私たちは、この骨子案で提案されている手数料の額は、高額であり過ぎ、情報公開制度を実効ある制度とするための妨げになると思います。
手数料を定める場合には、各地方自治体の情報公開条例で採用されている手数料と大きく異なることのない程度の額とし、ここで示されている最低額以下のできる限り低額の手数料とするとともに、減額又は免除の要件に公益を目的とする請求を含めるべきであると考えます。
下記にこの意見についての説明を加え、骨子案に対する意見として提出します。
記
1 骨子案に示されている手数料の額は、標記法律の制定過程では想定することもできなかった高額なものを含んでいる。
この法律の制定に至るまでには、手数料が請求時にも課せられたり、何段階にも分けて徴収されることに対して、強い反対の声があった。
にもかかわらず成立に至った背景には、審議過程において、実費の範囲内であるとともに利用を妨げない額とされ、300円程度の金額が考慮の対象にあげられていたことなどから、各地の自治体の条例により定められている手数料とそれほど大きな違いがある手数料になることはないだろうとの判断ができるような状況があったからで、法律の制定後にこのような高額の手数料が提案されることは、審議時にはまったく想定できなかった。
このように高額の手数料が、案とはいえ提示されること自体において、この提案内容が、法律の審議過程を無視し、国民の信頼を裏切るものであると考える。
2 標記法律の第16条第2項では、手数料について、「できる限り利用しやすい額とするように配慮しなければならない」と定めている。
今回の提案で示されている額はここでいう「利用しやすい額」とはほど遠く、このような配慮がなされているということも感じられない提案となっている。
これらのことから、この提案内容では、法律の求める手数料の規定の要件を満たしていないものと考える。3 手数料の算定の仕方についてみると、骨子案にはどの程度の人件費までを含めて計算するかという漠然とした根拠が示されているだけで、情報公開によって社会や国民全体が得ることになる利益をほとんど考慮に入れない算定方法で行われていることに不満と驚きを感じる。
このような算定方法をとること自体、提案者が、情報公開の意味や役割についての認識を持たず、この法律の制定の目的や、この制度の実行によって守られる法益について十分に了解していないのではないかとの疑問を感じさせる。
法律制定の意味についての認識が不充分と思える算定方法によって算出された手数料の案に対して、どの案を選択するかという形で意見を述べることは適切ではないと考える。
高額な金額を提示して比較的に他の金額を低く見せたり、算定方法が問題になるのにどの案がいいかという意見を求めたりする意見の求め方も、何らかの形で意見の操作を行おうという意図があるのではないかとの不信感を抱かせるものである。
4 公文書を公開することによる利益について考えた場合には、開示請求に基づいて行政文書が公開されることによって国民の健康や安全が守られたり、公開されないとすれば失われていた多くの人命を救うことになる場合も十分に予想される。
そのような場合に、国民全体にもたらされる利益は財産的な価値にはおきかえることができない貴重なものであって、算定するとしても、ここで述べられている人件費等とは比べ物にならない大きな価値になると考える。
また、各地で続けられているオンブズマン活動が、行政の違法な支出や不当な出費を減らし、財政の健全化に大きな役割を果たしてきたことは、今さらふれるまでもない明白な事実である。
さらに、行政文書の公開を求めることは、行政が説明責任を果たすことを可能にさせるとともに、透明性ある行政の推進に貢献し、適切な行政活動が行われていることを確認する手段となるなど、健全な民主主義の実現のためにはかりしれない重要な役割を果たすのであって、このことは、この法律の存在する理由として、今や誰もが認識していることである。
このような利点が、開示によってもたらされる利益としてほとんど考慮されていないようにみえることは、国民として大変残念なことである。
5 高額な手数料を課すことによって、公文書公開を請求する権利が濫用されることを防止するために役立つという考え方は、高額な出費が日常生活に支障を及ぼさない、財政的に余裕のある個人や団体に情報を多く与え、それと比較して、財政的に余裕の少ない個人や団体に対して情報を得にくくするという結果につながる。
