about : ビデオが壊れたのよ
序章-Begining of the End-
そう、それは 7/28 の事だった。そろそろ F1 ドイツグランプリの放映が始まるな、という事でビデオの録画予約をし、さてテープを差し替えるかとしたその時、切ない状況に陥った私。
テープが出てこない
取り出しボタンを押すと、排出用にモーターが回る音はするのだが、一向に出てこない。暫く待っていると、まるで排出を諦めたかの様にビデオの電源が OFF になり、しゅぅぅん、という音と共に事態は終焉を迎える。
念のため、次の事を試してみた。
- 電源を入れなおし、再度取り出しボタンを押す
- 電源 OFF の状態から取り出しボタンを押す
- テープの最後を再生し、自動巻き戻し→排出の機能を利用してみる
しかし、これらは全て徒労に終わった。
仕方なく、私はドライバーを取り出し、ビデオの上面カバーを取り外した。
すると、そこにはしっかりとビデオカセットをくわえ込んだ機構が見えた。テープは挿入口よりやや下に取り込まれており、両脇はしっかり金具で固定されている。見る限りその金具はネジ一つで外せるという様な雰囲気ではない。しかもヘッドが開き、テープがヘッドにロードされてしまっているので、強引にテープを持ち上げるという選択肢は考え難かった。
にじり寄る絶望感に押しつぶされ、大きくうな垂れた。そしてしばしの後にふと顔を上げてみると、
TV 中継では北川えりによるどうでもよいコメントが始まっていた。
Time is over. もうムリだ。こうなったら本腰を入れて対策を考えるとしよう。とりあえずは、テープをいかにして取り出すかだ。
第一章-Getout & jail free-
呆然と眺めていても仕方ないので、まずは機構の理解から始める。取り出しボタンを押すと排出のためにモーターが動く事は既に確認済み。それで排出されないという事は、駆動系は生きていて、伝達系に問題があるという事になる。よってまずは伝達系の所在を確認することにした。まず上部カバーを外してその動作を確認してみた。ボタンを押すと何と、ヘッドにロードされているテープがカセットに戻されたではないか。
よし、これである程度は無茶ができる!
と私の脳内にフラグが立った。まずは強引にテープを上に持ち上げてみた。びくともしない。続いてカセット付近を舐めるように眺め回す。すると気になるギアが複数見つかる。
そこでその内の一つを指でグリグリと回してみると、カセットが微かに動いたではないか。その時私自身、目がかっと見開かれたのが分るほどに興奮した。心臓がドクドクと高鳴り、顔が熱を帯びてくるのが感じられた。思うに任せて f**k you の時に立てる指を荒々しくギアに突き立て、激しく、時にやさしく、浅く、深くまさぐった。するとそれに呼応するかのように、ヒデオはむくりとその体を持ち上げ始めた。その反応に意を得たりと私は微笑む。そしてギアをなで上げる指をさらに激しくくねらせた。思わず息を荒げてしまう。今、私は新たなフロンティアの開拓者の様に、好奇心と興奮に包まれていた。最後に指を力強く弾き上げた瞬間、何かが脳内でスパークした。そして体から熱い何かが放出された。
あ、愛に満ちている…
そして私は、一つの事を成し遂げたという達成感に包まれ、そのまま心地よい疲労感と共に眠りについた。
第二章-Analysis-
せっかく機構を調べたので、ちょっとだけご紹介。カセットの下はこの様になっております。
狙いはギアを動かして、どのギアが関係しているのかをお見せする事だったのですが、やはりシャッタースピードより速くは動かせませんでした。ですので関連するギアを黄矢印で示しておきましょう。下向き矢印で指しているのがモーターで駆動されているメインのギアで、これに動かしたいのギアを噛ませます (先送り・巻き戻しもこれで駆動する)。上向き矢印で指しているのがカセットのリフトを動かすギアで、リフト時はこれを動かして上のギアに噛ませます。
ギアを噛ませるための仕組みは簡単で、左の矢印のところにある横に伸びているバーが右方向にスライドし、すると左の矢印の上の仕掛け (くの字型で中心が止めてある。左を下げれば右が上がる仕組み) が画面下方向に動き、右の矢印のところのギアを押し上げます。このギアから先の指でぐりぐりしたギアまではリフトの下でゴム輪により右方向へ駆動力を伝達しています。しかし壊れた今、くの字型の仕掛けは動くのですがギアを噛み合うまで動かすことができなくなっています。これは部品が欠損したのか、はたまたバネが弱くなったのか、壊れてしまった今では知る由もありません。
いや、しかし今回の故障でビデオデッキの仕掛けをざっと知ることができました。怪我の功名つーか何つーかアレですが、でも新しいのを買わなきゃならないってのがあるだけに、素直に喜べないトコロです。
第三章-BUYERS EVE-
Dear mother、dear father, what is this hell you have put me through.
