2004年11月20日(土) 09:30 - 12:30, 井深大記念ホール 全体会議セッション4 医学的側面:アスベスト関連疾患の診断・治療等 4-A:中皮腫の病因論・免疫学 座長: 鈴木康之亮、井口弘 西池珠子,西村泰光,和田安彦,井口弘 兵庫医科大学衛生学 [日本] 肺胞マクロファージはアスベスト等の貪食により刺激を受け、O2−,・OH等の活性酸素種(ROS)、NOやその反応生成物等の活性窒素種(RNS)を多量に産生する。様々なROS,RNSの増加が持続的に起こることが肺の慢性炎症の一因となり、さらには塵肺の発症や発ガンに関与すると考えられている。一方、NOは細胞内抗酸化物質である還元型グルタチオン(GSH)や種々のタンパク質の遊離SH基と容易に反応してニトロソグルタチオン(GS-NO)をはじめとする種々のニトロソチオール(RS-NO)を形成し、細胞機能の変化に関係すると言われているが、アスベスト関連疾患におけるRS-NO形成の影響は明らかでない。そこで今回は培養細胞を用いてアスベスト等の繊維物質によるRS-NOの増加を調べた。 マクロファージ系細胞RAW264.7及びJ774をUICCのクリソタイルB(CH)とクロシドライト(CR),JFMRAのグラスウール(GW),ロックウール(RW),セラミックファイバー(RF1)と共に培養したところ、全ての繊維物質によりNO, RS-NOの増加が、またCH, CR, GWによりGSHの減少が見られた。細胞内の最大のSH基供給源はGSHであることから、増加したRS-NOの多くはGS-NOであると考えられる。このことは、アスベスト等に曝露されたマクロファージはROS,RNSの生成だけでなく、細胞内GSHの減少によっても酸化ストレスを受けることを示唆する。また動物実験でも同様の結果を得ており、RS-NOの増加は慢性炎症につながる酸化ストレスの指標として期待される。 |