2004年11月20日(土) 09:30 - 12:30, 井深大記念ホール 全体会議セッション4 医学的側面:アスベスト関連疾患の診断・治療等 4-A:中皮腫の病因論・免疫学 座長: 鈴木康之亮、井口弘 鈴木康之亮、スティ−ブンRユエン、リチャード・アシュレー マウントサイナイ医科大学[アメリカ] ヒトの悪性中皮腫の誘発に関係するアスベスト繊維を同定し特徴づけるために、ヒトの悪性中皮腫168症例(男性164症例、女性4症例;胸膜156症例、腹膜12症例;確実なものまたは疑いの強いもの;解剖または生検試料、を含む)から採取した肺及び中皮組織から 検出されたアスベスト繊維のタイプ、数及びサイズを調べた。 被験者の職歴は多岐にわたり、アスベスト保温工、配管工、電気工、造船所労働者、板金工、海軍勤務労働者、発電所労働者、ボイラー工、ブレーキ・ライニング機械工、消防士、アスベスト労働者の家族、などを含む。組織試料採取については、バルク組織消化処理または組織灰化処理、もしくはその両方が用いられた。高解像度分析用電子顕微鏡がアスベスト繊維を特定するために用いられた。 結果は以下のとおりである。 (1) アスベスト繊維は、これらのケースの肺及び中皮組織のほとんど全てに存在した。これらの組織中の繊維の平均数は、一般的集団に見られるよりはるかに多かった。 (2) 肺組織中で最も多かったアスベスト繊維のタイプは、クリソタイルと角閃石の混合物、角閃石のみ、また場合によってはクリソタイルのみのいずれかであった。中皮組織で最も多かったアスベスト繊維は、クリソタイルであった。このような肺及び中皮組織で見られるアスベスト・タイプの相違は、クリソタイル繊維が、肺から中皮組織へ透過的に移動する強い特性を持っていることによって引き起こされることが示唆された。 (3) いくつかのケースでは、肺及び中皮組織の両方から検出されたアスベストは、クリソタイルのみであった。 (4) これらの組織中の繊維の大部分は、短く(長さ5μm以下)、細かった(太さ0.25μm以下)。 ヒトの悪性中皮腫を誘発するアスベスト繊維のタイプを決定するために、肺及び中皮組織の両方が調査されなければならず、また、短く細いアスベスト繊維を、この腫瘍の誘発に寄与する繊維タイプのリストに含まれなければならないことが結論づけられた。 |