で始まるのは METALLICA の DYERS EVE ですね (コレ位ならパクっても著作料請求されることも無かろう (というのはナープーの件の風刺) )。まそれはさておき、ビデオデッキも壊れたことだし、さっそく新しいのを調達しますかね、と勢い勇んで街へ出るのです。
致命的な故障じゃないんだし、修理出せよ!
というご意見もあろうかと存じます。ええ、承知しております。ただ、
修理代高すぎ!
しかも最近は個別に修理するんじゃなくて、ある程度大きなユニット単位で "交換" するだけらしいんですよ。しかもそんなヘッポコ仕事のくせに人件費はバカ高い。どうもお金を出す気になれないんですよね。まあ最近は仕掛けも高密度化しているし、IC/LSI も利用されている関係上誰でも修理できるというはずもなく、むしろ修理できる人ってかなり偉いかも (ロジックアナライザくらい楽勝で使えなきゃダメかもね)。とまあそんな感じで、物を大事にしたい気持ちは山々なんですが、自分自身での修理不能と判断した段階で購入へと心は動いていったのでございます。(しかし、できることなら自前で直したかったです。マジに。)
そして購入なのですが、街へ出る前に最近は
価格.comで事前調査する事を学んでおります。そしてテキトーに調べてみると、ビデオデッキってものすごーく安くなってますね。一昔前は 6万ってのが心の相場だったのですが、今ビデオ機能だけのまともな代物でも 1〜3万ですからね。時には BS も付いて。どうしてかといえば当然、DVD レコーダや HDD レコーダ (PC での録画も含む) の登場が理由ですね。ヤツらは 7〜 10万はする高価なもの。ソレに対してビデオデッキは旧世代のものってことで、やっぱ安くしないと製品的に魅力が無くなるんでしょうね。ま、もし DVD レコーダと旧来のビデオデッキが殆ど同じ値段で売ってたら、私も迷わず DVD レコーダ買うでしょうからね。世代交代つーか何つーかリストラされたみたいで切ないですね。
とまあそんな感じで購入対象を物色していると、妙に家電離れしたデザインのデッキがありました。VICTOR の cuby ってヤツなんですけどね。ビデオデッキのクセに竹脇無我…もとい縦置きなんですね。しかも幅 10cm 程度。そしてふいにテレビの辺りを見回すと丁度そんな隙間が。その刹那、私の胸のニトロチャージボタン(左側)のスイッチが入りました。もう迷うことなく
コレ! コレ買う!!
