2004年11月21日(日) 10:40 - 13:00, 井深大記念ホール 全体会議セッション7 アスベスト・リスクのない世界:明日への戦略 座長:天明佳臣、バリー・キャッスルマン 高橋謙 産業医科大学産業生態科学研究所環境疫学研究室[日本] アジア全域の特徴は経済発展の速さと世界人口に占める割合の大きさによって語られる場合が多い。もう一つ見落とせない特徴は、域内の多様性である。すなわち発展の度合い、社会人口学的、歴史的、政治的・文化的側面はすべて多様である。石綿関連疾患の問題は、これらすべての側面に関係するばかりか、国際化の波が状況をいっそう複雑にしている。本報告の目的は2002年に産業医科大学で開催した「アジア諸国のための石綿シンポジウム」の成果を踏まえ、アジア的視点を確立することにある。 ア域内で石綿消費のトレンドは好対照を示している。先進国では消費が漸減する一方、途上国では確実に増加している。ほとんどの国でクロシドライトの使用が禁止される一方、アモサイトの使用が禁止されていない国もある。クリソタイルについて実質的な使用禁止を達成したのはシンガポールと日本(最近)の二カ国に限られる。公式には他の国で石綿禁止は俎上にない。中国は相変わらず世界で最大の石綿消費国かつ生産国である。石綿関連疾患については、石綿肺症を公式に職業病の一つとして認めている国がほとんどだが、過小診断と過小報告の問題は途上国に共通している。中皮腫は(疾病としてはもちろん職業病としてはなおさら)過小診断が深刻で、発生や死亡に関する統計を備えている国はほんの一部に過ぎない。石綿関連肺がんについての状況は底知れないと言える。 アジアでは石綿関連疾患の流行が始まったばかりと捉えるべきである。しかしながら、石綿輸出企業はアジア地域の急速な経済発展によって高まる需要に便乗しようとする傾向がある。それゆえ、アジア地域での石綿関連疾患の拡大を防ぐには、慎重かつ正当な協力が必要である。アクションプランの原案を提示することで、漸進的な議論を喚起し、広く社会に受け入れられることを目指す。 |