浪人生活

結局、1回目の試験で13科目中11科目受かったにもかかわらず、残り2回で2科目合格することができなかった。

周りの友達が受験している姿を見て、「今年はバイトを減らして、真剣に勉強しよう」と思う気持ちもあったが、バイトはそれなりに楽しかった。バイト先の先輩社員からも、「このまま働いたらどう?正社員にしてあげるよ」などと言われ、正直迷ったこともあった。「働いてお金をもらい、そのお金を使う」。これだけでも、それなりには幸せだったと思う。しかし、過酷な肉体労働を日々繰り返すうちにふと思った。「ほんとに一生このままでいいのかな?」。 

当時、はっきりやりたい仕事というのはなかった。中学校時代は、映画監督になりたくて、アメリカの大学に入ろうと思っていた。だから、アメリカの高校にも行った。しかし、学費を自分で稼がないといけないぼくにとって、アメリカの大学に留学するというのはほとんど不可能だった。目前の夢があっさりなくなり、次になにをしたいか分からなかった。普通なら、なにも分からなくても、そのまま高校に行っていれば、なにも考えずに勉強だけしていればよかっただろう。しかし、バイトとはいえ、働いていたぼくにとっては切実な問題だった。「このまま、このしんどい仕事を一生やっていて楽しいのかなあ?あれだけアメリカで苦労して英語も話せるようになったのに、こういう仕事じゃ意味がない。世界が広いこともわかったのに、中卒の今のぼくにはこういう仕事しかできない・・」。なにがやりたいかは、はっきり分からなかったものの、とりあえず、もっと選択肢がある立場にならないといけないと思った。そのためには・・。「やっぱり、大学に行くしかない・・」