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ワークショップH
2004年11月21日(日)
09:30 - 10:30, 第2会議室
ワークショップH
造船とアスベスト
座長:三浦溥太郎、クラウディオ・ビアンチ

アスベストと造船所
クラウディオ・ビアンチ、トマソ・ビアンチ
イタリア対がん協会・環境がん研究センター[イタリア]

1) 19世紀終わりの20年間以来、様々なタイプのアスベストへの曝露が造船所で起きた。20世紀になると、とくに造船産業が盛んな国々においては、深刻な問題となった。20世紀前半には、イギリスがアメリカとともに、二度の世界大戦を通じて海軍戦艦の集中的な建造があり、最も重要な造船国であった。20世紀後半は、日本と、はその後、韓国において、著しい造船業の隆盛がみられた。これら主要な造船国とは別に、様々な国々で、とくにヨーロッパにおいて、重要な造船事業が見られた。

2) 造船所におけるアスベスト曝露の特徴は、解剖による研究に基づいて再構築されるかもしれない。造船所で働く全ての人々が、アスベスト曝露に関連していた。曝露の程度には大きな変動があった。イタリアのモンファルコン(Monfalcone)の造船所で実施された諸調査では、造船所で働く労働者のうち、80〜90%に胸膜プラークが観察された。プラークのサイズは様々で、小さいものが21.2%、中程度のものが33.1%、大きなものが32.4%であった。アスベスト小体は、35%に通常の肺切片で観察された。肺の化学的消化後のアスベスト小体の検出では、78.6%に肺組織乾燥重量1グラムあたり1,000個以上、49.1%に10,000個以上のアスベスト小体が認められた。クリソタイルと角閃石が、造船労働者の肺、リンパ節及び胸膜で検出された。

3) 悪性中皮腫の地理的分布は、造船業が行われていた場所を正確に反映していた。中皮腫の発症率が最も高いのは、造船所地域であると報告されている。この数十年間で多くの国々の造船所において、アスベストへ曝露はなくなるか削減された。しかし、クロシドライトを含む様々なタイプのアスベストへの曝露は、数年前まで多くの造船所に存在していた。このことは、造船労働者に高い中皮腫発症率が、今後数十年間においても観察されるであろうことを示唆している。