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全体会議セッション2
2004年11月19日(金)
13:30 - 16:00, 井深大記念ホール

全体会議セッション2
環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
座長: マリ・クリスチーヌ、大島寿美子


学校に残る吹き付けアスベスト問題をめぐるリスクコミュニケーションの教訓
池尻成二
東京・練馬区議会議員[日本]

 東京都練馬区には103校の区立小中学校があり、約6万人が就学している。2003年から'04年にかけて、この区立小中学校で延べ5万uを超える吹付けアスベスト等の存在が明るみに出た。この数字は、面積だけで見れば、吹付けアスベストが全国的に大きな社会問題になる中でいっせい調査が行われた1987年の数字に匹敵する。
 当時、練馬区は他の自治体に比しても精力的にアスベスト除去に取り組み、その後、区の施設管理担当セクション、教育委員会を含む学校関係者、区民の間では、「アスベスト問題は終わった」という認識が広まっていた。そうした中で、今回、練馬区は二つの大きな宿題を背負いながら対策をとることを迫られた。
 一つは、なぜ、これだけ多くの吹付けアスベストが残されてしまったのかということ。もう一つは、アスベスト暴露の可能性という事態の中で、子どもたち、保護者、教職員、区民とどう向かい合うのか。いわゆるリスクコミュニケーションをどう進めるかということである。
 後者に関して、練馬区の対応はいくつかの貴重な教訓を残した。それは
  1. 区みずからが実は情報と知識を十分に持ちえていなかったという事実。その背景にあった、国の対応と環境アスベスト対策の立ち遅れ
  2. 隠すのではなく、伝えることの中から問題解決を図ろうとする姿勢への決断
  3. 一般環境中のアスベスト暴露に関するリスク評価のための方法、技術、情報の不備
などである。