1997年の4月28日にJOY−VANがナンバーを交付されて
公道が走れるようになった。次は免許の問題だと早速1997年5
月9日に府中免許試験場にJOY−VANで訪問、ジョイスティッ
クでコースを走ったそして、警察庁の免許課の担当者より「車両を
持ち込んでいただければ、すぐにでもジョイスティックの免許につ
いて対応する」との回答を引き出した。
この回答でジョイスティックの免許については警察庁が認めた。あ
とは多少の確認作業があるぐらいと考え、全国キャラバンに忙殺さ
れた。キャラバン終了後「よし、いよいよ免許やるか」と思ったら
最後の詰めに思いのほか時間がかかってしまった。国民の生活を豊
かにするという発送に乏しく、自身の立場のことしか考えない壁は
思いのほか厚かった。TOP BACK
1月6日(火)
警察庁免許課から電話。府中免許試験場の都合で13日に訪問する
ことを決定。初めてのケースなので現状は基準作りに頭を痛めてい
るようだ。ジョイプロジェクトは、現物の車両を教材として現行基
準との整合性を見つける作業ができれば良いと考えている。免許課
に強力なサポートを要請。
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1月13日(火)
警察庁府中運転免許試験場訪問。本来ならJOY−VANで行かな
ければならないのだが、昨日からの雪が凍り付いていて動かせなかっ
た。顔合わせ程度の中身であったが、以下話し合いの中身要約。
担当者:「中央側(右側)に出るリフトの安全対策についての確認」
ジョイプロジェクト:「反射テープを貼る以外、特に対応はしてい
ない。基本的に自己責任の問題だと考えている」
担当者:「他の多くのドライバーには右側にリフトが出ることを想
像することは困難であるから、ランプを付けるとかの規制は必要だ」
ジョイプロジェクト:「現時点では右降りリフトはJOY−VAN
しかないが、スロープ式ならもう既にかなりの台数が町中を走り始
めている。センター側に乗降するのが危険ならば、乗用車の右ドア
も同じ。要はドライバー及び乗降する当事者の責任であり、全ての
ドライバーに対する教育が大切だと思う。車椅子用駐車スペースで
も、なぜ必要なのかについての周知(教育)されていないためにト
ラブルが絶えない。土、日のサービスエリアでは一般車両が車椅子
マークの駐車スペースを占領していることが多い、空けておくこと
の必要性が認識されていない。結果として一般車両の駐車を阻止す
るためのコーンを置いている場所があるが、車椅子ドライバーは自
分でコーンを取り除くことが出来ないので結局駐車できないと云う
笑えない状況がある。ぜひ一般ドライバーへの周知プログラムを考
えてほしい」
「アメリカでは車椅子マークの駐車スペースに一般車両が駐車をす
れば直ちに違反切符を切られるし、乗降中のスクールバスは追い越
しである。このように具体的な法律があって初めて(やさしい)と
言う言葉が文字通り実践されるのである。日本ではキャンペーンや、
かけ声だけで、後は(良識)任せなので、個人差の大きい良識では
実効が上がらない。まだまだ解決しなければならない問題は山ほど
有るので、今後是非とも多くの当事者の声に耳を傾けてほしい」雑
談の中で話が脱線したりしながら、お互い意外な事実に気づくこと
が多い。試験場が土、祝にコースを一般開放していて、予約をすれ
ば使えるという朗報も得られた。
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1月14日(水)
土、祝日のコース貸しについて詳細確認のため、府中試験場に電話。
ところが、「運輸省関係への問い合わせに対し、『ジョイステック
コントロールそのものは運転装置として許可していない』との回答
を得たので、そのことについて確認作業中である。確認が取れない
とコースの貸し出しはできない。」との回答が帰ってきた(?)。
具体的にどこに問い合わせたのかについては言明しなかった。
この車は、ハンドコントロールと同じ扱いでジョイスティックコン
トローラーも補助運転装置として関東運輸局から許可を受けている。
現に昨年全国キャラバンの際、各地でそのことはインフォメーショ
ンしており、メディアを通じて露出している。もし許可していなけ
れば直ちに運輸省からジョイプロジェクト事務局にクレームが入る
