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全体会議セッション5
2004年11月20日(土)
13:30 - 16:00, 井深大記念ホール
全体会議セッション5
アスベスト被害に対する補償
座長:森田明、牛島聡美

環境曝露・家庭内曝露事例に対する補償
ボブ・ルアーズ
弁護士、前オランダ上院議員、オランダ・アスベスト協会設立メンバー[オランダ]


環境での曝露
 1960年代以前に、アスベストによる病気は典型的な職業病であると認識されていた。しかしワグナーらが、南アフリカのケープ州における中皮腫患者のかなり部分が、何ら職業的なアスベスト曝露を受けていなかったことを示す研究結果を出版したとき、この認識は劇的に変化した。彼らは、幼少時をアスベストの鉱山の近くで過ごしたり、鉱山のボタ山で遊んだりした男性や女性と同様に、主婦、召使い、牧師、農夫、事務員の中皮腫患者に遭遇した。
 第二次世界大戦後、アスベストの生産と消費は著しく増加した。アスベストは、主にセメント製品として百をはるかにこす製品に使用されてきた。この広範囲な使用の結果は、今はっきりと現われ始めている。私たちが膨大な数の被災者と相対しているだけではなく、莫大な量のアスベスト・セメントの廃棄物は、さらなる被災者を生み出しながら、環境へ、とりわけアスベスト産業に近接した地域へもぐり込む道をみつけだしてきた。
 補償を受けるために、アスベスト被災者は、長い道のりをたどらなければならない。訴訟を起こすには経費と時間の両方がかかる。とりわけ非職業性曝露の被災者の場合はそうである。しばしば、彼らは、曝露源の特定と法的因果関係を立証するうえで、大きな困難につきあたる。長い潜伏期間もまた不利に作用する。
 1990年まで、世界のアスベスト・セメント産業は、わずかひと握りの多国籍企業が所有していた。これらの多国籍企業は、自分たちの製品の有害な結果を無視している。彼らは、とりわけ第三世界が関連する場合には、いかなる責任をも、負うことを拒んでいる。したがって、もっとも大切なことは、世界中のアスベストの被災者とその組織が、互いに支えあい、情報交換し合うことである。そうすることによってのみ、すべてのアスベスト被災者は、どこに住んでいようとも、損害への十分な補償を得ることができるのである。