グラスに映る二人
かたん・・・
「あ・・・」
グラスに注がれたウイスキーがこぼれる。
視線を向けずに手を伸ばした捲簾の手がつかんだのはグラスが通り過ぎた空間だけであった。
「珍しいですね、あなたが目測を誤るなんて」
「ん?・・・あぁ、見てなかったからな」
床に落ちたグラスを拾い、軽く床を拭うと、天蓬はグラスを机の上に戻した。
「あ、濡れてしまいましたね」
「ん?ああ」
さして大したことでもないように捲簾は答える。
「ふふ」
天蓬はその手を取ると指に濡れたウイスキーを指ごと口に含んだ。
「な!?お、おい・・・」
突然の天蓬の行動に動揺しまくる捲簾。
「そんなにあわてることもないでしょう?いつもはもっと激しいのですから」
こともなげに言いながら、自分の舌の上をなぞらせるように指を口から引き出す。
「そう言う問題じゃなくて・・・」
言いかけた捲簾の口は視線をはずした隙をねらったかのように近づけられた天蓬の唇にふさがれた。
「せっかく二人なのに、野暮なことは言いっこ無しにしましょうよ」
「・・・けっ」
「おや?そんなにいやでしたか?そんなにふてくされていると、ここで襲っちゃいますよ」
表情はにこやかなままであっさりと物騒なことを言ってのける天蓬に背筋の寒気を覚えた瞬間、廊下の外から二人を呼ぶ声が聞こえた。
「捲簾大将殿!、天蓬元帥殿!、天帝がお呼びです!速やかに御殿へ参来するように!」
「ふぅ・・・」
あからさまにほっとした表情を見せる捲簾。
「仕方ないですね、めんどくさいことはさっさと片づけに行きましょうか。当然、今日の夜は覚悟して置いてくださいね」
ドアを開けるまで捲簾の腕に自分の腕を回しながら進む。
「俺の人権は?」
「ありません!」
「とほほ・・・」
どきっぱりと宣言され、肩を落としながらも天蓬の笑顔に逆らえない捲簾であった。
〜FIN〜
ZINさんに頂きました、2万HITお祝い小説です。
天蓬×捲簾!我侭訊いて下さってありがとうございます〜g(>▽<)g
もうもうもうっ!イケズな天蓬がワタクシ的ツボですゥ