抄録トップページ
全体会議セッション5
2004年11月20日(土)
13:30 - 16:00, 井深大記念ホール
全体会議セッション5
アスベスト被害に対する補償
座長:森田明、牛島聡美

フィリピンの訴訟:スービック海軍基地でアメリカ海軍に置き去られたアスベスト被害者たち
アレクサンダー・ラクソン
弁護士、スービック・アスベスト肺被害者協会、基地汚染除去対策市民会議[フィリピン]


T.フィリピンのアメリカ海軍とスービック海軍基地についての簡単な歴史

  • アメリカ海軍は、スペインがアメリカにフィリピンを譲渡した後、1900年にフィリピンを去って以来、スービック海軍基地を占領し使用してきた。
  • アメリカは、3万人を超える海兵隊や海軍の兵士たちを配備し、スービックを西大西洋における第7艦隊の基地として開発した。
  • アメリカは、スービックに、船舶修理施設、潜水艦施設、訓練施設、射撃場などを建造した。
  • 5万人以上ものフィリピン労働者が、これらの施設で働くために、アメリカ政府によって雇用された。
U.1992年、スービック海軍基地におけるアメリカ海軍の撤収

  • 1992年に、フィリピン上院がアメリカ海軍、空軍のフィリピン駐留を延長するための条約を拒否したため、アメリカ海軍はスービック海軍基地から撤収した。
  • それ以降、スービックやそれ以外の船舶改修施設で雇用されていた千人以上ものフィリピン労働者が、カリフォルニアのアメリカの裁判所に、補償を求めるためにアスベスト裁判を提起した。
V.アメリカ裁判所におけるアスベスト裁判の提起

  • ハリソン&デガルモ法律事務所(のちにヴッセ&ヤネツ法律事務所に代わる)のジェフリー・ハリソンと称する一人のアメリカの弁護士が、アスベスト肺の被害者たちが訴訟を提起する手助けをすることを申し出た。
  • フィリピン人被害者らは、アメリカのジェフリー・ハリソン弁護士と顧問契約を結んだ。それによりフィリピン人被害者らは、和解交渉と和解金の受領を含め、アメリカで彼らのために訴訟手続きを行うための、全面的、包括的な権限をハリソンに与えることになった。
  • ハリソンは、できる限り大勢のフィリピン人被害者を募り、すべての人から書類を集め、顧問契約にサインさせた。
  • ハリソンは被害者たちの健康診断を行うために、フィリピン肺センターの一人のフィリピン人医師を使い、彼に報酬を支払った。
W.アメリカの弁護士を使うという問題

  • 不幸にも、アメリカ人弁護士たちは、被害者たちを欺き、騙した。彼らは、アスベスト企業から被害者らに支払われる和解金について、適切に説明をしなかった。
  • アスベスト被害者によれば、被害者に訴えられていた68のアスベスト企業のうち、たった5から7の企業のみが和解金を支払ったとハリソンは言った。
  • 何人かの被害者は、訴訟の10年後、500ドルだけを受け取った。2000ドルを受け取った被害者もいた。一方、5000ドル以上を受け取った被害者は非常にわずかしかいなかった。
  • 2000年9月、スービックアスベスト被害者協会(SAVA)の担当者が、私たちに、アメリカの弁護士、ジェフリー・ハリソンに対抗するための法律面における支援を求めてきた。
  • 私たちは、ジェフリー・ハリソンと彼の法律事務所に対して、あらゆる点における完全な説明を求めたが、彼らは拒否した。
X.アメリカで新たな弁護士を雇う試み

  • 私たちはジェフリー・ハリソンと彼の法律事務所を追求するため、アメリカにおいて何人かの弁護士と法律事務所を雇おうとした。しかし、彼らはすべて10万ドルの頭金か承諾費を要求したため、私たちの試みは失敗に終わった。スービックアスベスト被害者協会にはそのような資金はない。
  • 元証券取引審議会会長でもある、一人のフィリピン上議議員が被害者を支援している。
Y.現在の状況

  • 今もなお、私たちは、成功報酬で私たちの訴訟を引き受けてくれるアメリカの弁護士を探している。
  • 現在、アメリカの二人の弁護士と交渉中である。
Z.まとめ