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高齢者の職業創造

 国民の高齢化はいっそう顕著である。男性の2人に1人は80歳まで生きる時代になった。女性は4人に3人が80歳まで生きる時代になった。
総務庁の調査によると、少なくとも70歳程度まで働きたかったと考える人が5割にのぼることが明らかだ。65歳程度までの就労を含めると約8割の人が働きたいと思っている。
現在主流となっている「60歳定年」でよいとする人は1割程度だ。生活のために止むを得ず就業したい人とか、年金支給開始年齢が65歳になるという現実論は別として、一般的に日本人は、働いていることがすなわち生きがいに通じ、自身を社会矯正化させ、「労働は美徳である」とする社会慣習にフイッティングさせているのである。

 それにしても、しんどい時代になったぜよ。リストラの嵐が大手を振ってあちこちに出没し、終身雇用で若い頃、低賃金で採用されてから何十年、やっと一息つけるかなと思ったら、
ゼネラリストに育てられた中高年には、給料に見合う能力が欠落しているからお引き取り願うと来た。ほんとうに能力がないのだろうか?終身雇用は今、音をたてて崩れ始めている。

 
「ライフ・コミューン」という住宅関連会社がある。そこの佐々木社長は「中高年のセンスを見抜け」と、いいことを言ってくれる。
余剰とされる中高年を積極的に採用している会社だ。
「採用基準は一流大学出だとか、元部長・課長という職歴には一切こだわらず、その人の
人生のキャリアを問題にする。人生の価値観や、やりたいことや趣味や特技などを個人の強みとして活用することで、モチベーションを高めている。」
更に、「リストラを恐れるあまり、本音の希望を言わず、安易に成り行きの人事に身をまかせてしまうことこそ、個人にとっても会社にとっても不幸なことで、何の結果も出せないままになってしまう。
その人の本当に強い分野を見抜くことだ。
「今や日本の中高年の給料は高すぎると言われる。私は
『多重社籍』を提案したい。例えば人事業務に強い人が複数の企業に籍をおいて、各社から比較的安い給料をもらって総合して十分な所得になればいい。個人が自分の核となる能力をきちんと把握して、複数企業から技能を買ってもらうような、もっともっと人財が流動化する社会を望んでいる。就社はやめて就職に徹することだ。

 高齢者に仕事がありません。どないしょ。誰が悪い、政治が悪い、世の中が悪い、と言ったって始まらない。失業率4.6%中、55歳〜64歳の失業者が1割近くになっている。
特に50代以上の失業者の有効求人倍率は0.1倍にも至っていない。1人の仕事に10人が群がる勘定だ。
実はこんな事ばかり分析しようと思っているのではない。
労働の中味や質がとっても問題なのだ。60歳以上の定年退職者にアンケートを取ると、社会との繋がりを維持しながら、毎日というのではないアルバイト程度の仕事を続けたいという希望の人がかなり多い。

 世に
「シルバー人材センター」なるものがある。労働省主体で全国の自治体に、(社)高齢者雇用促進開発協会があり、登録会員推定50万人はいる。事業所・官公庁・家庭などから仕事を受けて、会員に紹介するシステムが主たる業務である。
 仕事の中味は、ふすまの張り替え、刃物砥ぎ、大工左官・塗装、表具・建具の製作、一般経理事務、書類伝票整理、毛筆・ペン字の宛て名書き・賞状・証書代行、野外の軽作業、庭や公園の清掃、草取り、植木・盆栽の世話、駐輪・駐車場の管理、荷造り・配達、病院の食事を作る、介護、家庭の掃除、子守り、等々多岐にわたっている。
でも今の時代何かが足りない気がする。
実はこの仕事以外に取り扱いがないというのが、一番問題なのである。知的労働がないのだ。もう少しいろいろな選択肢やバリエイションがあってもよい気がする。
何でも枠にはめて考えるのが、日本人の欠点だ。趣味にしたって大方の日本人が考える高齢者の趣味は、ゲートボールとパーク・ゴルフやカラオケに碁会所通いや盆踊り・詩吟程度の紋切り型が大勢だろう。
70歳のロッカーやゲーマー、マンガ愛好会があったっていい。その意味において団塊の世代が高齢者に仲間入りするほぼ10年後には、「シルバー人材センター」も更に多様な職業が加わっているだろう。

 「シルバー人材センター」の枠にばかり留まるのでなく、各種の趣味や娯楽を中心とした「生きがい事業の創造」や、地域活性化のための高齢者イベント事業(ホームパーティ事業)・高齢者の経験を若い人に供給する事業・健康促進スポーツ振興企画事業・中高年のための男女交際支援事業等々、数多くの生きがいづくりに関連した高齢者ビジネスも視野に入れるべきである。
個人の価値観を押し上げて、自分のやりたいことをどんどんやれるようにすべきだ。そのためにはNPOとの連携が不可欠である。
NPOの雇用システムや非課税事業が次の高齢者雇用を間違いなく育てていく。
社員を減らして、どんどん増えつつある「派遣労働者」と「パートタイマー」の労働実態と照らして、日本の雇用問題が何処に行き着くのかも関心のあるところである。

 最近ホームページでとってもいいものを見た。高齢者雇用活性化の一助として、全国1,000店舗チェーンを目指す「心の居酒屋」である。
普通の多店舗全国展開だと、何の興味もないが、コンセプトに
人を感動させる何かを感じたものだ。60歳以上の男女を雇用し、しかもメニューの低廉化も計るという立派な事業コンセプトを持っている。
 何年前か、東京出張で浅草付近に投宿したことがあったが、夕食を兼ねて宿の近くの小さな居酒屋の暖簾(のれん)をくぐったことがある。70代の夫婦2人がつましくやっているスタンド5つ6つと、僅かに、こあがりのある古い店であった。
何とその居酒屋で、昔、浅草に棲んでいたあの
「阿部定」の話しと、鎌倉で余生を送る「原節子」の話しが語られたのである。品評性はともかく、高齢者とのコミュニケーションがなければ聞けない話しである。居酒屋は若い娘のいる所よりも、味のあるこんな話しをしてくれる中高年の店に限る。全国アチコチ行ったが、思い出深いのもそんな店ばかりだ。
この
「心の居酒屋」のオーナーは現在58歳で、幾度も飲食店事業に失敗したが、その中で、思わず客を殴ってしまった話しや、資金繰りがつかない時に、ある時突然、客が担保も何も無しで200万円ポ〜ンと貸してくれた話しなど、とっても脚色のない「素の話し」が載っていた。
アルバイトで若い店員も置いているが、
中高年5〜10万人の雇用に結びついたら大したものだ。自分もウソでもいいから?こんな人に感動を与える事業をやりたい。

 介護や家事支援サービスなどの福祉や、公園の緑化事業や道路の清掃や修復などの環境事業ばかりでなく、健康増進産業やレジャー産業や生涯学習産業や情報通信産業にも、積極的に中高年の職域を拡げるべきなのである。もっともっと若い人と一色汰にやるべきである。
アニメやCGやホームページなどのコンテンツ・ビジネスなどにも多いに進出すべきである。高齢者は遠慮しておけ、などという話には全くならない。むしろ、パソコンなどの軽作業は高齢者向きであり、SOHOなんかも主婦や障害者、高齢者にこそ、うってつけの道具立てであるからだ。
札幌に80歳の手習いでCGを始めて、84歳で個展を開いた高齢者もおられるのだ。

 
人生幾つになっても、好奇心が若さの秘訣である。
そのためにも今からそれを主張し、行動に移して行かなければならない。


 


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