about : バーチャルリアリティの限界

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 先日 TV を見ていたところ、
バーチャルリアリティ(VR)に限界はない
という旨の発言がありました。確かに奇妙な世界も考え一つ(+プログラミング等)で実現できる優れもの、それが VR のステッキーな所ですね。しかし我々の世界(系)には必ず限界があります。それ即ち人間の限界です。科学の世界が人間の限界によって限られるのと同様に、人が作り出す世界には創造主たる人間の限界が科せられてしまうのです。

 人は全くオリジナルなもの(存在しないもの)を夢想する事はできません。人間が創造する物の原形は常にこの世に存在しています。それを人がどのように咀嚼し、表現するかによって新しい想像が生まれます。好い例として宇宙人の想像図があります。概ねは人間が知っているものの型をしていますよね。言い換えれば、人間は人間の知識の範囲を超える事はできないのです。それと同様に、人が作り出す仮想の世界も、人間の知識の範囲に収束してしまうのです。

 ここで疑問に思う人もいるでしょう。ならヒューマンの科学・技術・文化の発展をどう説明するのかと。新しいものを造ってきたんとちゃうんかと。

 科学に関しては存在している物を観測しそれらを体系付けているわけですから人が作ったオリジナルではありません。技術においては、科学と既存の技術の応用ですから、改良であるといってよいでしょう。先端技術のコンピュータでさえ、人が頭で行っていた計算とアルゴリズム(命令、オーダー)を機械で実現したに過ぎません。文化においてはこの世にあるものの咀嚼、表現の仕方と言ってよいでしょう。文化は概ね人々によって支持されているものであれば、この世に存在しないものが人に理解されるのが難しいが故、文化の原形は必ずこの世に存在しているはずです。我々が文化で言う新しい、とは、発想・着想、表現が新しいのにすぎないという場合が殆どです。

 ちなみにここで言いたいのは科学・技術・文化を否定しようということではありません。これらをさらに発展させるのは人次第だ、という事を言いたいのです。これらが人の限界によって限られるからこそ、人の限界まで突き詰めたい、突き詰めて欲しいのです。VR といっても結局は既存の世界のパラメタを変えたものに過ぎないのであれば、それをどう変えたら一等面白いかを極めて欲しい、という訳です。これまでに存在しない斬新なものを造ろう、などと意気込みすぎず、自分の面白いと思うものをどう咀嚼して表現したら面白いかを考える、これだけで概ね面白いものができるのではないでしょうか。ただ、面白いかどうかは知識と発想・着想という二つの要素に依存しますので、面白いものを造るにはやはり自分を面白く作り上げなければならないということになります。さあ、勉強しましょう。限界を広げましょう。

注:宇宙人の想像図とは、宇宙人がいると仮定して、実際にいる宇宙人の図ではありません。
注:数学においては新しいものを造ってますね。"0"とか負の数とか虚数とか。抽象世界では新しいものを造りまくってます。ただこれらも計算によって導かれた解の解釈の仕方とすれば、オリジナルとは言い難いかもしれません。



−以上−




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