狐の生徒がみな叫びました。
「狐こんこん狐の子、去年狐のこん助が焼いた魚を取ろとしておしりに火がつききゃんきゃんきゃん。」
笛がピーと鳴り幕は明るくなって紺三郎が又出て来て云いました。
「みなさん。今晩の幻燈はこれでおしまいです。今夜みなさん深く心に留めなければならないことがあります。それは狐のこしらえたものを賢いすこしも酔わない人間のお子さんが喰べて下すったという事です。そこでみなさんはこれからも、大人になっても、うそをつかず人をそねまず、私共狐の今迄の悪い評判をすっかり無くしてしまうだろうと思います。閉会の辞です。」
狐の生徒はみんな感動して両手をあげたりワーッと立ちあがりました。そしてキラキラ涙をこぼしたのです。紺三郎が二人の前に来て、丁寧におじぎをして云いました。
「それでは。さようなら。今夜のご恩は決して忘れません。」
二人もおじぎをしてうちの方へ帰りました。狐の生徒たちが追いかけて来て二人のふところやかくしに、どんぐりだの栗だの青びかりの石だのを入れて、
「そら、あげますよ。」「そら、取って下さい。」
なんて云って、風の様に逃げて帰って行きます。紺三郎は笑って見ていました。
二人は森を出て野原を行きました。その青白い雪の野原のまん中で三人の黒い影が向こうから来るのを見ました。それは迎えに来た兄さん達でした。
おわり
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其の二(狐小学校の幻燈会)
〜〜終幕〜〜
