幾度手を貸そうと思った事か、今の私になら目前のヒュドラぐらい赤子の手を捻る
ようなものなのだ。
だが、それでは彼の気はすまないだろう、これは倒す事が最終的な目的ではない
いついかなる時も、たとえそれがどんなに強大で己がかなわぬ相手であっても、
一歩も退かぬ信念、あきらめない強さ、それが彼の欲している戦龍としての誇り。

私にできる事はただ見守るしかない。
もちろん、彼の命に関わるようなことがあれば別だが、、、。
だが、私は己が命より誇りを重んじる男達がいることを知っている、、。
また、いついかなる屈辱にも耐え、生に活路を見、未来に繋げた男達の生き様も
知っている、、、。

幸いこの洞窟の中は気温が低く、雪龍の彼の力が遺憾なく発揮できるはずだ、
彼を信じよう、幼く頼りげなく見えはするが、紛れもなく戦士としての資質を持つ
彼を、、、。

どれくらいの時が流れただろう、、、。
怪我だらけにはなったが見事にヒュドラをしとめた彼の慢心の笑顔。
彼の証となるべくその命を落としたヒュドラには可哀想なことをしたが、それが
この世界の成り立ちならば異世界の者の私が口をはさむ事ではない。
彼の笑顔を私は忘れられないだろう、、、。
そして、このことを伝えたい。
私の妖魔の王に、、、。
お前と語りお前を感じたい、、、。

さぁ、帰ろう、お前のもとへ、、、。
私の帰るべき、お前のいる世界へ、、、。


●正解エンディング・おめでとうございます・●

      炎の美酒・NO・2  シバ 編 ・ 『証』
                 葉月 しのぶ 作   2000.11.24UP