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全体会議セッション5
2004年11月20日(土)
13:30 - 16:00, 井深大記念ホール
全体会議セッション5
アスベスト被害に対する補償
座長:森田明、牛島聡美

アスベストとマネー:南アフリカのアスベスト訴訟原告の立場から
リンダ・ウォルドマン
サセックス大学開発学研究所[イギリス]

 本発表は、南アフリカ共和国グリカタウンの住民が、過去30年にわたり、どのようにアスベスト被害に対する補償を受け、またその補償をどのように捉えてきたかを調査したものである。グリカタウンの住民の多くは、ノーザーン・ケープ州にあるケープ社のアスベスト鉱山で働いていた。そして、その結果さまざまなアスベスト関連疾患に苦しめられている。
 鉱山で働いてきた人々は、南アフリカの職業病医療局(Medical Bureau of Occupational Disease)に対する補償請求を行ってきたが、最近では、ケープ社に対する国際的な集団訴訟(class action))の原告としても請求を行っている。環境曝露の経験しかなしに、アスベスト関連疾患に苦しんでいる人々は、補償の選択肢がほとんどなく、国の給付金に頼らざるを得ない。しかし、これを獲得するのは困難である。
 本発表では、グリカタウンの住民が、アスベスト関連疾患に対するこれら様々な補償をどのように考えているかについて検討する。とくに、家族や親類縁者のアスベスト関連疾患に対する見方を通して、この疾患の影響を調査し、アスベスト疾患についての文化的な面からの説明に焦点を当てている。また、こうした補償がされる社会経済的背景についても検討を加える。