2004年11月20日(土) 13:30 - 15:30, 第2会議室 ワークショップE 疫学・公衆衛生・予防 座長:グンナー・ヒラーダル、井内康輝 チャン・シン(張幸)1、トン−ダ・サン2、ナン−フェン・シ2、森永謙二3 1 浙江省医学科学院[中国][不参加・論文提出] 2 浙江省慈渓市公衆衛生疫病予防センター[中国] 3 産業医学総合研究所・有害性評価研究部:[日本] はじめに: 慈渓市は繊維産業で有名である。同市では1960年代にアスベスト加工産業が発達し、90年代の初めに衰えた。アスベスト加工の方法は手紡ぎであり、女性労働者により各家庭で行われた。約3万人の女性労働者が直にアスベストに曝露し、一方10万人以上の近親者が間接的に曝露した。 目的: アスベスト糸の手紡ぎ女性労働者の胸膜肥厚斑、石綿肺の有病率及び悪性腫瘍の発症率を推測する。 方法: 女性労働者の悪性腫瘍による死亡率は、後ろ向きコホート研究によって調査され、また、生命表による観察群の曝露人・年数に基づき算出された。標準化死亡比(SMR)、相対リスク(RR)、寄与リスク(AR)、それぞれの95%信頼区間(Cls)は、年代を特定した現地の女性人口の平均死亡率に基づき計算された。1960年から1980年までの間に、最低1年間アスベスト糸の手紡ぎに従事した、合計5,681人の労働者が調査され、そのうち795人は胸部レントゲン検査を受診した。 結果: この5,681人の内、様々な要因による858人の死亡が判明した。特定の死亡原因の割合分析によると、がん(24.83%)が死因の第一位で、肺がんが(40.85%)が最も多く発症していた。全てのがんの標準化死亡比(1.35)と肺がんの標準化死亡比(3.88)は、対照群と比較して有意に高かった。 結論: アスベスト糸の手紡ぎ女性労働者に肺がんが相当数多いことは、アンフィボール仮説からは裏付けられないようだが、手紡ぎにより飛散したアスベスト繊維に関係しているであろうことが、この結果から見て取れる。 |