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全体会議セッション1
2004年11月19日(金)
09:50 - 12:30, 井深大記念ホール

全体会議セッション1
アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
座長:小木和孝、ローリー・カザンアレン

インド・南アジアにおけるアスベストをめぐる議論
TKジョシ1、MAアンサリ2、ブーバ・アトパル3
1所長・プロジェクト・ディレクター、2 研究助手、3 インダストリアル・ハイジニスト
ロクナヤク病院労働・環境保健センター[インド・ニューデリー]

抄録:

はじめに
 先進経済諸国におけるアスベストの使用は1980年ごろから減少しているが、南アジア地域ではその使用が強引に促進されてきている。インドは、世界第9位の生産国で、また、世界第6位の使用国でもあり、アスベスト製品を製造する14の大企業と600以上の小規模企業がある。インドで採掘されるアスベストの約89%は、ニューデリー近郊のラジャスタン州で産出されている。インド産アスベストには、南部のアンドラプラデシュ州で産出されるクリソタイル、ラジャスタン州のトレモライト、カルナタカ州のアンソフィライトなどがある。
最近の状況
 中央公害規制委員会(CPCB)は、その汚染の可能性に基づき、アスベスト関連施設、アスベスト使用装置をレッド・カテゴリーに分類してきた。CPCBが委託した最近の研究によれば、インドの未組織の部門におけるアスベストのレベルが18.2f/ccであることが明らかになった。最低平均値は2f/ccで、最も厳しい制限値0.1f/cc―この値であっても1、000人中5人に肺がん、1、000人中2人に石綿肺を引き起こす可能性がある―をはるかに上回っていた。安全衛生対策の驚くべき欠如が、このいまわしい状況を倍加させている。
 インドは、70%のクリソタイルをカナダから得ている。カナダは、ニューデリーにあるアスベスト情報センターがクリソタイル・アスベストの使用を宣伝するのを、援助してきた。アスベスト・セメント製品製造業者たちは、2002年に、クリソタイルの使用は安全であると主張して電撃的キャンペーンを開始し、WHOもILOもどちらも管理使用を提唱していると断言した。同センターは、インドにおける、クリソタイル使用の結果として発症した中皮腫のいかなる事例をも否定する。ILOによれば、西ヨーロッパ、スカンジナビア、北アメリカ、日本、オーストラリアだけで、毎年2万件のアスベスト関連肺がんと1万件の中皮腫が発症しているが、開発途上国では曝露のリスクははるかに高いとしている。それらの国々では、したがってアスベストは時限爆弾であり、今後20〜30年のあいだにおけるアスベスト関連の疾患や死亡の爆発的な増加を引き起こす準備をしているように思われる。
結論および提案
 インドでは、中皮腫の中央登録システムもなく、この疾患を正しく診断できる訓練された病理学者も少なく、労働安全衛生対策、とりわけアスベスト曝露についての労働衛生アセスメントもないため、前途多難である。予防原則を適用して、オーストラリアやヨーロッパで実施されているように、全ての種類のアスベストの使用を禁止すれば、職場やコミュニティで数百万の労働者・住民を守ることができる可能性がある。インド規格協会(Bureau of Indian Standards)がかなり厳しい規格を提案しているが、インドでそれに匹敵する安全衛生基準が確立されるには何十年かかるだろう。