「朧、ここに来なさい。」

2部屋しかない同心長屋、奥部屋の床の間前で胡坐をかいたかつて江戸城最強の忍者といわれた先代の玄武、少しぼけ始めた父殿に朧は呼ばれた。
朧は佃島の沖で夕食の魚と貝を採ってきて長屋の裏で水浴びを終えたところだった。

「いいかい大奥に上がることがどんな危ないことなのか分かっているのかい」ごつくて禿げ頭の父殿が言った。

奉行所にいるお庭番の棟梁に呼ば奉行所にでかけて、大奥のくの一が4人が市中に降りるので私達朧(玄武)、千代(青龍)、白雪(白虎)、朱雀(沙羅)の四人が替わりに大奥に上がるようにと命じられたのは一か月前の事だ。

お庭番の約束事でお庭番の子供を同じくお庭番として江戸城に上げなければならなかった。特に女は大奥に上がることが強制だった。

準備金がでたので大奥で着る着物をそれえたり櫛など必要なものを揃えた。一週間後には大奥にあがるので何かご馳走でもと思い鯛とハマグリを取って帰ってきたところだ。父殿に知られると話がややこしくなるので今までだまっていたのだ、明日話すつもりだったが非番の同心の誰かに聞いたのであろう。

「なんで一番におれに言わないんだよ。朧良く聞きなさい大奥は男子禁制なんて真っ赤な嘘だからね、たとえばお茶会というのがあるんだよ。大奥の離れにあるお茶会場というのがあって、そこには盛りのついた旗本の男どもが待ち構えているんだ。

そこでね、大奥から女中が運んだお茶を飲みながら、お茶を運んできた女中のおまんじゅを食べるところなんだよ。この女中のおまんじゅうは美味しい、ぜひ欲しいとなるとそのまま持ち帰られてしまうこともあるんだよ。持ち帰られると座敷牢に閉じ込められて一生ご主人様に御奉仕するだけの人生になってしまうんだよ。」

父殿が言うとおりだ大奥は嗜虐の虜になった幕府の旗本や御家人たちの遊興場になっている。

「父殿は今でも大奥に出入り自由だ会いたかったらいつでも会える。娘を嫁入り修行でどこかの尼寺にでも行かせるくらいに考えてくれれば良いよ。」

「馬鹿言ってはいけないよ、大奥は甘くはないんだよ。折檻もされるんだよ大奥では痛くて、苦しくて、辛い、素っ裸されての逆さ吊りや駿河問い、木馬責めの折檻で股を裂かれることだってあるんだよ。そしてオチンチの素晴らしさを教える、とても気持ちの良いもっこ責めという折檻の両方を受けるんだよ。

もっこ責めは危険は折檻なんだよ、大奥の地下牢には魔羅鬼(まらおに)と言う怪物が飼われいるんだけど魔羅鬼のオチンチンはオマンコにはまると凄く具合をいいんだよ、そして女中を丸裸にしてもっこで吊るして魔羅鬼のオチンチンをオマンコに突き刺して、それだけでも凄く気持ちがいいのにハマったままぐるぐる回されると気が狂ってしまうほど気持ちがいいんだよ。長い時間ぐるぐる回されるとオチンチンの奴隷になってしまうんだよ。」


「心配しないで自分の事は自分で守るよ。それから遅いか早いかの違いだけで一度は最低一年間大奥にいないといけないんでしょ。」と朧。娘は16を超えると大奥に上がらなければならなかった。

「そうだよ、そのとうり女はね女の中で揉まれないとだめ一人前になれない。」と台所で魚を捌く母殿がいった。
「それにあんたの血を引いた腕利きだよ。」

父殿(水人、水棲族)と母殿(山人、鬼族)は共に大奥勤めのお庭番だった。特に父殿は先代江戸城四天王(玄武、青龍、白虎、朱雀)の一人玄武だった。忍者の世界では先祖に強力な術者がいると子孫はその名を引き継ぐ。だから私は女だが忍者の世界では玄武と名乗らなければならない。