はずである。善意に解釈すれば、初めてのケースなので慎重になっ
ている。しかし運輸省の許可を受けてからの時間経過を考えれば、
初めてのケースだからこそ担当部局の責任回避ととれなくもない。
警察庁の見解は、「運輸局が補助運転装置としてジョイスティック
を許可したといういきさつについては認識している。しかし府中の
担当者が、ジョイスティックは許可されていないと云う話を聞いた
らしく、裏付け確認を求めてきたので、各方面に問い合わせをして
いる。拒否するのが目的ではなく、確実に前進するためのプロセス
と考えている。」試験場からは、「認可問題がクリアにならないと
コースは貸せない」と言われているので、「ジョイプロジェクトと
しては早急に解決してほしい」と申し入れた。
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1月28日(水)
警察庁免許課に電話。車両基準についての確認作業の進展状況問い
合わせ。運輸省からまだ返事がこない。全国レベルで周知するため
にも、運輸省の統一見解が必要。
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2月12日(木)
警察庁免許課に電話。未だに連絡がないがどうなっているのか。担
当者も運輸省に対して、なぜ返事がないのか不審に思っている。と
の回答。ジョイプロジェクトとしては、練習のための準備もあり、
いつまでも待つわけにはいかないので、直接運輸省に問い合わせを
することを伝えた。
運輸省に電話。警察庁からの問い合わせがあったかどうか確認。1
ヶ月ほど前にそのような問い合わせがあり、ジョイスティックコン
トロールについては補助運転装置として、あの車両の一部として認
可した旨伝えた記憶がある。しかし書類での問い合わせは受けてい
ない。もしそのようなことがあったとすれば検査部局に回っている
可能性がある。今その担当者がいないので、帰り次第確認して連絡
をする。
再度警察庁免許課に電話。運輸省とのやりとりを報告。再確認した
ところ警察庁は書類での問い合わせはしていない。運輸省担当者は
既に回答済みのつもりでいて、免許課担当者は回答待ちのつもりで
いたという。双方で確認作業をして至急連絡がほしい旨伝えた。な
お、道交法88条の欠格事由における政令33条の解釈について確
認。下肢または体幹の昨日に障害があって腰をかけていることがで
きないものは、条文通り読むと「車椅子から運転席に乗り移りがで
きなければならない」とは解釈できない。しかし現状は「腰をかけ
るためには自ら乗り込むのが常識である」との解釈であるらしい。
JOY−VANに関しては「電動車椅子に腰をかけたまま自ら乗り
込むから、この解釈で問題はない」との見解であった。やはりこれ
は納得できない。解釈は運用であり、状況及び時代の変化に応じて
速やかに変更すべきものである。腰をかけるためには自分で乗り込
むのが常識というのは、健常者の論理であり、障害者の社会参加の
可能性を著しく狭めている。
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2月13日(金)
警察庁免許課より電話。運輸省と確認作業が完了した。ジョイスティッ
クコントローラーも補助運転装置として認可したとの公式見解をも
らった。このことについて警察庁にもすでに伝えた。
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2月17日(火)
府中運転免許試験場に電話。警察庁から運輸省との確認作業が終わっ
たとの連絡を受けた。コヤマドライビングスクールでコースの提供
を考えてくれている。近日中に再度JOY−VANを持って訪問し
たい、と申し入れた。
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4月10日(金)
警察庁免許課訪問、新たな事実が判明。
片手の機能しか残っていない人が免許を取得するために受験をすれ
ば、問題なく『ジョイスティックコントロール限定』免許を交付す
る。
『手動式限定免許』を所持する人が『ジョイスティックコントロー
ル限定免許』を受験するとなると、法的な見解が分かれる。より広
い限定の免許を持っている人がわざわざ狭い限定の免許を受験する
必要があるのか。マニュアルの免許を持つ人が、ノークラッチ限定