そんな風にして、購入対象を決めました。
第四章-deck in a bag-
という訳で VICTOR の cuby を買いに出かけました。まず行ったのはビックカメラ (有楽町)。なにせ定期でダーターで行けるし、ポイントもいい感じに貯まってきているので。ヘタなところで買うよりは安いしね。という事で 1F のビデオ売り場を眺めるも、目的の cuby は見当たらず。
そこでその足で秋葉原へ行く。最初テキトーに北方面へ向かってナカウラ電機というところに入ったのですが、そこにもナシ。 !?もしや売り切れ続出? などと不安を抱えつつ、ここなら誰も買わないよね、という yamagiwa へ行ってみる。するとありましたよ。しかし値段は 23800円。やはり思ったとーり高い。 Web の最低価格は 16800円だったとゆーのに。でも 3色あるうちのアイボリーだけは店頭にもなく、どうやら yamagiwa "でさえ" 売り切れている模様。そしてしばらく歩いてサトームセンに入る。こちらにもありました。21800円。さらに 3色のうちピンクのみ店頭展示品で 18900円という値段。18900円なら Web との差額 1割強、いい感じだけど、店頭表示品は遠くから見ても分る程にひどく汚れている。いや、本当にヒドい。う〜んこれは…と思いつつ退店。しかし 21800円の値段はしっかり覚えておく。そして続いてミナミ無線 (T-ZONE(?)) にいってみると、何と閉店セール実施中。ホアー、チャンス到来か? と思うもビデオデッキ自体売っていない。まあ売れそうなものは適当に量販店とかに流したのかねー (多分店頭表示品を捌いてたんでしょーね)。そしてさらに北を見てみると、どうも目ぼしい店らしいものは一軒も無くなりました。仕方なく道の逆サイドに渡ってみるも、そちらには家電を売っていそうなお店すらなく、そのまま総武線高架下までたどり着いてしまいました。そしてふと気付くと、家電関連って秋葉原駅の南側に集中しているのね。そこで目に付いた店からローラー作戦。すると…
という具合。ハー、こーなるとサトームセンの 21800円がとても輝いて見える。しかしここまできて北方向に引き返すのもなー、と思っていると駅南正面の雑然とした店の群集の中にサトームセンの文字を発見。私はそこへ吸い寄せられるように入っていった。そして 3F のビデオ売り場に着くと、確かにそこに cuby はあった。がしかし、何故か 22800円の表示。
何故だー! 1000円高いじゃねぇかー!!
最近絶叫系のネタが好きなだけに、心の中で気の済むまで叫びました。しかしもう面倒なんで、お店の人を呼んで必殺の台詞
これ幾ら?
を発動。値札が付いているとゆーのに (実際秋葉原のお店の殆どは、表向きの値札を付けているとの事。それより 1割くらい安くしてもいい様に設定しているとか。)。そこで緑色を指定すると展示品しかないので 18900円で出しましょうという回答。おお、俺、今奇跡を起こしたぜ! とりあえず概観をざっと確認した上で OK を出し、ご購入〜。
しかし店頭展示品なので箱がありませんとの事。どうするのかと思ってしばし待っていると、ビニールシート (プチプチするヤツ) で包まれた cuby が奥から登場してきました。今ひとつ風情を欠くな、等と思いながら、cuby を持ち帰りました。
ちなみに下はその時の持ち帰り方を示した写真です。
なんと箱なしならちょっとしたバッグに入ってしまうサイズなんですよね。街中で私を見かけた人たちは、まさか私がビデオをバッグに入れているとは夢にも思わなかったことでしょう。さて、ではせっかく買ったのだし自慢するとしましょう。ついでに、いままで使っていたデッキと比較などして見ましょう。
どうでしょう? ちなみに今までのデッキも省スペースタイプで結構小さいんですけど、それより明らかに小さい cuby。入力 1系統、テープカウンターが表示されない LCD 画面とちょっと弱い性能なのが玉に傷ですが、まあそのくらいは多めに見ましょう。
そして今、cuby はこんな感じに収まってます。本当にテレビとコンポの隙間に配置しました。ですので今までデッキがあった所は開きスペースとなり、省スペースの概念からもいい具合になっております。これが緑でなくてアイボリーだったら色的にもソリッドな感じで綺麗にまとまるんだけどなー、等とちょっと残念ではありますがね。
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