黙。答えを待つ様に、八戒の動きが止まる。
 こうなったら楽しむのが自分流。茶目っ気出して、ついでにウィンクも付けてやる。
「好きにして、ってカンジ?」
「ぶっ・・・」
 うっかり目があってしまったから、お互いに吹き出してしまった。八戒はそのまま悟浄の体に突っ伏して、涙まで浮かべて笑い続けている。
「おい、失礼なヤツだな。せっかく感想を述べてやってるのにそこまで笑うことはないだろ?」
 自分もひとしきり笑った後で、悟浄は八戒を促す。そう、まだ自分は繋がれたままなのだから・・・
 やっとの事で立ち直った八戒は、改めて悟浄の顔を見据えると、
「それもそうですね。せっかくの据え膳状態ですしね」
 と、口付けた。


「はぁっ・・・」
 息が上がる。
 乱される、息と躰。
 纏う物もなく、惜しげなく晒される素肌に、絡み付く手。
 追い詰められるように幾度となく見える高みには、到達することを許されず・・・
「は・・・かいっ・・・」
「はい?」
 声だけ聞けばあまりにも平静そうで、悔し紛れに薄目を開ける。
 眼に映るのは、八戒の上気した顔。
 自分がこんな顔をさせているのかと思うと、妙に嬉しくなる。
 もっと触れたくて、近づきたくて手を伸ばせば、硬質的な音と共に引き戻された。
「っ!・・・」
「悟浄?」
 勢いを付けてマットレスに埋もれた悟浄を、こればかりは心配そうに覗き込む。
「て・・・」
 なるべく負担を掛けないように、手首を少しだけ曲げて鎖の音を響かせ、掠れた声で
「コレ、外してくれ」 
 そう告げれば、八戒が呆れた表情を作る。
「まだ、納得してくれていなかったんですか?」
 あれ程言ったのに・・・と、少しだけ躰を離して自分の顔を眺める態度に腹が立つ。
「あぁ、でも少しだけ赤くなってますね」
「!!」
 息を飲んだのは手錠で擦れた手首を触れられたからではなく、最奥で繋がったままの八戒が伸び上がったから。
「ちょっ、・・・苦しいだろうが」
 何とか背をずり上がらせ、楽な姿勢をとろうとするが上手くいかない。
 仕方がないので喉の奥から絞り出すように声を出す。
 この際、睨み付けるような目付きは勘弁して貰おう。
「だから、コレ、外してくれよ。じゃないと・・・」
 その後の言葉は声にならなかったけど、八戒には伝わったようだ。
 くすり、と笑って「そこまで言われては仕方がありませんねぇ」などと言いながら、結局は解呪の呪文を唱えた。
 カチャン、と意外に軽い音を立てて転がった手錠を見る暇もなく、先程の言葉通りに腕を伸ばし八戒の背に回す。
 そして、ゆっくりと息を吐き出しながら囁くように言ってやった。

―――これで、お前に近づける・・・

 八戒は嬉しそうに笑うとしっかりと抱き返し、胸に刻みつけるように呟いた。
「あぁ・・・本当ですね」



ごめん、何だか訳が解りません(^^;)
まさに『ヤマなし・意味なし・落ちなし』を真っ向から行ってしまった。
ナナンさん、申し訳ない。や○いの神様は私には見えませんでした(^^;)




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