その5 塗装編(完結)
さて、懸念のOMV留め金具は、一時は自作エッチングによる再現も考えたが、やはり現実的な板ナマリによる自作を行う事とした。
型紙は当然、アベールのエッチングである。
今回は約180%拡大でコピーし、それを手本に切り出してみたが、加工もし易い上に厚みも有り(0.2mm)楽しんで作れそうだが、現実は同じ部品を大量に作るという単純作業に辟易する結果となった。
開閉レバーは素材選定に悩みあれこれ試してみたが、結局、ホッチキスのタマ(業務用の大きなモノ)を加工してみたところ、良い結果を得られた為、これまた大量に加工する作業に苦しむ事となった。
車体への固定は、強度も考えにいれて工具自体に真鍮線を打ち込み車体に接着する方法を考えたが、実際に行ってみたところ、ナマリ板が加工に耐えられず変形してしまい失敗に終わった。
結局、瞬着で強引に車体に固定してしまったが、強度的に極めて不安である。
ただ、後に工具類をセットしてみたところ、以外としっかりと固定されているようで、ちょっと安心である。
間隔表示灯と反射板の自作
車体後部に取り付けられる間隔表示灯は流石にキットでも付いているが一体モールドの質感に欠けるモノで、ディティールアップの限りを尽くした車体後部にキットのまま取り付けるのは忍びないので、透明プラ棒とエッチング枠などを利用して自作している。
私の場合、エッチングの枠(プラモではランナーに相当する部分)を加工して細かなパーツの再現に利用する事が多いため、使用済みのエッチングも取り敢えず保存している。
また、反射板(尾灯)はキットには付属していなかった為に、自作した。
この辺りは1/35のMMではパーツ化されている部分であるのにも関わらず、1/16では未再現で、少々残念な部分である。
ここまでの作例以外でも省略されている部分が多く、再現可能な部分は適材適所で材料を選びながら自作していったが、その殆どはプラ板(0.2又は0.3mm)を使用している。
最近はエバーグリーンなどの加工済みのプラ板があり、自作作業自体が随分手軽に行えるようになった。
いよいよ塗装に取りかかるわけだが、今回はビッグスケールということもありOMV関係は取り外した状態(取付金具は装着した状態)で、塗装を行っている。
まずは下塗りのマホガニーをもう一度全体にオーバースプレーして色調を整えた後にダーグイエローでシャドー塗りしていくが、今回は塗料の消費が半端じゃないので、貴重なグンゼのパンツァー・カラー(現在絶版)を使用するのは迷彩色のオリーブグリーンとチョコレートブラウンだけとし、ダーグイエローは今のカラーを調合して(今回は特に意識的に黄色味の強いダーグイエローにしてみた)イメージの合う色に仕上げてみた。
さて、肝心の迷彩は私の最も苦手とする作業で、過去の作品に施したドイツの3色迷彩で満足のいく仕上がりに出来たモノは1つもないという、かなり情けない状況なので余り参考にはならないと思うが、一応解説しておく。
製作している初期型後期仕様のタイガーは、基本的に工場出荷状態ではダーグイエローの単色で塗装されており、各戦車連隊に受け渡し後に現地の整備兵や搭乗する戦車兵などによって迷彩が行われている上に、数度の修理の度に再塗装や補修塗装が行われていたため、迷彩パターンには一定の法則性はあるものの、必ずしも厳密に規定されたパターンがあったわけではないようで、かなり自由に塗装しても問題とはならないでしょう。
今回はかなり希釈された迷彩色を現地で細くスプレーされたパターンの再現を行ってみた。
ここでお断りしておくが、今回の塗装は実際の第502重戦車隊311号車の塗装を再現しているわけではありませんので御了承下さい。
(大体、白黒写真で薄い迷彩パターンが完全に判別できるわけでもなく、2色迷彩か3色迷彩かも判別つけにくい程度なので、洋書のイラスト塗装例も参考程度にしておく方が精神衛生上も良いでしょう)
しかし、流石に1/16への迷彩は実車感覚で行える(笑)
