about : 扉、開けるべからず


違和感

私はよく、酒を買いに環七を飛ばし、葛西まで行くことがある。最近は寒くなってしまったのでさほどではないが、バイクが心地いい季節なら月に 1度はそうしている。

その道すがらいつも気になる事が、いや、気になる場所がある。何と言おうか、不条理というか、違和感と言うか。ちなみに日本で作られた漢方薬は "和漢" という。

違和感の根源

その日も、酒を買いに行った帰り、丁度環七を飛ばしていた時の事だ。葛西橋通りの陸橋を渡り終えて少し走ると、その、いつもの違和感が襲ってきた。そこは、道の脇の、何の変哲もない民家だった。いや、正しく言えば、家だけは何の変哲もない。だが、扉が、違っていた。

違和感の正体

その扉は、くすんだミスティローズの、所々錆びたドアだ。朽ちてはいるが、取っ手も郵便受けも、除き窓も揃っていた。だが、何かが欠けていた。

door


分かった! 欠けていたのは壁だ!!

door


考察

取っ手には鍵穴さえもあるというのに、この壁のなさ。何という潔さだろう。壁なんか要らない。扉さえあればそれでいいんだ、そんな作者の声が、強くこだましてくる様に感じられてならない。

この扉は、きっと西洋人には理解できないだろう。何故ならこの扉は、日本人の潔さそのものなのだ。まるで一遍の俳句の様に、すべての無駄をそぎ落とした結果がこの扉なのだ。


特集に戻る
homeに戻る