◇ 温もり ◇
「悟浄、眠いのなら部屋で・・・」
ツイン二部屋を確保しておきながらも片方の部屋に何故か集まってしまう。特に何かをするわけでもなく酒を空け、下らない話に花を咲かせる。
と、既に10本のビールを空けた悟浄がトロンとした目をして机に頬杖をつく。酔うにしては少々早すぎる量だが続く旅路の見えない疲れと相まっていつもより早く酔いが身体を蝕む。
八戒の言葉に生半可な返事を返しながらうとうとと気怠い雰囲気を纏う。
「風邪を引いちゃいますよ。」
ほら、と促されて渋々と立ち上がる。
「悟浄、お休みのちゅーは?」
八戒はふと悪戯を思い付いてそう声をかける。そして悟浄は訪れる心地よい眠気のために深く考えずに行動を起こす。
「ん〜」
立ち上がったついでに八戒の肩に手をかけると触れるだけの可愛らしいキスを八戒の唇に落とす。そして、考えもせずに当然とばかりに三蔵の左頬に、悟空の右頬にキスをするとヒラヒラと手を振って部屋を後にする。
「・・・・なにあれ。」
突然のことに付いていけずに悟空は右手でキスをされた頬を覆い目をパチクリさせる。三蔵は額に青筋を浮かべながら新聞をぐしゃりと握り潰す。
「おや、サービス満点ですね〜。」
さしたる変化のない八戒の声に悟空が、三蔵がそっと伺えば顔に張り付いた笑みが・・・それはとても素晴らしい笑みなのだが・・・とてつもなく怖かった。
同時に息を吐き出すと悟空は悟浄のフォローに入ろうと余計な事を口走る。
「悟浄もほら、寝惚けてただけだし〜。」
「てめーが余計なことを言わなかったらこんな事態にならなかったんだ。」
ぼそっと三蔵が付け加える。
「悟浄もちゃんと区別してたじゃん、八戒にはちゃんとキスしてたし。」
オレらおまけみたいなもんじゃん。と言っても八戒の耳には届かない。
「・・・お仕置きですかね。」
ポツリと呟いた声に部屋の温度は一気にマイナスとなり見えない吹雪が部屋を満たした。
「それでは僕も休みますね。」
何事もなかったように微笑む八戒を見送りながら少しばかり悟浄に同情した2人であった。
部屋に戻れば上布団をかけずに途中で崩れたように眠っている悟浄を見て保父さんよろしくと甲斐甲斐しく世話を焼く。
「しょうがないですね。」
そんなことを言いながらもどこか嬉しそうな八戒に付ける薬はない。
「あー、寝顔も可愛いですね〜♪」
八戒の周りだけ別世界である。
ふにっと頬をつつけばころんと寝返りを打ち逃げる。
「子供みたいですよ。」
何を言っても無駄である。八戒の脳味噌には悟浄=可愛いがしっかりと刻み込まれしかも、悟浄=自分のモノという図式も当然の如くなのである。
「こんなに可愛らしく眠っているのでお仕置きなんて出来ませんよね。」
すうすうと眠っている悟浄の頬にそっと口付ける。
「起こすのは忍びないですよね〜。」
そう言いながらも唇を重ねる。
初めはそっと起こさないように気を使いながら・・・しかしそんな気遣いは直ぐに無くなる。触れれば欲しくなるのは当たり前でそんな欲望をさらけ出したのは悟浄なのだから・・・こんな欲望をこの身に再び与えたのは悟浄なのだから責任をとって貰わなければならない。
「愛してますよ。」
この感情も全て失って、そして与えられたのだから・・・その全てが悟浄のモノと言っても過言でない。
「俺も好きだぜ。」
ニッと悪戯っぽく笑う深紅の目と合う。
「悟浄!起きてっ!」
珍しく狼狽する八戒を楽しそうに見ながら気怠い腕を伸ばしてベットに引きずり込む。
「あんだけされちゃ起きるって・・・ってま〜気持ちはいいけどね〜。」
「ではアレはいったい何なんです?」
先程のキスのことを言っているのに気づいているのかいないのか、悟浄は軽く眉を顰める。
