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この国の行方

 先日、NHKの「地球大進化」シリーズ全6集を見た。地球誕生から46億年。荒ぶる星の歴史は千変万化だった。爆発と衝突合体を繰り返していた原始地球。巨大隕石の衝突、海洋蒸発を経て、40億年前に最初の微生物が誕生した。22億年前と6億年前に二度の全球凍結を経験しながらも、5億年前に最初の脊椎動物が誕生し、700万年前になって、やっと今の人類の祖先が地上に姿を現わした。

 アフリカで生まれた人類は20種類以上もの人種の系譜を経て、朽ちていく者、変異する者に別れた。ジャワ原人、北京原人、ハイデルベルグ人、ネアンデルタール人、そしてクロマニョン人(ホモ・サピエンス)へと繋がる。特に印象的だったのは主にヨーロッパに棲息した数百万のネアンデルタール人は、喉の言語機能の未熟さ故に、外見の変わらないホモ・サピエンスに取って変わられ絶滅して行ったという。

 全部見終わっての感想は、これだけの天変地異を繰り返しながら、人類という霊長類が支配する地球が今日あるのは、正直、必然ではなく、ある種の偶然だろうと思ってしまう。この後も我々人類がずっと恒久不変に地球上に存在できるという保障は多分何処にもないだろう。
46億年の地球の歴史の中で、何度も生物全体が絶滅の危機に瀕したが、地球環境の微妙な変化で、全く異形の生命体に進化していたとも考えられるからだ。

 地球の10分の1以下の質量しか持たなかった「火星」は衝突合体も少なく、海洋蒸発したまま、太陽からの距離も影響して、微生物さえ死滅して、今日「死せる惑星」のままだ。

 ナレーションや説明にもなかったが、多分マグマやマントルなど、地球内部の活動の冷え切る数十億年後には、地球も「死せる惑星」の一つになるのだろうか。メタンや窒素や酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、温暖化を経て、再び氷河期を迎えるという説さえある。

 さて、前置きが相当長くなったが、世界の成り立ちの不思議さに、畏敬の念を覚えるばかりでなく、文明の発展とあらゆる経済活動が、地球上の生態系や自然と共生しながら、永続してくれることを願うのみだ。

 そんな地球46億年の荒ぶる歴史に比べたら、些細な歴史の一瞬間の出来事でしかないのだが、話しを一気に現代に引き戻してしまう。
戦後60年。世の中のあらゆる営みすべてが、大きな転換点を迎えようとしている。(チョッと、前置きがデカ過ぎた!?)
あらゆるものが疲弊し、既得権益だけでは立ち行かなくなり、すべての事象をガラガラポンしなければならない時代に入ったが、おそらくこの5年で、経済の法則や社会の様々な規範や制度が変化していくだろう。具体的には、和と談合の日本的体質の改革や、公務員の数や仕事を含めた官と民のあり方、諸々の税金の使われ方とその見直し、等々である。

 小泉構造改革も反対票が相変わらず多いが、これに代わる対案がさっぱり浮上してこないのも事実だ。批判だけなら猿でも出来る。ちょっと古くなるが、久しぶりに小沢一郎のバブル期の終りに書かれた「日本改造計画」を、再び読み返して見た。

彼の言葉の中にも、地方分権と国際化、生かしあう中央と地方、アメリカに頼らない自立した危機管理体制と世界に開かれた「普通の国」のあり方、国連中心主義、個人の自立と5つの自由、規制の開放と自己責任化、高齢者活用社会など、小泉構造改革とダブる部分が沢山ある。

終章では「改革には痛みが伴う、痛みのない改革は存在しない。」と、小泉純ちゃんが後に多用する同じフレーズで結ばれていた。でも、小沢氏の書には、赤字国債や地方債の借金漬けで、ニッチもサッチも行かない話も、郵政や特殊法人の民営化などの具体的構想も掲載されていない。

 書かれてから12年、気になったのは「国民の所得、資産の格差が小さい」という一億総中流の表現があったが、12年経って、今や「格差社会」そのもの。「凶悪犯罪が非常に少なく、安全で安定した社会」という表現もあったが、ドラマにもない凶悪犯罪が増え、犯罪検挙率も当時は80%近かったが、今や20数%のまったく裏腹の不安な社会に変わってしまった。警察内部の不祥事も全部白日にさらされたわけでもない。小泉政権になってから5年、郵政民営化と特殊法人のなぎ倒しで不安だけが増幅したかもね。借金王小渕さんの頃の脳天気が懐かしい気さえする。

「官僚の能力を最大限に利用しよう」というのもあったが、社会保険庁や国土交通省の無駄遣い。赤字再建団体凋落目前の大阪市の幹部の税金使い放題は、反省の色すらないのだ。

 生活は便利になったが、自殺者が増え、ニートが増え、生活保護世帯が何倍にもなり、巧妙で凶悪な犯罪が増え続けている。この現実は、決して暮らし安くなったとは言えないだろう。まして勝ち組、負け組と言われる「貧困格差社会」は固定化さえしつつある。たった12年でこの変わりようは、凄ざまじい。

 ほんの数年前まで、世界一の賃金大国で、海外への産業の空洞化や人材の流失を憂いていたのに、今や年収100万円のフリーターと月額10〜15万円程度の安いパート・アルバイトの賃金で労働人口の30%近くも占められ、利益第一主義だけの使い捨て雇用が蔓延している。その反面、3倍にもなった生活保護世帯や、勝ち組と評する一握りの高額所得者たちも増殖している。
世界第2位といわれるGDPも間違いなく減り始めているのだ。先行き暗澹(あんたん)たるものがある。

 次代を担う30代の勝ち組起業家にひとこと言いたい。時代の寵児か、たまたま買ったIT企業の株が大当たり。ベンチャー・キャピタルなど始めて、六本木だの赤坂の高級マンションに住み、高級乗用車を乗り回し、利益何億、時価総額何十億だのと浮かれているうちゃいいが、栄枯盛衰、浮き沈みは世の習い。右肩上がりばかりじゃござんせんよ、せいぜい気をつけなすって。

 それにしても格差社会が生み出す、熾烈な競争原理だけでは、次の社会のグランド・デザインが描けない。「この国はすべてのものがあるのに、夢だけがない」現実をどう変えていくのか。

 機会の平等、結果の不平等。中卒、高卒者の離職率の高さ。フリーターと正社員、不安定な自由、安定した不自由。パート労働者や流動雇用者の社会保障のあり方。団塊世代の大量退職と社会的フォロー。努力するものが報われる社会、努力しても報われない現実。規制緩和と新しい社会規制のあり方。など問題が山積みだ。

「世界にひとつだけの花」。フリーターを経験し、彼らの味方と思われるホリエモンも、使い捨て雇用に反目、自分らしく生きろ!とエール。僅かでも将来、可能性とチャンスに満ちた国へ変貌することを期待したい。

 戦後60年。日本は生気を失った火星に成り下るのか、再び雀躍とした原始地球に戻れるのか、恐らくこの5年で結論が出る。

 

 


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