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ワークショップB
2004年11月19日(金)
17:45 - 19:30, 第2会議室
ワークショップB
建設とアスベスト
座長:外山尚紀、アンダース・エングルンド

東京建設業国民健康保険組合でのじん肺関連レセプトチェックについて
山田恭市
東京建設業国民健康保険組合


 日本の医療保険制度は、企業等に雇用されているものの加入する「被用者保険」(加入者数 6867万人)、公務員等が加入する「共済組合」(加入者数1001万人)、自営業者が加入する「市町村国保」(被保険者数 4337万人)、そして、同業同種のものが作っている国保組合(被保険者数 425万人)があります。
 東京建設業国民健康保険組合(以下「東建国保」と略)は、建設従事者を組織する7つの建設労働組合が協同で1970年7月に結成しました。加入者数は5月末日で組合員15,646人、被保険者数は34,740人となっています。
 東建国保では、1994年から診療報酬明細書(以下、「レセプト」と略)のレセプトチェックを行っていますがその目的は、建設に従事していた仲間は誰でもアスベスト含有材を使用していたこと、また、その粉じんでの曝露があり、誰でもじん肺の被害者になる可能性があり、国保業務を通じてじん肺になった組合員を労災保険による休業補償等で救護・救済すること。また、アスベスト被害についての啓蒙運動と位置づけ取りくんできました。
 レセプトチェックは1994年1月から実施しています。毎月一回、東建国保の職員が31,000枚のレセプトから8種類の疾病(@肺がん・疑いを含む、A珪肺、Bじん肺、C肺腺維症、D中皮腫、E肺結核、Fアスベスト肺、G胸膜肥厚斑)のものを抽出し、東建国保の委託医療機関に送り、医師の判断を受けます。
 医師は、その病名・作業との因果関係により○A,A,B、Cの4点にランク付けを行います。その中で、特に作業との因果関係が強く、過去の職歴や労災保険の加入状況の調査が必要と思われる仲間を ○Aとして東建国保より本人・所属組合に報告します。
 また、1990年からは○Aランクの当事者を委託医療機関の保健婦と所属労働組合の職員が訪問し、じん肺について冊子を用いて説明、過去の職歴や労災保険の加入状況の聞き取りを行っています。また、委託医療機関である「ひらの・ひまわり診療所」での診察も勧めています。これらを通じて、2000年から50名を超える○Aの患者を訪問し、9件の労災認定(休業補償給付や遺族補償)を勝ち取ってきました。
今後の課題
 これまで一定の成果を上げてきましたが、労災保険(特別加入)に加入しておらず労災申請ができなかった仲間が少なくありません。今後、労災保険(特別加入)への加入を強く押し進める活動を、東建国保構成各労働組合と進めていく必要があると思われます。