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ワークショップH
2004年11月21日(日)
09:30 - 10:30, 第2会議室
ワークショップH
造船とアスベスト
座長:三浦溥太郎、クラウディオ・ビアンチ

三浦半島における造船労働者の中皮腫
稲瀬直彦、三浦溥太郎
横須賀共済病院内科[日本]

背景:中皮腫患者の多くは長年にわたる石綿曝露を伴う職業歴を有している。三浦半島に位置する横須賀市は100年以上にわたる「造船の町」としての歴史があり、また中皮腫発症頻度の高いことで知られている。
目的:当施設で経験した胸膜中皮腫患者のうち造船労働者の占める割合と、これらの労働者の石綿曝露を具体的に調査するために診療記録を参照した。
対象:1991年から2003年まで当院に入院した胸膜中皮腫患者38名(男31名、女性7名)で年齢は30から86歳であった。病理組織による分類では上皮型24名、二相型8名、肉腫型6名であった。
結果:石綿曝露に関して職業曝露を34名に、傍職業性家族内曝露(夫が造船所に勤務)を2名の女性に認めたが、2名については石綿曝露が明らかでなかった。石綿の職業曝露を受けた34名の内訳は27名(79%)が造船所勤務であり、4名(12%)が建設・解体に、3名(9%)が車両製造・修理に従事していた。胸膜中皮腫を発症した27名の造船労働者の潜伏期間(最初の曝露から発症まで)は24-70年(平均46年)であり、建設・解体群(平均潜伏期間32年)や車両製造・修理群(平均潜伏期間34年)と比較して長い傾向を認めた。またこの造船労働者における石綿曝露期間は6-43年(平均26年)であった。
結論:胸膜中皮腫を発症した造船労働者においては、他の職業において石綿曝露を受けた患者と比較して潜伏期間が長い傾向にあることが示された。