エアブラシのノズルを絞って(私の場合は0.3mm)吹き付ければ、実際の戦車兵が使っていたスプレーガンと同じ程度の幅の迷彩が描ける。
もっとも、全体のバランスを見失って迷彩を行ってしまう危険性も多いので、頭の中でしっかりした完成状態の迷彩ビジョンを組み立ててから取りかからないと、私のように地獄を見ることになる。
私の場合、オリーブグリーンの迷彩から始めたが、今回は迷彩パターンを事前に車体に薄くトレースしてからぼかしていく大戦後期のドイツ車両迷彩に良く使われる手法ではなく、自分のイメージと参考としたイラスト等を横目に見ながらいきなり砲塔から放射状に迷彩していき、続いてチョコレートブラウンに少量のダーグイエローを混色し、更に迷彩を続け、最後にダーグイエローで迷彩幅や迷彩の境界をリタッチし、全体的な迷彩パターンの修正を行った。
今回の迷彩塗装ではつじつまの合わなくなった迷彩ラインや、バランスを崩す様な迷彩ラインが数本見つかり、ダーグイエローでオーバースプレーして消し去ってしまっている。
1/35辺りでは、かなり調整が難しい作業だが、そこは1/16、簡単に消すことが出来た。
この後に車体のマーキングを行うわけだが、今回はキットに付属していないマーキングということもあり、又、スケール的にも流用出来るモノが殆どない状況なので、鉄十字と第502重戦車連隊のパーソナルマークである「マムート」をデカールで。(マムートマークは流用デカール)
車体側面及び砲塔側面と後部の都合5カ所に入る#311を自作テンプレートで。
そして、砲身のマズルブレーキの「タイガーマウス」を手画きで再現する事とした。
自作テンプレートは0.2mmのプラ板を利用して作ったが、詳細は下の画像を参考にして欲しい。
1/16だと、こんな芸当もストレス無く行える(笑)
この後、エナメルの艶消し黒を充分に希釈してウオッシング(今回はエアブラシで吹き付けた)し、乾燥後にふき取り、パステルを粉にしてアクリル溶剤で溶いた塗料での定番の雨だれ表現を軽く行い、その後に、ホコリ表現として、ラッカー系のバフ色を薄く車体下部に辺りの走行によって汚れるであろう部分に薄くオーバースプレーしている。
本来は、ドライブラシも同時に行うのが定番なのだが、今回は「富山サンダーバーズ」の展示会に参加するために作業を急いだ為、取り敢えずはこの段階で各OMVの装着等を行い完成状態に一気に持ち込むこととなった。
各OMV関係は、単体で塗装を終了させているが、この工具類にもディティールアップ作業は必須である。
まず、キットのパーツから留め金具のモールドを切り落とし、その後に木目の表現としてエッチング・ソーなどを垂直に立てカンナ掛けの要領で木目パターンを施し(当然、実車において木材だった部分にだけだが)、ウッドブラウンを全体に塗装後にエナメルのフラットブラックでウオッシング、乾燥後にブラウンで木目パターンをハンドメイドで書き込み、最後にエアブラシでクリアーイエロー+クリアーオレンジ+スモークブラック(少量)+フラットベースでニス色を作り吹き付けてある。
少々面倒な作業のように思えるが、実際は全ての工具を同時進行で作業していくので、それほどのストレスは無い。
全ての塗装が完了したらいよいよ車体に取り付けであるが、この時に自作したOMV留め金具を壊さないように(なにせ、材質が鉛板だから強度的にはかなり心配である)慎重に取り付け、ゼリー状の瞬着やエポキシ接着剤などでガッチリと接着していく。
また、この時に開閉レバーも同時に接着しておかないと後からの取り付けにはかなりの労力が必要となる。
各OMVを取り付け、細かなディティールを追加したら、いよいよ完成であるが、最後に、グンゼの艶消しクリアを希釈してオーバースプレーを行い艶の調整を行った。
今後の課題としては、あっさりと仕上げすぎた感じのするこの虎に、私の仕上げ方法では既に定番となっているドライブラシ&パステルによるウェザリング&エイジングをいつ行うか?。
また、このスケールならではの剥げチョロ塗装を行うか否か?が、課題として残っているが、それは、また、別の機会に・・・・