免許を受験するようなものではないか。
限定された条件をより広い条件にするか、または解除することを目
的としているのが『限定解除試験』である。しかし今回の場合はこ
の条件に当てはまらない。したがって現行免許制度の中では対応す
べき方策がない。技術の進歩にあわせて制度も変えなければならな
いとの認識で、一定の年数ごとに見直し作業を行っている。他の問
題との整合性をも考慮しながら検討することになる。いつ頃結論が
出せるか現段階では答えられない。ジョイスティックが運転技術的
に全く別の認識が必要との結論になれば、特別枠の免許となる可能
性も残されている。
現状では、練習をするのはかまわない。運転技量が一定レベルに達
したら、非公式に『見る』ことはできる。ただし公式に試験を受け
付けるのはなじまない。現行法の解釈において手動式免許所持者が
ジョイスティックを使って公道を走った場合、違法となるかどうか
は『何とも言えない』。何らかの結論がでるまで公道の走行はしな
いでほしい。
ちなみに何の限定もない普通免許を持っている『健常者』が手動式
やジョイスティックを使って運転をしても法的には何の問題もない。
安全運転ができるレベルにあるかどうかは当事者責任である。かな
り問題が浮き彫りにはなった。
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5月8日(金)
府中運転免許試験場訪問、JOY−VANを見せ最終確認作業。
警察庁免許課当時は直接の担当者だったK氏は技能検定課に配属に
なったようで、事情通として同席した。彼は免許課当時は、正式の
試験はできるだけさけてほしいようであったが今日は「公式に試験
を受けたほうがいいですよ。検討は具体的な事実がないとなかなか
進まないですよ。受験という事実で検討を迫った方がいいですよ」
等と気楽に言ってくれた。
ジョイプロジェクトからは「6月初旬から練習を始める。6月中
旬を目途に試験場のコースを使って非公式に実地運転を見る機会を
つくってもらいたい」と申し入れた。そうだ、ナンバーが取れて間
もないピカピカのJOY−VANが、ここ府中運転免許試験場のコー
スをジョイスティックを使って走ったのは昨年5月9日だった。そ
の時は怖さを知らないものだから、渡邊が運転をしたのだ。なぜか
あの時はとてもスムーズに運転できたように思う。すでにその時点
で警察庁運転免許課の担当者が『実車を持ち込んで試験を受け、合
格すれば免許を交付します』と明言をした。ちゃんと映像にも残っ
ている。だから我々としては免許の問題はさほど困難ではないと考
えていた。たぶん警察庁でも、実際に受験者が現れるのは当分先の
話と、現実的な詰めの作業はしていなかったのだろう。すでに手動
式限定免許を持つジョイプロジェクトの渡邊、小宮山が受験したい
と申し入れたことで、既成に手動式限定免許とジョイスティック限
定免許の整合性について結論を迫られた形となり、困惑しているの
だろう。
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5月28日(木)
コヤマドライビングスクール石神井校から電話。「本部と話し合っ
た。6月8日から15日まで、土日を除いて6日間の予定で府中運
転免許試験場教習課にイベント申請書類を提出する」自動車教習所
は営利を目的とした企業のはずではなかったのかな。コースを目的
外使用についていちいち試験場教習課の許可をとらなければならな
いのか。
そういえば去年の全国キャラバンで、早くに予約をしていた教習
所が直前になってドタキャンをしてくれたっけ。その理由を聞いて
驚いた。「交通安全協会から『親子交通安全イベントを実施する』
と通知を受けた。予定が重なっていることを伝えたが『外車の宣伝
をするような団体に施設を貸すとは何事か』と取り合ってもらえな
かった。まことに申し訳ありませんがご勘弁願いたい。そのかわり
他の教習所を紹介します」というような経緯であった。
府中運転免許試験場に電話。コヤマドライビングスクールとの経
過を説明。6月16日か17日に実地テストを受けたい旨申し入れ。
検討して6月1日に返事をいただけることになった。マスコミの取
材を気にしていたが「ジョイプロジェクトから一方的に流すだけな
ので何社来るかはわからない」と回答。
