真っ白な地図に適当に線を引く、たったそれだけの事で、戦争は起こり得る。 この線を引くという行為は分類−カテゴライズ−という。 それは集合から部分集合とその補集合を定義する事だ。 本来地球には線なんてないんだけど、線はいくらでも引ける。 私の属する集団とあなたの属する集団の間に、 私の人種とあなたの人種の間に、 私の住む国とあなたの住む国の間に、 私とあなたの住む都道府県の間に、 私とあなたの間に。 部分集合と補集合との間に違いが大きすぎると、摩擦が起こる。 冷たい空気と暖かい湿った空気が衝突したときに生成される積乱雲の様に、激しい憎悪が生成される事もある。 本来地球には線なんてないんだけど、人が勝手に線を見出して、憎しみあって、呪いあって、殴り合って、殺し合っている。 もし地球の外からこの状態を眺めたら、滑稽なものなのだろうな。 (被害者の方に置かれましては申し訳ない表現ですが、ご容赦を) 物理法則から言えば、本来はどんな系も一つの安定した状態になるはずで、 安定した状態とは即ち全てが均一でエネルギーの最も低い状態で、 言い換えれば誰もが同じで訳隔てなく一様で均一で、 言うなれば生命のスープ、人類補完計画。 もう少し現実的に言えば、人種も国家も関係なく、皆が自由で平等で幸福を追求する権利を持っている、そんな系になるのが自然なんだろうな。 そんな系を作るには、今カテゴライズされている集団や人種や国家や個人が相互理解を深めなければならないんだけど、少なくともそれらの利害で動いている限りは実現しそうにない。 だからブレイクスルーが必要なんだよね。 既存の分類を超えて意見を交換できる様な。 Web がそういった力を持つ日は、いずれ来るのかな。 村上龍が "Web はまだ未成熟だ" と言っていた意味が、なんとなく分かった気がする。 これから必要なのは力じゃなくて言葉なんだと思うんだよね。 力で押し付けた理論は空虚なものだし、 理解された理論ほど確かなものはない。 相手がどんな人なのか分かっていれば、 それほど安心で心強いことはない。 言葉って大切なんだよ。 |
−以上− |