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全体会議セッション3
2004年11月19日(金)
17:00 - 19:30, 井深大記念ホール

全体会議セッション3
被災者・家族のエンパワーメント
座長:名取雄司、アニー・デボモニ


5.石綿関連肺癌 患者の立場から
斉藤文利
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 [日本]

 私、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の世話人をしております、斉藤文利(66歳)と申します。35年前より住宅や店舗、工場などの電気配線、照明器具の取り付け工事を仕事としてきました。その間、作業現場でアスベスト入りの耐火材・壁材・天井材・床材などを扱うに当たり、粉じんが舞う中マスクもせずに仕事をしていました。

 今もなお、アスベストを知らずに無防備に仕事をしている人が多いと聞きます。アスベストは30代・40代と年齢が上がるにつれて患者が多く発生しているようです。今後も患者の数が増えてゆくことが予想されます。

 では、患者の一人として今までの経過をお話したいと思います。1998年4月、胸のレントゲンに影が写り、検査の結果肺がんと診断されました。6月に右肺の摘出手術を受けました。現在も気温・湿度の関係で、呼吸が乱れたり咳が出たり手術後の傷が痛んだりします。しばらく通院を続けていましたが、2002年10月に健康保険組合のレセプト聞き取り調査の為、ひまわり診療所の医師と保健婦さんの訪問を受けました。今までの仕事や作業経過などを話すと、アスベストによる肺がんの可能性があると言われました。

 アスベストという言葉をその時初めて聞きました。また、何も知らずに毎日粉塵の中で仕事をしてきたことに驚きました。以前、摘出した肺の一部を借りて検査するとアスベストが検出されました。早速、労災の手続きを始めましたが、わからないことが多かったので東京労働安全衛生センターの方の協力を得て、2003年4月に認定されました。

 その後、2004年2月にアスベストで苦しんでいる患者と遺族を世話人として会を設立しました。同じように苦しんでいる皆さんの問題や悩みを気楽に話せるような会にしていきたいと思っています。私もアスベストと言う言葉を知らずに、無知に過ごしてきた内の一人です。アスベスト被害者に対して、「診断・治療・家族のケア」また「補償」について全国的な対策や相談に応じられるような会になるべく努力していきたいです。