こんにちわ。この度は『南方楽園』企画編集の本をお買いあげいただきましてありがとうございました。こちらおまけ本は、ごくらく通信番外編とでも申しましょうか。しかし、しっかり企画もの。テーマは「帝国美女軍団」(笑)Rosaゲストの方々の美しいミッターマイヤー艦隊その他美女の面々をお楽しみ下さい。
ミッターマイヤー「美女」艦隊編
(初出しは「ちらしNo.9」だったらしい、女の子ヴァージョン。皆様にいただいた帝国レディースは、以下の話をもとに描いていただきました)ベイオウルフに乗り込んでいる人間が女の子になってしまった。
全員が女の子にになってしまったらしいと気付いたバイエルライン、慌ててミッターマイヤーの私室へ飛んできた。
「閣下、大丈夫ですか?」
「どうした?バイエルライン。卿も女の子になっちゃったのか…」
ミッターマイヤーの目の前にひょろりと背の高い女の子版バイエルラインが、あらぬ方向を見ながら直立不動で立っている。
シャワーを浴びていたらしいミッターマイヤーは、いつもの如くバスタオルを腰に巻いたままの姿で仁王立ちしていたが、胸の上には男にないはずのものがふっくらと隆起している。別に女の子になったバイエルラインが狼狽えることはないのだが、今まで男だった思考回路がいきなりの現実に追いつけないでいるらしい。
「きちんと隠して下さいよ。そういうものは…」
「すまんすまん。今着替えようと思っていたんだ」
男のままでいたかった、と溜息を付くバイエルラインは、次の瞬間伸びてきた腕にぎょっとする。
どちらかと言えば豊かに隆起しているバイエルラインの胸元を、ミッターマイヤーの掌がぎゅっと握った。
「うわわっ」
「なんでお前って、こんなに胸がおっきいんだ?」
「お、脅かさないで下さいっ、閣下。…閣下のは可愛いですよ」
まだ剥き出しのままのミッターマイヤーの胸元を見ながら、バイエルラインは真っ赤になった。
「それって、誉めてんのか?けなしてるのか?」
いくら女の子になったとは言え、もともと1メートル90センチクラスの大男がそんなに可愛らしいシロモノになるわけがない。
だが、もちろんバイエルライン以下ミッターマイヤー艦隊の面々にとって「閣下は別」。はっきり言って男だろうが女だろうが同じである。
──話の都合上、軍服も何時の間にやら女性仕様に。
男だったときよりもさらに小さくなった蜂蜜色の頭を傾げ、ややコンパクトな胸を張り、ミニスカートから威勢良く伸びた足を踏ん張って立っているミッターマイヤーは、食べてしまいたいほど可愛らしい。
野郎共が「漢」ミッターマイヤー閣下を慕っているときも異様だったが、こうなるとベイオウルフは百合の園だ。
こちらは溜息が出るほどの黒髪美女ビューローが、オペレーターからの報告を伝えた。
「トリスタンから入電。スクリーン入ります」
異変を聞きつけて通信を入れたロイエンタールは、画面に広がる女性たちにしばし無言だった。ミッターマイヤーもやはり見つめ合ったまま言葉が出ない。
「……ミッちゃん、可愛いね…」
ようやく出たロイエンタールの台詞に、ミッターマイヤーのこめかみがぴくりと跳ねた。
「…用がないなら通信を切るぞ」
「失礼。航海の無事を祈る。イゼルローンで会おう」
スクリーンが白くなった。ミッターマイヤーはピンク色の唇を尖らせて蜂蜜色の髪をかき回す。
「なんだあいつ、用もないクセに」
そのやり取りを見ていたバイエルラインの胸に、もくもくと暗い予感が渦を巻く。とにもかくにも、女性ばかりが乗り組んだベイオウルフは無事にイゼルローンに到着した。
「ミッターマイヤー閣下」
「どうした?バイエルライン」
「気を付けて下さいね、ロイエンタール提督に」
「ロイエンタールがどうしたんだ?」
「だから…」
「ミッターマイヤー!」
皆まで言うヒマもなく、珍しくも小走りに駆け寄ってくるロイエンタール。
「ほう。一回り縮んだようだな」
「余計なお世話だ。何か用か、ロイエンタール」
ミッターマイヤーの邪険な物言いも、女の子の唇から発せられるとなれば話は別らしい。ロイエンタールは悪びれる様子もなくにこにこと(!)ミッターマイヤーを見つめている。
話の途中ではじき出されたバイエルラインは、立ち去り難く少し離れた場所でうろうろしていた。
「バイエルライン、何をうっとおしいことをしているの。まだ仕事が残っているわよ」
ビューローがバイエルラインの腕を取る。
その横ではベルゲングリューンが硬直している。
「だって…」
「邪魔者は嫌われるわよ」
「だって、閣下が危なすぎます」
「何時だって危ないでしょ」
「貞操の危機です!」
「そんなものまだ大切にしていたの?」
「私のじゃありませんよ。今の女性の閣下がロイエンタール提督の毒牙にかかると思うと…」
「一度や二度では妊娠しないと思うけど」
「ビューロー提督〜」
そうこうしている間にミッターマイヤーはさっさとロイエンタールに連れ去られてしまった。
「あああ、ミッターマイヤー閣下ぁ〜っ」翌日、定刻にかなり遅れてミッターマイヤーはご出勤だった。
間髪入れずに可愛らしい従卒少女にいれて貰ったミルクコーヒーを啜っているところへバイエルラインが現れた。
「閣下、ご無事でしたか?」
おそるおそるバイエルラインは尋ねる。
「…何がだ、バイエルライン」
尋ねた方も心配と緊張で頬が紅潮しているが、尋ねられたミッターマイヤーも額の生え際まで赤くなっている。
「え、あの…ですから、ゆうべ…は…」
もごもごと何か言い続けるバイエルラインの口に、ミッターマイヤーのコーヒーカップが押し込まれた。はて、このあとミッターマイヤー艦隊はどうなるんでしょうね〜(^^;;;
当然オチなんて考えてませんよ〜。幸せなのはロイエンタールひとり。
「ミッターマイヤー、基礎体温計った方がいいわよ」と言ったのはセリグチ。
「すぐに5人くらい子供が出来るわね」と言ったのは森メメント。
ベイオウルフに託児室設置(笑)
外側ミッターマイヤーで中身ロイエンタールという子供が産まれたら怖いかもしれない。
「宇宙放射能のせいで極端に妊娠率が低くなる」というご意見もありました。初出し 1994年8月7日 コミックマーケット
その他に、この夏は猛暑だったらしいです。
熱帯魚の水が常に30度を超えているとか、クーラー入れて猫3匹と大の字になって昼寝、などと書いてあったりして。
このRosaおまけ本にしても北方領土チラシにしても、一回限りの期間限定企画だった上に再録本などにも編集しようがなかったので、原稿はそのまま忘れ去られていました。
今回webで久しぶりに日の目を見ることが出来て、なんだか嬉しいです(笑)
こんなふうにこの頃はイベントごとに何かばたばたやっていました。元気だったな〜、我ながら。