村上龍著『13歳のハローワーク』を読んで


 最近ちょっと視点の変わった本を読んだ。作家でありながら、経済や金融や雇用など現
在の日本がかかえる様々な問題を表現している村上龍の新刊「13歳のハローワーク」だ。

 帯のコピーに≪好きで好きでしょうがないことを職業として考えてみませんか?≫とある。

 本の中の一節に、今社会に船出しようとする子供を持つ親たちが集まると、間違いなく、
「おたくのお子さん、どこの会社に入ったの?」というような会話になる。「おたくのお子さん
は、どういう仕事をしたがってるの?」とか「おたくのお子さん、どういう会社を作ることにし
たの?」というような会話はほとんど聞かれない。選択肢があくまでもひとつに限定されて
いるのだ。

 個人的なことだが、37年間サラリーマンを経験したが、ほんとうにやりたいことは別にあ
ったのでないかと未だに思い煩うときがある。長い時間の中では仕事に充実した瞬間も無
くはなかったが、それも一瞬だったような気がする。ビジネス人生を通して、生きる歓びや
満足感を継続的に実感した記憶は正直そんなには無かった。実に忍耐する時間が圧倒的
に長いのだ。何よりも昔は誰もが生活が貧しくて、職業を選択する余裕など無かったように
思う。そういう意味では現代は恵まれた時代とも言える。人間、好きな仕事を終生続けられ
る事ほど幸せなことはない。

 21世紀、終身雇用の崩壊や雇用形態の多様化と共に、「いい学校を出て、いい会社に
入れば安心」という時代ではないと思いつつも、大方の意識はまだまだ旧来のままである。

そんな時に、実にタイムリーな企画本が出たような気がする。

 13歳といえば、中学一年生。子供扱いから離れ、大人料金の適用される年齢である。自
我に目覚め、茫漠と大人になった自分をイメージする年頃である。親の職業がとっても気に
なる世代でもある。親の家業を継ごうと思ったり、自分流で行こうと思ったり、もっと努力して
金持ちになりたいと思うのもこの年頃である。でも全ては漠然としており、来るべき世間の荒
波は親の庇護という防波堤の内側で、一部を除いては、ぬくぬくとしていつの間にか成人を
迎えてしまう。

そんな時に悩める親子に向かって「選択肢はひとつではないですよ。」と問いかけている
本のような気がする。親子で子供達の将来を話し合う格好の羅針盤のような書である。なり
たい人になる、やりたい職業を夢見る助走期間の緒としては13歳は決して早い歳ではない
。子供たちの感性や好奇心を大切にしたい。

 筆者が「まかせてドットNet」をネット事業化し、多様な付加価値人財を社会に輩出したい点
では、かなりオーバーラップする部分があるが、最初のきっかけは敢えて趣味の延長上にあ
っても良いのではないだろうか。6歳の子も13歳の子も最初は、好き嫌いで職業選択するだ
ろうから。

村上龍氏は、趣味(楽して生きる)の延長にあるアマチュア的職人技や芸術家の世界を極端
に嫌うが、結果的に回り道するかも知れないが、社会に許容されず淘汰される部分では、プ
ロもアマも同次元だと思う。

 何れにしても、今や労働環境の激変と価値観の混迷のはざまで、予め敷かれたレールは
何処にも見当たらず、一人ひとりの努力と自立が求められている。

 「日本は変わらない、変わるのはあなたです。」 肝に銘じます。

 

 

能力とは? IQよりEQよりPQ。MARK222.GIF (1275 バイト)


人間の能力とはなんぞや?永遠の課題かと想っていたら、眼から鱗。「PQ」なる新語に遭
遇した。「頭の良さ」を量る尺度なら「IQ」が有名だが、「頭の柔らかさ」を量る尺度に「PQ」な
るものがあるというのだ。「潜在的能力指数」がそれにあたるという。

人生80年。人間、個人差はあるが、概ね生きているうちに脳細胞の約25%だけが使われ
残りの75%は使われないまま一生を終えると云われている。また、大脳の意識層は15%で
あり、85%は無意識層、いわゆる潜在意識層に分類されるという。よく氷山の突き出た部分
に例えられる。

ところで「IQ」とはInteligence Quotientの略で「知能指数」といい、「EQ」はEmotional Quotient
の略で「心の知性」とわかりづらい。「PQ」、Prefrontal Quotientは「潜在的能力指数」の他に
「大脳の前頭連合野知性」とも云われている。

「前頭連合野」とは何ぞや。脳の大部分を占める大脳皮質の前の部分、丁度おでこのあたり
だろうか。そこにある「考える脳」を総称して「前頭連合野」と云うのだそうだ。

ひとつわかりやすい例えを出そう。今晩友人と飲みに行こうとする。どこに行こうか。そうす
ると大脳の奥の引き出しファイルから過去に行ったことのある居酒屋の場所や値段や味など
の情報が「前頭連合野」に集められる。いろいろ考えて軍資金もないし、明日は早朝から出張
ということで会社近くの安いが味のいい居酒屋に決める。ここには友人が食べたことのないメ
ニューもある。この情報を集める作業をニューロン・ネットワークといい、いろいろ考えて結論を
出すところがワーキング・メモリー「前頭連合野」という。雑多な情報の中から必要な情報だけ
を取り出し、立体的に組み合わせる場所と言ったらいいだろうか。

そういわれてみれば、なんとなく大脳もコンピュータのCPU(中央演算装置)に似ています。
「前頭連合野」はこの演算に言語、絵画、空間、論理数学、音楽、身体運動、社会、感情の8
つの知性が加わったものと言われています。

「前頭連合野」は3歳と8歳までに劇的に成長と変化をするようです。「PQ値」の高い人は
前頭連合野をよく育て、よく使っている人であります。ほんとうの意味で知恵のある人、賢い人
と言えるでしょう。脳の引き出しから臨機に多様な情報を出せる人、柔軟な発想のできる人、
も同様です。「IQ」と「EQ」に「潜在的能力」が加わって真に発揮される応用能力が「PQ」なの
です。単なる記憶力でもなければ、通りいっぺんの知識でもありません。

「PQ」は、競争社会にあって人を押しのけるだけの差別化の理論であったり、ただの儲け
主義のツールであってはならない。「社会と個人の感情とのバランスをとりながら、未来にむ
けて前向き、幸福に生きて行くための知性」である。眠れる潜在知能、前頭連合野知性を豊
かに育むことが「人間教育」の基本となるべきだ。とあります。

どんな人にも自分なりの特長と才能が隠されている。それを如何に引き出し、如何に利
用するか。今や人財の活用こそがすべての時代です。生きている間に脳細胞の半分は使い
たいですね。人生、宝の持ち腐れにならずに、なりたい自分になるためには、この知性を多い
に使いましょう。

亡くなった著名な映画監督、黒沢明の言葉が印象的です。「ほんとうに好きなこと、夢中
になれることを探して仕事にしなさい。そうすれば必ず、自然と吸収して自分の生業(なりわ
い)になる。」



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