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全体会議セッション4
2004年11月20日(土)
09:30 - 12:30, 井深大記念ホール
全体会議セッション4
医学的側面:アスベスト関連疾患の診断・治療等
4-B:アスベスト関連疾患の診断及び治療
座長:ブルース・ロビンソン、中野孝司

悪性胸膜中皮腫に対するイリノテカンをベースにした化学療法
宮田茂、中野孝司、村上亜紀、延山誠一、奥窪琢、飯田慎一郎、栗林康造、三宅光富、中村仁
兵庫医科大学総合内科学呼吸器・RCU科[日本]


 悪性胸膜中皮腫の発生率はアスベスト使用量の増加に伴って上昇してきた。悪性胸膜中皮腫は死に至る可能性が高い、著しく治療抵抗性の強い腫瘍である。いろいろな第U相、第V相試験が過去20年間に行われてきたが、奏効率は0−48%で、50%生存期間は7−15ヶ月と短かった。イリノテカン(CPT-11)は強力なトポイソメラーゼ1阻害剤で、前臨床試験において中皮腫に対する確かな殺細胞活性が認められている。CPT-11の経静脈的投与は胸水へのCPT-11とより活性が強いSN-38の適切な分布を作り、胸腔内の中皮腫細胞との接触を可能にする。CPT-11は単剤(125mg/m2)では悪性胸膜中皮腫の患者に対してほとんど活性を持たないが、シスプラチン(CDDP)との併用では26%(CPT-11:60mg/m2)と24%(50mg/m2)の奏効率を示し、CDDPとマイトマイシンCとの併用では41%(100mg/m2)の奏効率を示した。しかし高用量のCPT-11(190-200 mg/m2)はドセタキセルとの併用で活性を持たず、ジェムシタビンとの併用では奏効率14.2%であった。CPT-11は悪性胸膜中皮腫に対して明らかに有用な薬剤であり、他の薬剤との併用療法のさらなる臨床試験を行う価値がある。悪性胸膜中皮腫の患者に対するCPT-11をベースにした治療について議論したい。