「なんで、三蔵や悟空にも・・・」
「あぁ、何となく。」
シレッと答える悟浄に八戒の目が怖くなる。
「何となく寂しかったんだよ。・・・その・・・口が・・・」
あんな所でディープかますわけいかないし〜と言い訳めいたことをゴニョゴニョ言うが八戒の耳には届かない。
「少し我慢して下されば僕が満足させてあげましたのに。」
クスッと笑う。それに悟浄は安堵して八戒を力無く引き寄せる。
「欲しいのですか?」
「・・・・・・・・そう見えない?」
しばらく目を合わせて2人同時に笑う。
「恥ずかしいな〜、俺達」
「本当に」
今更純な恋人のふりする必要さえない。言いたいことやしたいことだって何となく解る。傍にいてなんて言わない。居るのが当たり前。互いが空気のように必要な存在。
「じゃ、遠慮なく」
八戒の優しい笑みと共に唇が重ねられる。舌を奪うようなキスに悟浄の瞳は次第に溶け始める。ほぅっと上気した頬に舌を這わせ耳朶に軽く歯を立てるとそれだけで軽く身体が跳ね打つ。
「・・・焦らすなよ・・・おそっちまうぞ・・・」
「息を荒げて何を言ってるんですか。」
「マジやばいんだって・・・」
気まずげに悟浄は視線を泳がせる。
「しょうがないですね〜」
そう言う八戒も嬉しそうに悟浄の服を剥ぎにかかる。
「あぁ、・・・綺麗ですね。」
ニコニコと笑いながら悟浄の肌に指を滑らす。
「ん〜、この手触り♪」
「こんの〜変態が〜!」
シャツの前をはだけて指先ならまだしも胸に頬ずりされるのは気色悪い以外の何物でもない。
「変態とは酷い。純粋に悟浄の肌触りを堪能してるだけですよ。」
「気持ち悪い〜〜」
何が哀しゅーて男にすりすりされにゃならんの?と悟浄の叫びは虚しく八戒は子供がお気に入りのぬいぐるみにするように頬ずりするのであった。
「貴方だけなんですよ・・・」
ポツリと呟いた言葉に悟浄が身じろぎすると身体を離した八戒と視線が絡み合う。
「貴方だけです。こんな熱量を僕に持たせるのは・・・」
穏やかでどこか寂しいとい感じる微笑み。そんな顔をされたら逆らえないしなにされても許してしまいたくなる。・・・そうやって何度も騙されてるけど。
「も・・・限界・・・勘弁して・・・」
体の中に渦巻く欲望が出口を探して暴れる。これ以上何もされないならいっそ自分でやった方がマシというまでに追いつめられていた。
「いっそのことそのまま入れて差し上げましょうか?」
にっこりと恐ろしいことを囁く八戒に脱力を感じながらも現状よりマシだと感じてそれがそのまま口に上る。
「そっちの方がマシかも・・・」
「では遠慮なく。」
体をさっと剥がし八戒自身を躊躇することなく取り出す。
「体の力を抜かないと痛いですよ。」
淡々と喋る八戒に悟浄はザッと血の気が引くのを感じた。
「うわぁあ!マジかよっ!裂ける!」
「貴方が望んだんでしょ?・・・僕だって貴方を傷付けるのは嫌ですよ。」
慌てて八戒の下から逃げ出し壁にへばりつく悟浄に八戒は笑みを絶やさずに告げる。
「それとも、舌と指だけでいかせてあげましょうか。」
微笑みは氷原に降り注ぐ雪の如く・・・。
逆らう術の無い悟浄は哀れな生け贄となった。
(花詠様よりコメント)
斎さん〜、ごめん!!!これ以上花詠には書けないなり〜〜〜!!
八戒が・・・八戒が暴走する・・・助けて〜〜〜。
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花詠さん、おっけぇおっけぇ、大おっけぇですわ!!
ラブラブ甘々、でも鬼畜〜っ!転げまわってしまいますよ、ワタクシ!!
うにゃ〜ん、幸せ〜〜(//▽//) 花詠さん、本当にありがとうございます!
これからも宜しくお願いしますねゥ (斎)