about : 一本ヌく
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先生はおもむろに私のシートを倒し、ギコチなく顔を近づけてきた。
決心が揺らぎかけたが、もう後戻りはできそうにない。
その時ふと母の顔が、脳裏を過(よ)ぎった。
私は胸元で、小さく十字をきった。
広樹:先生、優しくして下さい。
先生:痛かったら、言うんだよ。
広樹:ハイ。
先生:いくよ。
広樹:痛(ツウッ)。
先生:少しの間だけ、我慢して。
広樹:アアッ。
先生:ハアハア、どうだい?
広樹:大丈夫です。もう少し動かしても。
先生:んんっ。もう少しだ。
広樹:先生、も、もう…
先生:ウッ……ふぅ、終わったよ。
その行為の後には、真っ赤な鮮血が、激しい情動の証
とでもいうかのように広がっていた。
そして、コトリと音を立てて、一本の歯が鉄皿の上に置かれた。
※一部脚色有り
−以上−
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