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全体会議セッション4
2004年11月20日(土)
09:30 - 12:30, 井深大記念ホール
全体会議セッション4
医学的側面:アスベスト関連疾患の診断・治療等
4-A:中皮腫の病因論・免疫学
座長: 鈴木康之亮、井口弘

日本における中皮腫―その病理学的特徴
井内康輝、武島幸男、櫛谷 桂
広島大学大学院医歯薬学総合研究科病理学、石綿・中皮腫研究会[日本]

 日本においては最近10年、中皮腫の頻度の急速な増加があることが指摘されている。2003年、中皮腫の診断と治療に関する研究班が組織され、日本における中皮腫の発生と診断に関する総合的な調査が行なわれた。日本病理学会認定の病理専門医へのアンケート調査によって、1995年から2002年の間に病理学的に診断された854例の情報が116施設から集められた。これらの例の解析結果としては、男性/女性比は634(77.3%)/186(22.7%)である。腫瘍の部位は、胸膜651例(77.4%)、腹膜111例(13.2%)、心膜24例(2.9%)、精巣鞘膜5例(0.6%)、部位不明あるいは決定不能50例(5.9%)である。診断に用いられた材料は、剖検211例(25.1%)、手術231例(27.5%)、針生検202例(24.0%)、VATS生検143例(17.0%)、開胸生検106例(12.6%)である(複数回答あり)。組織型は、上皮型403例(47.9%)、肉腫型153例(18.2%)、二相型180例(21.4%)に分けられる。免疫組織化学的染色の実施率は、cytokeratin 76.7%、EMA 52.5%、calretininn 42.7%であり、陽性例の割合はcytokeratin 92.5%、EMA 74.5%、calretinin 79.7%である。854例中130例については各施設から組織ブロックが提供され、診断と組織型を研究グループで確認して、免疫組織化学的染色を新しい情報をもとに行った。この研究の成果を基盤にして、中皮腫の診断に有用な免疫組織化学的染色の組合せを提示できると思われる。