about : "The big no wear"

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御徒町駅で、物陰に倒れている男性を見つけた。
よく見てみるとその男性は、何故かズボン半脱ぎだった。


男性が急病で倒れた姿を想像した。
できなかった。

男性が酔っ払ってヘタり込んだ姿を想像した。
できなかった。

男性が酔っ払ってヘタり込んだ後、その苦しそうな姿を見た駅員が、
親切でズボンを下ろしてやったのだろうかと考えてみた。
そんなことはありそうにない。

男性が酔っ払ってヘタり込んだ後、別の男性が欲望に駆られそのズボンを
下ろしたところを想像してみた。
その光景ははっきりと思い描けた。

男性が今すぐ我に返ってズボンを履きなおすという筋書きを考えてみた。
ありそうにない。

男性を起こさぬ様、そっとズボンを履かせてやる事を検討してみた。
それを可能にする方法は思いつかなかった。


私は笑いを堪えつつ彼に背を向けた。
この男性があと数時間は寝続け、その間この男性を見た者全てが
そ知らぬふりを決め込む事は目に見えている。
駅員と警官が彼を駅員室へ連れて行って説教を垂れる事はわかっている。
そ知らぬふりを決め込んだ者達はのうのうと暮らし、
私の中の良心は、"きみはどんなふうに片をつける気だね"
のあの一言で私を悩ましつづけるのだ。


Mapio の電源を入れると、ヘビイ・メタルが流れてきた。
曲は激しくメロウで、なにもかもがにわかに安っぽくなってしまった
この一時を悼む哀歌のように聞こえた。それでも私は聴きつづけた。
曲は、自分とその男性のことを考えさせた。二人が二人とも強情で、
はみだしもので、裸だった。
危険なこの二人の男は、いま服のない部品の一つと化して消えたのだ。
−以上−

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