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ワークショップE
2004年11月20日(土)
13:30 - 15:30, 第2会議室
ワークショップE
疫学・公衆衛生・予防
座長:グンナー・ヒラーダル、井内康輝

クリソタイル・アスベスト織物労働者の歴史的コホートにおける中皮腫の発症
カルロ・マーモ1、ギウセペ・コスタ2
1トリノ・ピエモンテ地区疫学ユニット、グルグリアスコ、トリノ[イタリア]
2トリノ大学医学部公衆衛生部[イタリア]


序と目的
 角閃石の混ざらないクリソタイル・アスベストだけの曝露が肺がん、中皮腫、非悪性疾病を引き起こすかどうかという問題について、1900〜1986年まで操業を行っていたイタリア最大のアスベスト織物工場の所在地グルグリアスコで歴史的コホート調査が行われた。
方法
 調査対象コホートは、クリソタイルだけに曝露した1,653人のアスベスト織物工場労働者からなる。生死の状況は郵送によるフォローアップによって確かめられた。死因は国家死亡登録の記録によって確かめられた。標準化死亡率(SMR)は、(健康労働者効果と社会階層による交絡要因を減らす目的で)トリノの労働人口の死亡率を対照として用いて計算され、年齢と出生地域による調整が行われた。観察期間は1981年1月1日〜1995年12月31日までであった。
結果
 全体の死亡率は男性((標準化死亡率)SMR=212,(観察死亡者数)119名)、女性((標準化死亡率)SMR=265, (観察死亡者数84名で、明らかに男女ともに過剰であった。がん死亡率も明らかに過剰であった(男性 SMR=194、女性SMR=261)。統計的に有意な過剰死亡率が胸膜中皮腫(男性SMR=3,322、女性SMR=13,248)、肺がん(男性SMR=302、女性SMR=523)で観察された。過剰死亡率が認められるがんの他の部位は、喉頭、胃、すい臓、及び脳であった。
 過剰死亡率は、アスベスト肺(男性SMR=12797、女性SMR=3124)、虚血性心疾患(男性SMR=139、女性SMR=164)、脳血管疾患(男性SMR=159、女性SMR=173)が推定された。雇用期間の長さ及び雇用年の分析により、死亡率と、雇用期間の長さと腫瘍の潜伏期間との間に関連性があることが示された。
結論
 これらの結果は、角閃石の汚染は無視できる程度である、純粋なクリソタイル・アスベストへ大量に曝露した労働者には、肺がんと悪性中皮腫を引き起こすということを確認した。さらにこの結果は、前回の調査における、他の部位のがん(特に喉頭と胃)と非悪性疾病(虚血性心疾患と脳血管疾患)に対し病因学からみたアスベスト曝露の果たす役割、と一致することを示している。