江戸城詰めのお庭番の男は10年から20年の役目が終わると、奉行所の同心になる。その特異な能力を使い江戸の治安維持と魔物たちから町人たちを守らなければならなかった。父殿が45、母殿17のとき、江戸城を出た後夫婦になり私が生まれた。朧は今年で16だ。

「私はね。可愛い娘の事を心配していっているんだよ。もし、添い寝御用を受け賜って相手が厳しい方で色キチガイになる女薬を飲めと言われるかもしれないんだよ。
’そんなキチガイになる薬など飲めません’とわがままを言うとお尻の穴から入れちゃうんだよ。お尻の穴から入れられと効きが良くてオチンチンの大好きなキチガイ女になってしまうんだよ。そしてオチンチンが一晩中立ったままになる男薬を飲んだ疲れを知らない荒武者に一晩中続く槍けいこの的にされて狂わされるんだよ、お前がきちがい女になることを父は考えるだけで死んでしまいそうになるよ。」

「その事は私も知ってる。」大奥ができた時は大奥独自の身分制度を作り将軍や大名の殿様、旗本に御家人といった幕府体制を維持する男たちに女房を世話して世継ぎを産ませるのが目的だった。つまり血筋の良い男が大奥に集められた身分に会う血筋の良い娘を正室や側室にして次の世代の官僚を産み育てるのだ。

ただこの考えは100年もしない間に破たんしてしまう、血が濃くなりすぎてしまったのだ。鬼族や水棲族、光翔族の血も関わり次第に体や精神に先天的に障害を持った子供や怪物のような子供が生まれるようになってしまった。

そして、一計を案じた幕府の官僚は幕府の身内以外に江戸の商家の娘、外様大名の姫や家臣の娘を女中として受け入れた。商家の娘にしてみれば大奥の序列の上位になれなかったが名誉であり、実家の商売のたすけになった。外様の場合は女中を多く送り込めば江戸城関連の工事の課役を免除されたり、参勤交代の江戸在住の期間を短縮したり、参勤交代そのものが免除されたりと財政的に苦しい外様にとって大助かりだった。大奥女中が全国から送られてきた。

しかし、身分も仕来たりも育った環境も言葉も違う女たちが共同生活すると嫉妬や怨み、差別でごたごたが絶えなくなってしまった。
さらに幕府の官僚たちも年月が経つうち当初の目的、次世代の優秀な官僚、良き跡継ぎを作ると言う目的が消えて大奥が単なる女漁りの場と化してしまう。

こんな状況で女にしてみれば女漁りでも幕府の高級官僚たちのお手付きと言うことになれば一気に権力の階段を上れたのだ、商家の娘は高級官僚のお手付きになれば実家が御用商人にしてもらえた。外様の姫や家臣の娘は藩の石高に手心を加えてもらえたりと藩の財政のため自ら進んで心と身体を差し出す女は大勢いた。
さらに外様から送り込まれる女には私たちと同じ水棲族や鬼族や光翔族の血を引き異様な能力を持つ者もいた。それが問題をさらに難しくした。

それを見かね大奥の上層部が規律維持のため多くのお庭番(くの一も含む)が送り込まれたのだが、幕府官僚組織の腐敗、商家の思惑、外様大名の思惑、女たちの思惑、されにお庭番の組織自体の腐敗などで女たちの修羅場と化してしまった。
問題に巻き込まれ暗殺・処刑されたり、折檻部屋で嬲り殺しにされた女中はとんでもない数いた。



もう一つの問題は父殿が言ったような薬だ、薬が持ち込まれるのは大奥の性格が変わり始める位からだけど、その時に将軍についた男とその息子が女たちを支配するために薬を持ち込んだo大奥に快楽と苦痛に恐怖をもちこんだ。

