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8/9   静岡県公文書開示条例(現行条例)の制定過程で開かれていた、懇話会の議事録です。(第2回)
     



第2回懇話会の討議結果

I 基本原則

1 総合的な制度

    (委員の意見・質問)  埼玉、長野、茨城の3県が、広報活動等の情報提供施策などを含めない狭い意味での情報公開制度にした理由は何か。

    (事務局の答弁)  具体的には聞いていないが、比較的早い時期に実施した県なので、こう考えたのではないかと推測している。

    (委員)  公文書の開示と情報提供を総合的に実施するとしているが、情報提供は県からの情報のコントロールになるおそれもあるので開示制度を重点に置くべきだ。

    (事務局)  情報公開が制度化され、公文書そのものが公開されたとしても、その情報を分析し理解し得る者とそうでない者とで情報格差が生ずるおそれがある。この格差を縮めるためにも内容をそしゃくした情報の提供が必要である。このため、職員給与実態の公表などの公表義務制度の拡充など、県民に重要な情報は積極的に情報提供することも必要である。


2 制度の目的

    (委員)  開示請求権の論拠を「知る権利の具体化」ではなく「行政目的の推進」に置いているのは、行政サイドからの行政に奉仕するための恩恵的なものという感じがする。  また、開示請求権を権利というが、「知る権利」とか「国民や県民の知る権利」又は「国民主権」とかいう中での位置づけがあいまいでなにか唐突に出てくる感じがする。

    (委員)  開示請求権のとらえ方が、憲法上の「知る権利」からくるものか、極端に言えば県からの恩恵的なものかによって、非開示基準の妥当性に関係してくると思う。

    (委員)  開示請求権の論拠として、「知る権利」が明確になっていないことを理由に「行政目的の実現」とするのは、県民が主体でなく、県が主体のような気がする。  「知る権利」については、法的意味合いでは確定しでいないというのが事実だが、理念的状況としては一つの新しい権利とじて認められつつある方向にある。  情報公開制度をつくる中で、その根底には、不確定ではあるが、そういうものが考え方としてあって、それを踏まえて、具体的にどう実施していくかは、条例の中で開示請求権として認めましょう、ということだと思う。

    (委員)  公務員の守秘義務で守るべきものが「実質的に保護の必要のある秘密」であることを考えた場合、「国民の知る権利」について守るぺきものは(「主権者である国民が行政のことがらについて知り得る状況にあること」ではないかと思う。

    (事務局)  条例により制度化する趣旨から、県条例の中で明らかに定めることができるような内容ということで、開示請求権といった程度にとどまっている。  実質的には、請求する権利というものを認めているということで趣旨に沿っているのではないか、というのが内部的な議論であった。


3 基本原則

    (委員)  素案の基本原則は立派なものだと思うので、実施段階でもこの理念を曲げないようにしてほしい。というのは、実施県の話を聞くと、議論している時点では理想的なことがいわれるが、実施段階になると違った方向がみられるというので。 (石垣)

    (委員)  能動的ブライバシーについて、大阪、埼玉で自己惰報の開示をしているが、どのような状況か。(曽我)

    (事務局)  一番請求が出ているのは、教員採用試験結果である。県職員のも多い。  今のところ問題は出ていないと聞いているが、単に筆記試験の結果だけならよいが、内申書や面接の緒果に及ぷと問題があると思う。

    (委員)  自己情報の開示は、個人個人については大事な分野なので、なるぺく公開してもらいたい。  また、個人惰報保護について、国でも検討中のようであるがどんな状況か。  (曽我)

    (事務局)  総務庁の結論が出るのはそんなに先ではないと思う。県は国の方針が決まるのをまって考えていきたいが、情報公開制度の中で自己情報を公開することは問題があり、別の制度でトータルに考えていくべきだと思う。  現実には、県よりも市町村のほうが多くの個人情報をもっていることから、個人情報保護制度の中心はそちらになるのかなと考えている。

    (委員)  三つの基本原則はこれでよいが、「公正な救済制度」も原則の一つに入れることが必要だと思う。(三橋)