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6月1日(月)
府中試験場に電話。「先週申し入れを受けていた非公式実地テス
トについて、結論から言うと受けられない」との回答。これまでの
根回しはいったい何の意味があったのか。「非公式の実地テストに
対する警察庁運転免許課からの要請は受けていない」との回答。警
察庁運転免許課に問い合わせる親切心はないようである。実際には
問い合わせてはいても。警察庁としての立場に固執した結果なのだ
ろう。個人個人はいい人たちが多いのだが、組織となるとどうして
こうもギクシャクするのだろうか。
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6月2日(火)
警察庁運転免許課に電話。担当者に経過を説明。『ジョイプロジェ
クトとしては警察庁の都合を最優先して、不都合の起きないよう配
慮しながら事を進めてきたつもりである。しかしここに来て府中運
転免許試験場の対応はこれまでの経緯と努力を否定するものであり、
納得できない。新システム車をわが国に導入しようという公益的活
動である。しかるに府中の対応は「渡邊さんだけ特別扱いは出来な
い」という渡邊個人の問題としてしか捉えようとしていない。我々
としては免許の問題について社会的に明らかにしなければならない
と考えており、マスコミも大きな関心を示している。このままで推
移するならば我々としてはそちらの都合の如何に関わらず、正規の
手続きを踏んで受験をすることになる』担当者は「責任を持って警
察庁と話をする」と返答してくれた。今月第2週中には回答をいた
だけるよう要請。
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6月8日(月)
今日から毎日4時おきで早朝運転練習。5時に家を出てコヤマド
ライビングスクール石神井校に到着したのは6時。8時までの2時
間が我々に与えられた時間である。渡邊、小宮山、水野各40分の
持ち時間である。渡邊の目から見ると水野の運転が一番安定してい
る。小宮山は多少びびってはいるものの、「やらねばならぬ」との
意気込みは十分である。情けないのは渡邊である。ブレーキのタイ
ミングがつかめないことが原因なのか、35年前の交通事故の心理
的後遺症が影響しているのか、得体の知れない恐怖が心を支配して
いる。
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6月12日(金)
東京新聞Sさんから電話。警察庁に電話取材をした。「ジョイス
ティックは新しい概念の運転装置として考える方向で進んでいる。
したがって現車を持ち込めば非公式ということはあり得ない。公式
の試験として受けていただく。合格すれば新たな条件(ジョイスティッ
クも可)等を追加することになる。全く条件のない人の場合、法的
にはジョイスティックの運転は可能であるが、相当練習しないと安
全に運転することは出来ないようなので、現実的には問題にならな
いと考えている。」との見解であったと報告を受けた。
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6月15日(月)
コヤマドライビングスクール早朝練習最終日。かなり馴れてきた
し、恐怖心はなくなったが、まだまだとても合格ラインにはほど遠
い。
事務所に戻って警察庁免許課に電話。「こちらから電話をしよう
と思っていました、警視庁と調整をしています。公式に試験を受け
ていただくことになります。日程については29日の週になりそう
です。健常者は受験の必要はありません。」
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6月22日(月)
再びコヤマドライビングスクール石神井にて、かなり強い雨の中
早朝運転練習再開。「限定のない免許所持者はジョイスティックを
使って公道を走行しても何ら問題はない。」との公式見解が出たこ
とで今日からは渡邊、小宮山の2人で2時間を使うことになった。
今までは3人で練習していたがこれで1人1時間になる。20分練
習時間が増えたことは貴重である。
ブレーキの微妙なタイミングが、雨(湿気)のせいで影響を受け
ていたわけではないことを実感できる程度には腕が上がった。ジョ