当時の大奥の女たち(特に上層部)は大奥の存在は女の幸せに繋がらないから無くした方が良いと考える良識派がいて、財政問題から見ても大奥は無い方が良いと良識派の女たちに同調する幕府高級官僚たちがいた。そこで改革が行われようとしたけど、大奥を使ってのし上がろうとする女たちもいたわけで、その権力志向の女たちと良識派の女たちが対立していた。

大奥上層部の女たちは政治を変えなければ大奥は無くならないと考えていて、表の男の世界である政治の世界にも口をだすよになっていた。そこに改革を期待されて紀州家から将軍についたキチガイ男と、残虐な息子。

その息子は将軍が若いころに性奴隷に産ませた子でその恐るべき謀略の才能を駆使して側室たちの競争相手を蹴散らし将軍補佐にまでのし上がっていた。その将軍は大奥を無くすよりも自分や幕府の御用人たちに都合の良い物に作り変えて、浪費を止めさせ大奥の女たちをつかい切迫した幕府の財政の立て直しを考えた。つまり性奴隷貿易だ。清国には盲妹と言う娼婦がいる、幼女の頃に人為的に視力を奪い踊りや楽曲や男と女の特別な教養や技術を身に着けさせる中国人のあくどさを代表するような性奴隷だが、この将軍はこの日本版を作り異国に売り飛ばし大奥の経費をねん出しようと考えた。

将軍の息子は権力派の女たちに良識派の粛清後に上層部への昇格させるという奸計をつかい、なだめたり脅したりして凋落し、良識派の女たちの動きを掴み中心人物の不祥事をでっちあげてて上層部の改革派を一斉に拘束した。女たちにはそこで薬がつかわれた、もともとは吉原の女郎たちが仕事の苦しさを和らげたり、客の調子を良くするために使っていたものを作り変え薬効強くした催淫薬を女たちにつかった。

それは女たちの尊厳・意思・名誉をボロボロにすることが目的だった。薬漬けにした後はならず者に犯させたのだ(そのならず者は嗜虐の虜になった幕府の御家人であったとも言われている)、それでも刃向うものは折檻部屋に送り込まれ凄惨な責めが加えらた。

この弾圧の結果、当時3000人といわれた奥女中の1割が惨殺され生き残った良識派や親派は強制的に服従させられた。

これにより大奥をこの将軍と息子に完全に支配された。かつて同調した高級官僚たちも虐殺される女たちをわき目で見て黙りコックってしまった。幕府の権力構造のなかで女の城として独立した江戸城の子宮だったが、それは男たちに都合よい吉原のようにになってしまった。

でも将軍と息子のこの世の春も長くは続かなかった。女の中に魔物たちの血を引く怪物がいることを考えなかったことが失敗の原因だ。
東北の小藩から大奥に上がったその姫君それは美しい娘だったが、伝説によると異世界から来た鬼の王がその藩の正室を犯して産ませたといわれている。あまりにも美しい姫だったのでその将軍の残虐息子は自分の性奴隷にしようと姫を薬漬けにし手籠めにした。

その時その姫は超能力者として覚醒してパイロキネシスを爆発させてその息子と将軍を丸焼きにして大奥と江戸城本丸を完全に破壊してしまった。姫は巨大な火の玉になり江戸を火の海に変え20万人以上が死んだ。その後、江戸に街が再建され本丸と大奥は立て直されたがこのキチガイ将軍と残虐息子の持ち込んだ快楽と恐怖が大奥では現在まで続いている。

「大奥は神隠しがあるんだよ。朧聞いているのかい。」そう消えた女は殺されたか外国に売り飛ばされている。

「聞、聞いているよ。」朧は我に返りながら言った。
「とにかく昔の仲間にお前を死んでも守るように言っておくから。」


改革派の女中たちは辱めを受け、拷問され処刑された。

手籠めにされた超能力者の姫君がパイロキネシスを爆発させて江戸を焼き尽くし江戸幕府の体制そのものを危機に陥れた。
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