U 公文書開示制度

1 実施機関

    (委員)  情報公開制度の発足とともに、議会の委員会の傍聴を認めてほしい。(石垣)

    (事務局)  委員会の公開については、既に議会の中に定めがあり議会(委員会)が決め ることで行政側から何か言うことは、制度上いかがかと思う。

    (委員)  公安委員会を実施機関にするのは難しい点もあろうかと思うが、関連した事項まで[社会的危害防止情報」として非開示事項としているが、そういうものはなるべく公開したほうがよい。(石垣)

    (事務局)  実施機関としての公安委員会の問題と、非開示事項である「社会的危害防止情報」は、一緒ではない。公安委員会に関係するから「社会的危害防止情報」は非開示ということではないので、承知願いたい。


2 対象公文書

(事案処理過程からみた対象公文書)

    (委員)  例えば、委託調査報告班などは公文書になるというが、決裁はないのではないかと思う。これは「準ずる手続」ということになるのか。(三橋)

    (事務局)  これについては、契約時の決裁権者に対して報告がされるので当然対象となる。

    (委員)  教育委員会や行政委員会の議事録は、公開の対象となるか。(細沼)

    (事務局)  内部で決裁をとっているので、当然対象となる。

    (委員)                             メモ的なもの(メモ、資料、下書き等)にも必要なものがあり、これがないとわからない文書もある。神奈川県では事案処理前から対象としており、文書管理規程に起案文書以外についての規定があり、これも公開の対象としている。本県もこのようにしてほしい。(石垣)

    (事務局)  決裁文書だけでなくということであるが、例えば補助金の例でいえば、担当者のレベルで考えたとおりに最終的にならない場合もあり、余分な期待を生ぜしめ、混乱を招くもとになるので、そのようなものまで公開すべきではないと考えている。

    (委員)  公開する対象は決裁済みでないと難しいと思うが、予算編成の場合の原案は、重要な内部資料であるが、途中の流れを公開してほしいといった場合どうなるか  市町村の場合は、執行当局の町づくりの姿勢によって異なり、それぞれの市町村の対応はまちまちである。途中の段階で公開するというところもあるかもしれない。(榛原)

    (事務局)  非常に難しい問題であるが、県の場合には予算編成を行うのは、知事のみである。従って、中途の予算要求の段階では試案であり、公文書作成の一過程であると考えられている。

    (委員)  県の公文書とは、普通の常識で考えれば知事や部長の印があるもので、当然決裁を得ておるものと思うが、途中のものは公文書なのか。(高野)

    (事務局)  メモ用紙まで情報かといえぱそうであるわけだが、県が所有し管理している情報かというと、問題がある。県として審査して、正しい情報として認知した段階で県の所有している情報となる。この整理された情報が決裁なり供覧が済んだ情報ということになろう。                     従って、決裁等の済んだものを県の公文書と考えている。

    (委員)  意思決定過程の文書も見たい気がするが、その過程における文書を開示の対象としていいのかどうかは、かなり議論があると思うので、ここで抽象的に検討するよりも非開示事項の所で具体的に議論した方が議論がかみあうではないか。(牧田)

    (委員)  情報公開制度は、文書管理システムや検索システムと密接な関連があり、それらをきちっと作らないと良い条例も空文化してしまうと思うが、文書管理について県は条例か何か作っているか。またその中では決裁、供覧以外の文書も保存の対象となつているか。(牧田))

    (事務局)  文書保存の根拠は処務規程であり、また事務決裁規程を設け、最終決定権者を定めて、その者の決裁したものを公文書と理解している。  文書は、関連文書も一連のものとして綴じて保存する。 


(媒体からみた対象公文書)

    (委員)  磁気テーブを対象公文書としている埼玉県では実際には利用がないとか、技術的に難しいとかいうのでは、対象外とする根拠が薄い。電算システムの管理やブライバシー保護を含めて検討し、公開すべきだと思う。(石垣)

    (事務局)  技術的に公開できないと思う。また、定例的な電算事務をストッブすることにもなるので、もう少し考えた方が良いというのが電算の担当者を含めた検討結果である。