イスティックコントローラーそのものに馴れてきたようである。そ
れでも試験に合格できるレベルではない。
警察庁運転免許課から電話・・・警視庁と調整中で、7月6日の
週に審査を実施することになりそうだ。場合によっては1日の週に
実施することになる可能性も残されている。決まり次第再度連絡す
る。
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7月3日(金)
警察庁運転免許課の課長補佐と主査、警視庁府中運転免許試験場
の主査、初台事務局来訪。ジョイスティックコントロールシステム
の信頼性について確認。ジョイスティックの機能と操作性と安全性
について実地に確認する事が目的であったようである。アキュート
ロールコントロールについても今まで認識がなかったので再確認。
オートラッチロックシステムの確認。
運輸省、関東運輸局、警察庁、警視庁との交渉経過についての時
系列での確認。全体の流れを上に報告するために必要とのことであ
る。
水野が実際にジョイスティックを使って公道を走行し、確認作業
を行った。繰り返し確認していたのは機器の信頼性についてであっ
た。
急ブレーキや滑らかなハンドリングが難しい点について、単に慣
れの問題で解決できるのか。練習をした結果としての感想を確認さ
れた。コンピュータープログラムが二重になっていることを説明し
たことで、得心されたようである。
その他確認事項【座席としての車椅子の価格について】【他の車
椅子の場合の運輸省の見解について】【改造費用について】【ユー
ザー層について】
最後に「最大限努力をしていますが、当初の約束がずれ込んでい
ます。まことに申し訳ありませんが、試験の実施は13日の週にな
りそうです。ご了解をいただきたい。」との発言があった。
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7月7日(火)
警察庁免許課から電話。試験場が実施している『土曜、祝日のコー
ス貸し』にジョイプロジェクトとして申込をして欲しい。ただしコー
スの撮影は一切厳禁。マスコミの取材はお断り。但しジョイプロジェ
クトが任意に撮影する分には、コースが明らかになるようなポジショ
ン以外ならばかまわない。
どうやら試験を一発でクリアーして欲しいようである。それにし
ても彼らの言う公式とは何を基準としているのだろうか。ジョイス
ティックによる受験はどう見ても特別なことなのに、「特別扱いは
出来ない。」と繰り返し言われると『特別』て何なんだろうと考え
込まずにはいられない。本邦初の試みを特別と言わずして他に特別
など存在するのだろうか。
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7月11日(土)
府中運転免許試験場で1時半から実地走行。担当者曰く「初めて
のケースなので、暴走したりしないか確認のために走行してもらい
ます。特別に指導したりアドバイスすることが目的ではありません。」
あくまでも公式には、特別扱いをしていないらしい。「本来は一人
で1時間を使用することになるが、本日は30分ずつ交代で走って
下さい。」
まず渡邊が実地走行。自分では『練習』のつもりなのでリラック
スしていたし、アクセルもブレーキもかなりオーバーアクションで
走行した。途中気を抜いたところは見事に急ブレーキ。カーブのラ
イン取りも技術レベルを超えたスピードのため、ぎくしゃくした。
外周も50Km走行を意識して走ってみた。勿論自分でも滑らかな運
転をしているつもりはない。今の技術レベルでは対応しきれない範
囲までスピードを出してることも自覚しながら走った。
結果として「渡邊はまだまだ合格ラインには厳しい、小宮山は車
幅の感覚をつかめばぎりぎり合格ラインだろう。」との感想であっ
た。「試験試験と大騒ぎをしている割りには、技術的にはまだこん
な程度か。」との雰囲気が感じられた。それでも「試験を実施する
以上は一発で合格して欲しい。」との思いも伝わってきた。
明らかに渡邊は合格ラインにはほど遠いとの宣告を受けたような
もので、俄然ファイトがわいてきた。「一週間で合格ラインに達し
てみせる。」と宣言。渡邊としては、この一週間は正念場である。
TOP BACK
7月15日(水)
警察庁運転免許課に電話。案の定また伸びそうである。土曜日の
見聞の結果を聞いて、練習にまだまだ時間がかかりそうだと判断し
