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全体会議セッション4
2004年11月20日(土)
09:30 - 12:30, 井深大記念ホール
全体会議セッション4
医学的側面:アスベスト関連疾患の診断・治療等
4-A:中皮腫の病因論・免疫学
座長: 鈴木康之亮、井口弘

悪性胸膜中皮腫切除例の臨床病理学的検討
廣島健三1、伊豫田明2、渋谷潔2、由佐俊和3、藤澤武彦2、中谷行雄1
1 千葉大学大学院医学研究院基礎病理学[日本]
2 千葉大学大学院医学研究院胸部外科学[日本]
3 千葉労災病院呼吸器外科[日本]

 われわれの施設における悪性胸膜中皮腫手術例を臨床病理学的に検討した。1995年から2003年までに、悪性胸膜中皮腫に対して胸膜肺全摘術を行った9例を対象とした。年齢は41-69歳、全例男性であった。アスベスト暴露歴を4例に認めた。病期はII期5例、III期4例であった。術前の胸水のヒアルロン酸は大半の症例で上昇していた。組織型は上皮型1例、肉腫型5例、二相型3例であった。PAS染色、Alcian Blue染色は、上皮型、二相型はいずれも陽性で、肉腫型は1例が陽性であった。免疫染色の結果を上皮成分と非上皮成分に分けて検討した。上皮成分はcytokeratin AE1/AE3、EMA、HBME1に全例陽性であった。Vimentin、calretininは一部の症例で陽性であった。一方、非上皮成分はvimentin、calretininが全例陽性で、cytokeratin AE1/AE3は一部の症例で陽性、EMA、HBME1は全例陰性であった。D2-40は上皮成分、非上皮成分ともに一部の症例に染色された。術後の予後は、生存例が5例、死亡例が4例であり、2年生存率は44%であった。悪性胸膜中皮腫の病理診断には、各種の抗体を用いた免疫染色による診断、特にcalretininが陽性であることが役立つ。悪性胸膜中皮腫は予後不良の疾患であるが、手術により長期生存が期待できる症例もある。