回転草とは、西部劇などに出てくる、風に吹かれ荒野を彷徨う草の事を指す。成長してから風に吹かれると茎が折れ、そのまま風に流され転がっていくのだそうだ。それは、西部のならず者が、風に吹かれて街にやって来るのと似たようなものなのかも知れない。西部とは、そういう所なのかもしれない。
ある日、俺は新小岩の西部を歩いていた。どうという事はない、平穏な休日の昼、街を歩いていたに過ぎない。だがそんな平穏な日々に忍び寄る、黒い影。
また 1つはブラウン。陽気な振りをしちゃあいるが、秘めた殺気は消しきれちゃいねぇ。
くそう、とんだドジを踏んじまったぜ。まさか 2人につけられていたなんてな。だが、そうと分かったからには、俺もそれなりの仕事をしなけりゃならねぇ。まずは敵の品定めだ。
だがブラウンの方がちょいと上手だ。こいつの伏せ方は半端ねぇ。まるで地面に押しつぶされたかの様だ。
だが、俺を舐めて貰っちゃあ困る。俺とて、西部じゃあちょいと名の知れた男だ。ゴロツキ 2人に遅れを取る様な男じゃあないぜ!?
そう思って 2人を仕留めようと体を起こしかけた刹那、鋭い殺気が俺を貫いた。こいつは只者じゃあない。そう思って俺は、すんでのところで身をかがめた。そしてその殺気の主を、探した。
そいつはしたたか者だった、遮蔽物を上手く利用して、身を隠していやがった!
だが、ポジショニングが安易過ぎる。背後から簡単に上を取れるじゃあないか。どうだ、これでこっちの姿を良く見て下さいと言わんばかりだぜ。なら、よぅく観察してやろう。ハッ、なんて無様な姿だ!
こうして追手を始末した俺だが、さらなる新手が忍び寄る。
それはもう、うっすらと白髪の混じった、壮年の男だった。昔はちょいと鳴らした腕前だったのかも知れないが、今のコイツと俺では腕の差は歴然、ヤツが俺の前に出た時、既に勝負は決していた。新手は手出しする事もできず、地面に佇む事しかできなかった。
だが勝負というヤツは常に冷酷だ。俺はヤツの正面から、この一撃を放った。
追手どもは確かに手強かった。だが残念だ、お前さん達は俺の敵じゃあない。
追手どもを退けた俺は、家路に付いた。だがそこにも、黒い影は忍び寄っていた。所詮俺はならず者、俺の行く先々じゃあ、硝煙の匂いか死体か、それしかないのさ。
だが神というものは残酷なものだ。屍をさらすだけではあきたらず、
結局のところ、ヤツ等も俺も、所詮は同じ穴の狢、死ねばこうやって、荒野に骸を晒すだけ。根無し草の俺たちは、こうやって荒野を彷徨うしかないのさ。