たのではないだろうか。「まことに申し訳ありませんが」と言葉は
丁寧であったが、実際問題として3度目の遅延であり、やんわりと
クレームを伝えた。23日又は24日に解禁にして欲しい旨伝え「
最大限努力する」との回答を得た。しかしながら最後に「最悪の場
合27日の週になるかもしれないことをご了解下さい。」結局は月
末になりそうである。
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7月21日(火)
警察庁免許課より電話。「まことに申し訳ありませんが、やはり
今週は対応できない。7月中には間違いなく対応します。なにぶん
にもよろしくご了解下さい。」との内容であった。
TOP BACK
7月27日(月)
警察庁免許課より電話。「全国の運転免許試験場にジョイスティッ
クコントロールカーの詳細を知らせたいと思っている。ついてはジョ
イスティックについて詳細がわかるイラストやパンフレットはない
だろうか。」との問い合わせ。
警察庁免許課に電話。別の担当者は「運輸省関東運輸局からジョ
イスティックコントロールを補助運転装置として認可したとの正式
な書類が府中運転免許試験場に送付されているはずだから、もうい
つでも受験はできますよ。後はそちらの腕次第でしょう。」ずいぶ
ん話が違う。つい先週までは課長補佐が丁寧に対応していたのに、
急に態度が大きくなった。「府中に確認して下さい」と簡単に言う。
府中運転免許試験場に電話。警察庁免許課から聞いた件を伝え、
8月4日に試験を受けたい旨申し入れた。ここで初めて公式に【限
定解除試験】であることが明らかにされた。受験料1,600円が
必要。「マスコミの取材はお断り」と言われたが、『それは我々に
言われても困る。これまでの経緯から、我々としては過去ご取材い
ただいた各社には通知をします』と申し入れた。「それでは各社か
ら免許課に取材申し込みをしてほしい」『各社へのインフォメーショ
ンの折りその点は伝える』
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7月28日(火)
府中運転免許試験場から電話。「小宮山の運転免許のナンバーと
条件を教えて欲しい。渡邊の記録はあったのだが、小宮山の記録が
見あたらないので。」そんなことってあるの?結構いい加減だな。
TOP BACK
7月29日(水)
警察庁免許課から電話。「書類手続き一切が完了しました。いつ
受験してもらっても結構です。府中から8月4日の件は聞いていま
す。ぜひ頑張って下さい。」『これで新たな免許の道が開けるわけ
だから、警察庁免許課からも当日はぜひ同席していただき、コメン
トをいただきたい』「合格した場合は良いけれど、不合格だとコメ
ントしづらい」『合格するつもりではいるが、万一不合格になった
としても、新たな免許の道が開けたことに対し、コメントをいただ
きたい』「わかりました同席します。取材の件は試験場と話し合っ
て決めて下さい」
府中運転免許試験場に電話。『8月4日は警察庁の免許課の担当
者も同席されることになった。試験終了後、警視庁からも公的立場
からのコメントが欲しい』「警察庁からコメントが出れば、それで
十分でしょう」『取材となると試験終了後経過説明や、コメントを
出すために、場所が必要である。どこかの部屋を提供してもらいた
い』「上と相談してみる」
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7月30日(木)
府中運転免許試験場に電話。『記者会見のための部屋の確保はど
うなりましたか』「一切こちらでは決められないので、免許課に話
してほしい」ん?昨日と話が違う。それなら昨日のうちにそう言っ
てほしい。警察庁も警視庁もどうしてこんなに話がごちゃごちゃす
るんだ。と言ってもいつものことか。
府中運転免許試験場免許課に電話。『試験終了後経過説明や、コ
メントを出すために場所が必要である。どこかの部屋を提供しても
らいたい』「取材に関しては一切の権限は広報にある。今、上にあ
げていて、今日夕方には返事が来ると思うが、今は何とも返事がで
きない」『免許行政に新たな1ページを開く画期的なことであり、
警察庁にとっても警視庁にとっても、宣伝になることでしょう。お
おいに宣伝していただきたい』「個人的にはそう思うのですが、他
