どれ、見せてみい。
 「これは、、、クトゥルウの傷じゃな? 
  あの西の辺境の洞窟の奴か?」
 「金翅、おまえあそこまで行ったのか?」
 「、、、やはり道理でお前の気が残っておったわけじゃな。」
 「そうか、、あそこまで行ったのか、、」
 ふう、、と明らかに落胆の色を見せる綺羅。
 「なんじゃ?」
 「いや、じゃあもう隠しておいても意味が無いな、、、と思ってな
  お前を驚かそうと思ったんだが、、、。」
 そういいながら煌く透明の石を取り出す。
 それはあの洞窟の岩肌の星々の瞬きにも似た鉱石、、、
 だが、あそこの岩肌で光っていたものとは違い格段に大きい
 透きとおった水晶の中に淡い虹の光を閉じ込めたような、、、。
 「綺麗じゃ、、。」
 思わずそう口ずさんでしまう、
 「よかった、それでも喜んでもらえそうだな。」
 苦笑する綺羅。
 「なんのことじゃ?これをわしに?」
 きょとんとした顔で綺羅がわしに顔を見る。
 「え、、?」
 そのまま言葉を詰まらせる。
 「だから、なんじゃ?」
 「いや、金翅おまえ、これを待ってたんじゃ、、?」
 「何のことかさっぱり解からぬが、、?」
 「、、、それでこのごろ機嫌が悪かったんじゃあないのか?」
 「わしの機嫌はそなたが、、、。」
 まさか浮気を心配していたとは言えぬな、、
 「そなたの態度がなにやらよそよそしかったからじゃ、、。」
 「え、、、?」
 「なにやらわしを避けておったろう?
  龍のこま使いはどこぞの龍姫から使いが来ていたとやら申すし、、。」
 「いや、俺はただ、、、これをお前に送るのが
  魔神界の復旧やらなにやらですっかり遅れたから、、
  お前に悪くて、、、。」
 「わしに?、何故?」
 「、、、、、、。」
 しばしの沈黙、、、。
 「金翅、、、ひょっとして、迦楼羅には婚礼のおり
  相手に幸福と繁栄、誓いの変わりに守護魔石を送る
  習慣は無いのか?」
 「、、、無い。」
 きっぱりと否定するわしにどっと力が抜けたかのような綺羅。
 「、、、そうか、無いのか、、、。」
 「無いが、それは頂こう、とても綺麗じゃ、、、。」
 「金翅。」

 そうか、それで、、、。
 なにやらここしばらくのうやむやが一度に晴れた、
 いらぬ詮索をした己が馬鹿のようじゃ。
 綺羅はわしのために守護魔石のありかを年長の龍王に尋ね歩き
 クトゥルウのような巨魔獣の巣から見出してまいったのか、、、。

 コトンと綺羅の胸に顔をうずめる。
 「うれしい、、、。」
 すなおにそう思う
 「金翅、、。」
 「じゃが、わしのためにそなたが手傷を負うは、つらい、、、
 無茶はするな、、、綺羅。」
 
 お前はわしがこの世でただ一人見初めた龍王
 わしのただ一人の背の君、、。
 他の龍王とは違う、比翼の絆の迦楼羅と添い遂げてくれよう、、。
 お前を選んだわしを信じよう。
 ずっと、、、。
 


●正解エンディング・おめでとうございます●

      炎の美酒・NO・4  金翅姫 編 ・ 『比翼の絆』
                 葉月 しのぶ 作   2001.4.20UP