2004年11月20日(土) 13:30 - 15:30, 第2会議室 ワークショップE 疫学・公衆衛生・予防 座長:グンナー・ヒラーダル、井内康輝 久保田均1、孫 健2、久永直見1、毛利一平1、柴田英治3 1独立行政法人 産業医学総合研究所[日本] 2保健経済研究所[カナダ] 3愛知医科大学医学部[日本] 石綿などの有害因子への曝露が建設業従事者の健康に及ぼす影響を評価するため、我々は某県建設国民健保組合員について疫学調査を行ってきた。その結果、日本人男性と比較した肺がんの標準化死亡比が、鉄骨工では2.88(95%信頼区間1.44-5.15)と、有意に高いことが判明した。また、同じ集団における胸部X線写真上の胸膜肥厚所見の調査では、全体の有所見率2.1%に対し、鉄骨工のそれは9.3%と高いことも分かった。 今回は、それらの背景を探るべく実施した質問紙郵送調査の結果を報告する。調査対象は、鉄骨工とその関連職種の溶接工、鉄筋工である。質問内容は、 石綿等の有害物曝露を伴う作業18種の経験、 喫煙歴等である。調査対象1,021名中452名(44.3%)が回答したが、完全な回答は398名で、その内訳は鉄骨作業経験者202名(溶接経験も併せ持つと答えた人を含む)、溶接工142名、鉄筋工54名であった。3群を較べると、鉄骨作業経験者では、建物解体、スレート板使用、断熱材取付け除去、吹き付け石綿建物での作業、ケイ酸カルシウム板使用等の経験率が、他群より有意に高かった。喫煙率(過去+現在)は、70〜87%と高かった。 今回の調査結果と、我々の疫学調査で溶接工には肺がん死亡の有意な増加を認めていないことを併せ考えると、鉄骨工では高い石綿関連作業経験者率が肺がん増加に関係していることが疑われた。 |