を断っている手前、公平の原則が・・・」何とも歯切れが悪い。
TOP BACK
7月31日(金)
府中運転免許試験場免許課に電話。『警察庁免許課のコメントを
受けたりするのに場所が必要だが、対応して欲しい』と再度申し入
れ、「状況を見ながら対応する」との回答を得た。なお、「メディ
アに対する対応については広報に確認して欲しい」と言われた。当
初、試験場の担当者が直接上に聞いてくれると言う話が、免許課に
聞いて下さいになって、今度は広報課になった。それもこちらが聞
いたから担当部署を教えてくれただけで、担当者自ら教えてくれた
訳ではない。しかも、広報課が本庁(警視庁)の広報課であること
は知らされていない。
警視庁広報課に電話。「メディアの取材に、許可を出す権限は当
方にはない。試験場長の裁量である」『それならば広報から試験場
に、対応するよう連絡を入れてほしい』
再度府中運転免許試験場免許課に電話。やっとのことで『取材を
認める』との公式確認を得る。
TOP BACK
8月3日(月)
府中運転免許試験場免許課に電話。報道各社の社名を伝える。「
明日、折り畳みの机を貸してもらいたい」と申し入れ。駐車場の確
保を依頼。
警察庁免許課から電話。「明日自分も出席させてもらうが、どの
ようなコメントを出せばよいか。」『我が国で始めてのことで、こ
れまで運転できなかった重度障害の方々に社会参加の可能性が広がっ
た。全国の試験場にもジョイスティック免許への対応について連絡
をしてある。程度の中身で結構です』と伝える。
TOP BACK
8月4日(火)
11時半府中運転免許試験場に到着。12時をすぎる頃から続々
とマスコミ各社が到着。
府中運転免許試験場担当者は全ての人達がにこやかな対応、コー
ス貸しの時、受付に使われた建物を待機場所兼記者会見場として提
供してくれた。マスコミの力の偉大さを痛感させらる。
1時に試験の受け付け開始。コースの説明を受けるに当たり、通
常では考えられないほど懇切丁寧であった。過去何度も限定解除試
験を受けた経験から、その差は驚くばかりである。特に「クランク
については普通車のコースなのでアストロ(JOY−VAN)では
1回で曲がるのは不可能と思われるので、切り返して曲がってくだ
さい。切り返しは3回までは減点の対象とはなりません。くれぐれ
も縁石に乗り上げないように注意をしてください。」「外周では1
カ所だけ50キロ走行をしていただきます。そこでは指示を出しま
す。それ以外では無理にスピードを出す必要はありません。」これ
は明らかに『何とか受かってほしい』との試験場側の心の現れに他
ならないと思われる。よほどのドジをしない限りこれは受かるなと
感じたが、小宮山はまるで緊張しっぱなしである。昨夜も一睡もで
きなかったようだ。試験官に「肩の力を抜いて、緊張をほぐさない
と」と言われた。いかにも「受かってほしい」との切実な気持ちが
伝わってきた。
審査終了後、記者に感想を聞かれた時点では小宮山も緊張した心
境を炎々と語っていたが、合格の知らせが届いた後は涙々の会見と
なった。渡邊は、結果が出るまでは「合格ラインぎりぎりで、受か
るかどうかわからない」とコメントしていたが、内心は「多分受か
るだろう」と思っていたので、合格そのものには大きく感慨はなかっ
た。しかし「これでまた一つ、行政の規制に大きな穴をあけられた」
「これまで全く運転のチャンスを得られなかった多くの人達に、社
会参加の可能性が広がった」そしてそれを『ジョイプロジェクトが
成し遂げた』ことに喜びと感動を禁じ得なかった。しかしそれはと
てもさやかな感慨であり、渡邊にとっては涙を伴うものではなかっ
た。
審査そのものよりも、免許公布後に各メディアからジョイスティッ
クでの公道走行を要求され、実際に走ったときの方が遥かに怖かっ
た。60キロ前後で周囲を車が走っているのだ。これは初体験であ
り、恐怖以外の何ものでもない。ところどころをハンドコントロー
ルで切り抜け、そして誤魔化し(?)何とか無事にこなした。
その夜、ほとんどのテレビ局がニュースで取り上げたが、残念な
ことに警察庁免許課の「我が国初めての免許である。重度障害者に
も社会参加の可能性が広がった。全国の試験場にすでに通達をした」
とのコメントを流したところは皆無であった。
終わり
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