白き花咲く丘の上で



「悟能!見て見てっ!」
 花喃がはしゃぎながら駆け寄ってくる。
「ほら、キレイでしょ」
 差し出されたのは、一輪の花。白く、慎ましやかな雛菊だ。
「あっちにね、たくさん咲いていたの。悟能も行こう?」
 僕は手にしていた本を閉じると、彼女の誘いに応じるべく立ち上がった。
 一歩木陰から出ると、春の軟らかな日差しが辺りを包む。
「それじゃ、そこでお弁当を食べようか。そろそろお昼を過ぎるし」
 傍らに置いてあったバスケットケースを持ち上げると、僕は花喃に提案した。
 そうだね、そうしよう。花喃は嬉しそうに笑うと、右手を差し出す。
 つられたように僕も空の左手を花喃に差し伸べる。
 重ねられる手の平。自然に絡む、指先。
 いつもとは逆に花喃に手を引かれ、僕は新緑の丘を歩む。
 僕らはよく、こうして手をつないで歩く。
 合わされた手の平から体温と共に、互いの気持ちが伝わるようで。
 花喃の暖かな手は、彼女の心そのものだ。
 全てを包み込む、母のような手。癒すことを知る、女性の手。
 僕は花喃の手が、とても好きだ。
 以前、そう彼女に告げると、花喃は微笑みながら自分は僕の手が好きだと言ってくれた。
 それからかもしれない。
 僕らがよく手を繋ぐようになったのは・・・・・・お互いに触れるようになったのは。

「悟能。ね、キレイでしょ?」
 白い花に埋め尽くされた丘に着くと、花喃は僕を振り返った。
 小さな花は、一面を白く染める。大地を包み込むように・・・・・・全てを覆い隠すように。
 この白い幻想的な世界に、花喃はとてもよく似合う。
 細く、儚げな彼女の姿は、この白い世界にとけ込んでしまいそうだ。
 僕は繋いでいた手に、無意識に力を入れた。
「悟能?」
 不意に強くなった手の力に、花喃は始め不思議そうな顔をしたが、直ぐに柔らかく微笑むと自分の手にも力を入れて握り返した。
「大丈夫だよ、悟能」
 花喃は僕の顔を覗き込むように言う。
「私達はいつも一緒だよ」
 まるで、暗示をかけるように。
 花喃は繋いだ手を持ち上げ、僕の手に唇を寄せる。
「この手はもう、離れないから」
 瞳を伏せ、祈るようなその姿は僕の脳裏に焼き付いた。
 きっと僕は、一生忘れないだろう。
 彼女の傍らを、二度と離れないと誓ったこの日のことを。
 今はまだ守られてばかりいるけれど、君を守れるよう、強くなるから。
 幸せに、幸せに、幸せに。
 全ての苦しみが、君を避けていきますように。
 優しい君が、いつまでも微笑んでくれますように。

「花喃」
 全ての想いを込めて、僕は花喃に接吻を贈った。



ZINさん、散々お世話になっておきながら申し訳ない。
どこがほのぼの八×花なんだ〜っ!というような出来になってしまいました。
(というか、花×八だよ、これじゃ)でもこれが限界だよぅ。諦めて受け取って下さい(--;)
所詮私はヤ○イ好きの同人姉ちゃんって事ですね(苦笑)



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