about : Midnight Walk
Document, Sep 28, 2003
会社からの帰り道、素敵なモノを見つけた。
それは、畳んで打ち捨てられたエア・ウォーカー。
ちょっと前に流行った、エクササイズ・マシン。
買ってみたはいいが、長続きせず、結局破棄する事になったのだろう。
冗談交じりに "ご自由にご利用下さい" と張り紙でもしてやろうか、
などと思ったものだ。
それが翌朝、出社途中にふと気付いた。
位置が微妙に変わっていたのだ。
その翌朝、また明くる朝も、微妙に位置が変わっていた。
そしてついにそれは、利用可能な形態に変形していた。
出社→帰社間では変化がなく、帰社→出社間で変化がある事から、
変化が起こるのは夜間である事が判明している。
最近の私の帰社時間は早くとも 21:00 頃であり、遅ければ
24:00 頃にもなる。少なくともそれ以後、何者かがマシンを
堪能している、そういう事になる。
深夜、ひっそりと行われる路上エクササイズ。
光る汗、とびきりの笑顔。
思いを馳せる度、ややアメリカナイズされた画像が頭に浮かぶ。
そして、それは 1人だけなのか? どんな人(達)なのか?
酔っぱらい?
仮面を付けた紳士・淑女の集い?
やり場のないエネルギーをぶつける若者達?
現場を押さえた際には、再度報告したいと思う。
Document, Oct 19, 2003
彼 (エア・ウォーカー) との衝撃の出会いから、はや 20日程が過ぎた。
秋ももう深まり、見える景色からは強い色合いが消え、
街は落ち着きを取り戻しつつあった。
そして彼ももう、街中のひとつの風景として溶け込もうとしていた。
そんなある日、彼がふいに移動した。
移動の意図には全く思い当たる節もない。
ただ、移動した、という純然たる事実が目の前にあるのみである。
そしてすでにお気づきの方もいるかもしれないが、彼の後ろ足のストッパーが
無残にも外されているのだ。そして写真では見えないが、右前足も外されている。
これに気付いた時、私は声をあげて泣こうとした。けれど、泣けなかった。
一体誰が? 何のために? 彼にこんな惨い事をしたのだろうか。
ようやく安住の地を見出したばかりだったというのに。
彼の背中を通して、悲しみが伝わってくるような気がした。
Document, Nov 16, 2003
あの突然の移動から約 1月が過ぎた。彼 (エア・ウォーカー) は新天地に
馴染んでいった。そしてきっと彼自身、"ここの暮らしも悪くないかもしれない"
と思っていたのではないだろうか。なぜなら、彼はここから動こうとせず、
周囲との融和に努めていたからだ。そんな彼は輝いて見えてさえいた。
そんな中、またしても彼は移動した。
(道の向かい側に移った)
しかも今回は、いつも彼に寄り添うように一緒にいた消化器と植木も一緒に。
2ヶ月近く似たような境遇にされされていた 3人は、いつしか共鳴し合い、
奇妙な繋がりを持つに至ったようだ。
無機物 2人に有機物が 1人、真にもって風変わりな組み合わせではあるが、
この 3人が共に居るのは何故か必然であるかのように思われる。
まさにカ・テット。
エア・ウォーカーは正しくデッタ・ウォーカー、
植木鉢は純白の薔薇へ繋がり、これはジェイク、
となれば、残った消化器はエディなのだろうか。
そしてこの運命を共にする者達と出会った私は、暗黒の塔を目指し、旅に出るのだろうか。
そんな日が、いずれやって来るのだろうか。
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