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ワークショップE
2004年11月20日(土)
13:30 - 15:30, 第2会議室
ワークショップE
疫学・公衆衛生・予防
座長:グンナー・ヒラーダル、井内康輝

クリソタイルアスベストは開発途上国にとって安全で健康によいものなのか?
ズルミアー・ヤンリ
インドネシア労働・移住省労働衛生監督局長[インドネシア]


 インドネシアは世界で4番目に人口が多い国である(2002年の人口は2億千6百万人)。大きな人口を抱える開発途上国のため、インドネシアは有害化学物質の潜在的な市場となり、有害な化学産業の移転場所ともなっている。クリソタイルアスベストは、インドネシアで今もなお、建築材料(屋根材、シーリング材、平板、コーン・ブロック)や断熱材、ブレーキライニングやブレーキパッド等のブレーキ装置等、多くの製品に使用されており、年間60トン以上が消費されている(FICMA, 2004)。これまでのところ、インドネシア政府はクロシドライトの使用のみを禁止し、クリソタイルだけは輸入を認めている(2001年政令No.74、石綿を使用する労働者の労働安全衛生に関する1985年労働大臣規則第3号)。2001年から2003年までのクリソタイルの総輸入量はわずかに減少しているが、2004年には増加する可能性がある(FICMA, 2004)。
 インドネシアにおけるアスベスト関連の疾患の報告や調査では、疾患の原因としてアスベストの種類による違いが認められていない。(Indonesian NOSHC, Yunus F)。他方、多くのクリソタイルアスベストの研究では、クリソタイルは他の種類のアスベストに比べてより低い生体内残留性を示し、そのためにより低い毒性を持つとされている。クリソタイルの使用が労働者や環境にとって安全で健康に害がないといえるかどうかは、まだ争いがあるところである。
 2004年9月にジュネーブで開催されたロッテルダム条約に関する国連環境計画(UNEP)と国連食糧農業機関(FAO)の最近の会合では、クリソタイルを事前の情報に基づく同意(PIC)が必要な物質に含めることが、クリソタイルの健康と環境に与える影響に関するデータが不十分であったため、そしてより重要なこととしては、「使用のための経済的な理由」によって延期された。会合では、さらに、経済や貿易上の理由は、有害な化学物質をPICに含めることに関して正当化されない理由であることが示された。このため、インドネシアは、世界的なイニシアティブを通じて、アスベストによってもたらされるリスクや、開発途上国にそれを持ち込むことに対して、一致団結した積極的な行動に参加することを心待ちにしている。