about : 直腸検診フィクション-2

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俺ももう中年と呼ばれるに十分な歳になった。
中年になるとどうも体のそこかしこにガタがくる。
だから、人間ドックを受ける事にした。

身長体重からX線検査まで一通りこなすと、最後に
待ち構えているのは直腸検診だ。

肛門への異物挿入、それは男としての未体験ゾーン。
興奮や期待よりも、むしろ恐怖感と背徳感が俺を襲う。
そしてそれはこの、カーテン一枚隔てた向こうに待っている。

深呼吸一つ、俺はカーテンを潜った。

そこには、一台の機械が置いてあった。
よく見てみると、機械の側面に説明書きがある。そこにはこう書いてあった。
<<使用法>>
装置に跨り、肛門に突起を挿入して下さい。
突起を挿したまま一回転して下さい。
突起を抜き、アルコール綿にて拭いて下さい。
愕然とした。
何と恥ずかしい。しかも医者にやってもらうならともかく、
自らが挿入し、しかも回転するとは。

だがこれは医療行為だ。しかもこれをやらなければ会社から
怒られてしまう。ここはぐっと我慢だ。俺は恥ずかしさを堪え、
事に望む決心を固めた。

緊張で口にたまる唾液をごくりと飲み干し、機械に跨った。
ゆっくり腰を下ろし、くるりと一周した。

"ブー"

機械から音が発せられた。そして液晶ディスプレイには
"Error!" の文字が浮かんでいる。読み取りに失敗したのだろうか?
仕方なしにもう一度回るも、"ブー" という音が無情に響く。

どうした事だ!?回り方がまずいのだろうか?
そこで回転スピードを変えたり角度を変えたりしてみたが、
何度回っても同じ音がなるばかりだった。

途方に暮れる俺だったが、それとは別の、とある感情が
ふつふつと湧き上がってきている事に、俺は気付いた。

この全裸で、器具に跨って一周するのは、実は楽しいのだと。
そして両手を挙げて笑顔になれば、もっと楽しいに違いないと。

意を決して、俺は両手を上げた。
そして最高の笑顔で、くるくると回転し始めた。
一周、"ブー" という音の代わりに、"ピンポン" という音が響く。

やはりだ!やはり間違ってはいなかった!!
この装置の設計者も、きっと同じ感情だったに違いない。
俺は調子にのって、二週、三週と回り続けた。
その時、病院のスタッフがドアを蹴破って一斉に駆け込んできた。
−以上−

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