いいかえれば、財政的に豊かな個人や団体の濫用を防止することはできないばかりか、そうでないものに対して請求をしにくくする効果しかない。
法律では、憲法で保障されている「国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利」であるとしながら、その権利を行使する際に財産の過多によって制約を与えるのは、財産による差別であるに等しく、きわめて不当なことである。6 請求にあたっては、はじめに該当する行政文書が何件の文書に相当するかの判断をする必要があるが、この場合の1件の数え方について、提案では次のように述べている。
「開示請求者が一の行政文書ファイルにまとめられた複数の行政文書その他相互に密接な関連を有する複数の行政文書の開示請求を一の開示請求書によって行うときは、複数の行政文書を1件の行政文書とみなす。この「行政文書ファイル」とは、能率的な事務又は事業の処理及び行政文書の適切な保存の目的を達成するためにまとめられた、相互に密接な関連を有する行政文書(保存期間が1年以上のものであって、その保存期間を同じくすることが適当であるものに限る。)の集合物をいう。」
ここにおいて、手数料を算定する際の基礎となっている「1件の行政文書」とは、ファイルのまとめ方や密接な関連性についての判断により異なるものであるうえ、「保存期間」によっても異なってくるきわめて不明確な単位であることがわかる。
保存期間が異なっていることが何件もの文書と判断されるべき理由にはならないことも問題であるが、「1件の行政文書」がこのようにあいまいな基準によるものである以上、それを基に算定する手数料に、はじめから公平を期待できない場合が多く出てくることは当然に予測できる。
この結果生じてくる不公平の度合いをできる限り小さくするためには、手数料をできるだけ低額に定めておくことが必要である。同様に、請求によって公開される文書でも、担当者によっては、広く一般に公開して情報を提供するべき文書であると判断されて無料で提供される場合や減免の対象とされる場合もありうる。
さらに、公開後に無料で提供されるようになる場合も出てくると考えられるので、このように、担当者の判断やその時々の事情及び時間的な経過によって発生する不公平をできるだけ小さくするためにも、手数料はできる限り低額に定めておくべきである。7 開示請求に基づいて行政文書が公開されることが、行政の行う広報活動を肩代わりすることにつながる場合があり、この制度が広報活動の一環として果たす役割も軽視できない。
このような場合には、この制度を利用することが、行政により広報活動に使われる経費の削減に貢献することが期待できる。
また、行政文書の公開により得られた情報が、社会的に貢献する活動をしているそれぞれの団体や個人に提供されることによって、それらの団体や個人の社会的な活動を助け、より多くの活動の成果が社会に貢献されることになる。
それらの活動が、具体的に、国の行う行政活動の不備な点や不充分な部分を補完したり支援したりする場合があり、それによってもたらされる財産的な価値は相当のもであると考えられる。
8 公文書の請求には、国民の利益に直接、間接的に結びつくものが多いので、公益に資すると考えられる請求については、請求者からの請求があれば手数料を免除したり、ある程度の金額までは補助するなどの何らかの措置を講ずる必要があると考える。
提案の「3 手数料の減額又は免除(法第16条第3項関係)」の(4)には、「(1)の減額又は免除のほか、行政機関の長は、開示決定に係る行政文書を一定の方法により一般に周知させることが適当であると認めるときは、その開示の実施の方法に係る開示実施手数料を減額し、又は免除することができる。」との部分があるが、この規定をより広げて、公益目的と考えられるものは、「一般に周知させることが適当である」と判断することとするなどの方法によって、公共の利益につながると考えられる請求が、すべて個々の団体や個人の負担に帰せられることのないように配慮するべきである。
1999年12月17日
総務庁行政管理局情報公開法施行準備室 御中
アスベストについて考える会
カミングセンチュリーSHIMADA
静岡県三島市議会議員
志太榛原オンブズパーソンの会
焼津市代表/島田市代表/榛原町代表
(氏名・連絡先略)