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ポスター・セッション
2004年11月19日(金)12:30 - 18:30, 第3会議室(16:00-17:00 質疑応答時間)
2004年11月20日(土)09:30 - 18:30, 第3会議室(16:00-17:00 質疑応答時間)
2004年11月21日(日)09:30 - 12:30, 第3会議室


ポスター・セッション

アスベスト単独の量−反応関係を上回る石綿肺患者の肺がんリスクに対する影響
アリソン・レイド1、ニコラス・デ・クラーク2
1西オーストラリア大学人口衛生学部[オーストラリア]
2西オーストラリア大学小児健康調査協会[オーストラリア]

前提:
 アスベスト暴露の状況がわかっている患者において、石綿肺の存在が肺がん発生の必須条件(前駆)であるかどうか考察すること。
手法:
 西オーストラリアのクロシドライト鉱山と精製の町、ウイットヌームの元労働者と居住者で、アスベスト暴露の状況(暴露の継続期間、暴露の程度、はじめて暴露した時期)が把握できる2214人に対して、ビタミンA(はじめの5年間、半分の対象者にベータカロチン、他の対象者にパルミチン酸レチノール)を用いたがん予防プログラムへの参加を求めつつ、年毎の胸部レントゲン撮影、喫煙状況の調査を行った。
 はじめのエックス線写真の読影は、1998人の調査対象者に対して、1990年から1996年の間、レントゲン写真による石綿肺の証拠を得るため、国際対がん連合(UICC)の分類(ILOの分類)に基づいて行われた。コックス比例ハザードモデル(Cox proportional hazards modelling)は、石綿肺とアスベスト暴露、肺がんの関連を評価するために実施された。
結果:
 12%の調査対象者において、初期のX線写真から、レントゲン診断に基づく石綿肺の証拠が得られた。喫煙歴は、肺がん発症との最も強い関連性を示し、現在の喫煙者のリスクが最も大きかった( オッズ比=31.7 (95%信頼性区間:4-235) )。エックス線写真により石綿肺と診断された患者(オッズ比=2.15(95%信頼性区間:1.21-3.82))と、アスベスト暴露のあった者(オッズ比1.24 (95%信頼性区間:1.05-1.45))は、肺がんのリスク増加との明確な関連性を示した。
考察:
 ウイットヌームの元労働者と居住者を対象とした今回の調査では、石綿肺は、アスベストを原因とする肺がんの必須の前駆疾患ではなかった。これらの結果は、肺がんを引き起こしているのはアスベスト繊維そのものであること、肺がんは石綿肺の疾患があるなしにかかわらず発症すること、一方、石綿肺の存在は肺がんのリスクを増加させること、との仮説を裏付けるものである。これは、暴露を過小評価した結果である可能性がある。