    (委員)  神奈川県の警察のように、公開したくない情報は磁気テーブに入れ、、それは対象外だから公開できないというようなことになると思うが、現実に磁気テーブに入っている情報はどのくらいあるか。 (細沼)

    (事務局)  件数は把握していないが、かなりの量が入っていると思われる。しかし磁気テ一ブだけで仕事をしているわけではなく、入力、出力の際100%紙に打ち出されているので、現実の問題としては、対象外としても困らないと思う。

    (委員)  現実に100%紙に出しているのはわかるが、保存について・民間企業では磁気テープに移っており、すべてそうなっている企業もあると聞いている。宮庁でもそういう方向に移っていくと思うので、原則公開の方向だけは守ってほしい。 (石垣)

    (委員)  磁気保存はこれからどんどん進むと思う。NHKでも63年度からニュースはべーパーレスとなる。64年10月実施の本県に関しては、原則公開をうたっている以上、技術面を克服したほうが良い。(曽我)

    (委員)  技術的に区別がつかないという理由で対象外とすると、公開してもいいようなソフトを構築しなけれぱ永久に公開できないという問題があとあと生ずるおそれがあるので、原則公開とし、公開できないものは経過措置やただし書きで対応すぺきである。(大石)


(制度実施時期からみた対象公文書)

    (委員)  永年保存や10年保存にするということは、その文書は非常に重要な書類であるということで、それが簡単に引き出せないということでは保存の価値がないと思う。そういうものを対象にし、それによって文書管理を再検討するということも考えて、なるべく古い文書も対象にしていくという姿勢がほしい。 (大石)

    (事務局)  最近、公文書公開を念頭にファイリングシステムを導入したので、それ以降の文書については、検索等に困難を伴う面は少ないと思われる。  制度実施以降の文書を対象としたが、との時点からファイル管理表で検索できるかということをもう少し検討し、結果によっては、64年度実施のもう少し前から対象公文書にできるかと思う。

    (委員)  罪刑法定主義が原則の刑事法では、遡及することはできないが、この制度は県民にとって有益な権利であるから遡っても構わないと思う。従って、任意開示で対応ということでなく、対象に含めたほうが良い。(細沼)

    (委員)  年間30万件の文書が発生するということだが、検索のためのシステムが必要とならないか。    (会長)

    (事務局)  61年度からは新文書管理システムを導入しているが、情報公開の制度化により過去の文書すべてを検索するシステムを新たに整備する場合は、相当の作業量となり時間とコストがかかるようになると思う


3 請求権者

    (委員)  次の理由により、請求権者は「何人も」とすべきと考える。 @基本的人権として「知る権利」があると考える。 A公開に関する類似の制度としての閲覧、縦覧制度が「何人も」としている。 B立法政策上も、「開かれた県政」は県民に限らず「何人」にもそうあるべきと考える。(石垣)

    (委員)  最低限、請求の必要の理由が認められる者については、公開に応ずるぺきだと思う。なるべく幅を広く取って、これは困るということをきちっとしておけぱよい。(大石)

    (委員)  1日の大半を県内で週ごす通勤通学者は、少なくとも入れるべきだと思う。任意開示で対応するというが、それは保障されるものではないから結局は開示されないと思う。(榛葉、細沼)

    (委員)  公平という観点からいえぱ、利害関係人も認めてもいいのではないか。ただ、利害関係という不確定な概念の解釈、通用が問題になると思うが。(三橋)

    (委員)  制度実施にあたってはたいしたコストはかからないかもしれないが、県民の費用で行なうというコストとの関係の問題があると思う。 県民以外の請求権者の場合、コストとの問題はどうなるのか。(牧田)

    (事務局)  現在想定している公開方法では、公文書を探したり運んだりといった程度の内容であり、検索に難度を伴わない段階になれぱ、直接的な費用は大してかからないと思う。

    (委員)  情報公開を求める県民の気持ちと役所の内部事情をいかに調和させるかということが本質的な間題ではないかと思う。できなけれぱできないで仕方がないが、だめだめという発想で進めないで、原則公開の姿勢を貫いてほしい。  (美尾)