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ワークショップE
2004年11月20日(土)
13:30 - 15:30, 第2会議室
ワークショップE
疫学・公衆衛生・予防
座長:グンナー・ヒラーダル、井内康輝

アスベスト代替物質は同様に危険か?
レザ・ゴーラムニア1、S.B.モルタザビ2、ハッサン・アシリアン2、アリカバニン2、ヤーヤ・ラゾウルザデー1
1ウロミナ医科大学、ウロミナ[イラン][不参加・論文提出]
2タービアット・モダレス大学、テヘラン[イラン]

はじめに
 アスベストの病原性は明確なので、人類は、化学的に同等な特性を持ち、病原性がないか少なく危険性も少ないアスベスト代替品があればよいと考えてきた。合成ガラス繊維は、断熱や遮音が要求される様々な製品でのアスベストの重要な代替品である。用途が多いので、製造や輸送、取り扱いに直接かかわる作業者やその他の人々の曝露の度合いは重要である。実際、繊維状の形態、顕微鏡レベルでの形状、用途、産業上大量に使用されていることなどの点でアスベストと類似しているため、人造繊維は、アスベストのように健康に影響を及ぼすかもしれないという懸念を引き起こす。繊維への職業的な曝露は皮膚の炎症と呼吸器系疾患に関連する。本研究のひとつの目的はロックウール繊維への職業的曝露を測定し、呼吸量と呼吸能力を調査することである。
器具と方法
 職場における気中浮遊物質の測定の標準的方法は、位相差顕微鏡によるNIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)のMethod 7400である。この方法では、サンプルは25mmセルロース・エステル・フィルター上に採取される。このフィルターは透明化処理がなされた後に、ウォルトン-ベッケット計数線を使用し、位相差照明により400〜450倍に拡大して顕微鏡で分析される。計数法Bを用いて、長さと幅の比が5:1で、かつ、直径が3μmより小さく、長さが5μmより大きい繊維のみが計数される。肺活量と努力性肺活量テストのために、肺機能テストがP.F.T.肺活量計を用いて実施される。検査対象グループと比較対象グループに調査票による呼吸器系調査が行われる。この場合、事務職員と製造作業員がそれぞれ検査対象グループと比較対象グループに選ばれる。呼吸器系調査票は双方のグループが記入する。努力性肺活量と肺活量検査が実施される。
結果と論考
 ファイバー計数の結果は、作業者が呼吸する場所によって異なることを示した。8時間加重平均曝露及び実際の曝露は、それぞれ0.51及び0.7ファイバー/ ccであった。職業的曝露は米国産業衛生専門家会議による時間加重平均の許容濃度を超えず、相関に関するテストでは職業的曝露レベルとの顕著な差異は認められなかった(有意水準0.001未満)。 超過勤務のために、職業的曝露は高く、T-テストは職業暴露限界(occupational exposure limits)と顕著な差異を示した(p=0.001)。結果として、グループ内で平均肺活量、努力肺活量、努力肺活量1秒量に顕著な差異があることが示されたが、標準範囲に顕著な差異があった(P<0.001))。われわれの研究では、ロックウール繊維は呼吸量と呼吸能力にあまり影響は与えないことを示している。しかし、この事実にもかかわらず、せき、痰のような呼吸器系症状は繊維の吸入により引き起こされる。これまでの研究が今回のわれわれの所見を確認している。実際、ロックウール・ファイバーの吸入による症状は、せき、痰、ぜい鳴、息切れを伴う。相関テストは、喫煙と、痰(r=0.29, P= 0.006)、せき(r=0.25, P=0.02)などの呼吸器系症状との顕著な関連性を示した。

キーワード:ロックウール、ファイバー計数、呼吸量と呼吸能力、肺気量測定法