年を取ってからというもの、ずっと心のどこかに引っ掛かっていた あのイベントが、あと3日後に迫っている。 |
人間ドック |
健康に注意するのはいい事だと思う。それは認めよう。 がしかし、健康と引き換えに、あるものを失うという。 |
操を |
そう、直腸検診だ。 だがしかし今年に入ってから、俺はこんな話を聞かされてきた。 あれはオプションだから、別にやらなくてもいいんだと。 なんだ、じゃあ人間ドック==処女喪失というのは都市伝説だったのか、 そう思って安心していた。 そんな訳で、受診期限の 11/30 に受診予約をした。 すると、受診案内が送られてきた。そして俺は何となく オプションの項目を見渡した。 だが、おかしい。 オプション一覧に例の項目が入っていない。 |
ざわざわ |
俺の心の中に、黒い影が忍び寄る。 はは、まさか、そう思って受診コースを精査した。 上から下へ指差し確認しているその指の先に。 指の先に。 これ以上は、俺には書けない。 まるで脳天に釘を打ち込まれたかの様に、打ちのめされた。 先が土砂崩れで埋まった線路の上を、フルスロットルで走り抜けようとする電車の様な 王家の墓に生きたまま埋められようとしている人柱の様な タイガー戦車に拳銃一丁で戦いを挑む様な 完全なまでの絶望。 逃げ道はない。 俺は思った。 政略結婚に出される娘の気持ちは、きっとこんなだろうなと。 願わくば、先生の指が、 せめてちょっとでも細からん事を。 |
−以上− |