about : 2007年、夏

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今年は猛暑と言われ冷夏と言われ、そして結局猛暑だった。
そんな夏といえば思い出す、黒い影。

家具の隙間、壁の角、ふと見ると蠢いている、6本足の難いヤツ。
今年はヤツと出会ったのは一度きり。それも上首尾に撲殺に成功。
その時のヤツときたら、腸を出してピクリとも動きやしなかった。

よし、今年の夏は上々だ。そう思った。いや、そう思っていた。


そんな夏が終わりを告げようというある日、お世話になっていたティッシュが
残り少なになってきているのに気付いた。そしてその、最後の一枚を
シュッと引き上げた時、箱の中でカラリと音がした。

おやおや、ティッシュのダンナも赤球ですかい?
私はひげた笑いを浮かべながら、その音源を確かめようとした。

ティッシュの箱を振る私。
箱からはカラカラと音が聞こえてくる。

その時、黒い影が、
見えた。

水分が完全に飛び、精気の欠片すらないままに、ヤツは箱の中いた。
一体いつからそうしていたのかは分からない。
ただ、私が鼻をかんだり、尿とは違う何かを放出したりした時に、
かすかなエッセンスとして触れていたであろう事は、想像に難く無い。

嫌なほど真っ青な空を見上げると、そこには入道雲なんて無くて、
無数のうろこ雲が広がっている。ヤツの姿を空に思い描いてみた。
無数の雲が、ヤツの大群の様に思えた。

夏ももう終わりだな、そう思うしかなかった。
−以上−

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